一年生冬編 花嫁修業と、優しい国を作るための一歩(終章)
「冒険活劇って観たことがなかったけれど、すごくワクワクするのね。あんなに面白いものを知らなかったなんて、もったいないことをしていたわ」
休み明けの月の日。
クララさんは弾む声で教えてくれました。こんなにはしゃいでいるところ、友だちになってから初めて見ましたよ。
「ふふっ。楽しめて良かったですね」
「ええ。アラセリスさんも機会があったらイワンさんと行ってみるといいわ」
「いいですね。今度イワンに話してみます」
話しながら魔法学の教本を出して、しおりを挟んでいたページを開きます。
今日は使い魔召喚応用。
聴覚の共有です。
ステイシー先生が教壇に立って感覚共有の方法を説明します。
先生が実演してくれたあと、二人一組になって練習します。
これまでなら授業でペアを組むときはクララさんとでしたが、ちょっと気を利かせましょう。
「ミーナ様、お願いします」
「任されたわ」
今日の補佐役をつとめているミーナ様にペアをお願いしました。
「クララさん、今日はローレンツくんと組むといいですよ」
こっそり耳打ちしたら、クララさんはわかりやすく真っ赤になりました。
ペンちゃんを喚《よ》んで、目を貸してもらったときのようにお願いします。
「ペンちゃん、耳を貸してほしいの」
『ピィピィ〜』
元気いっぱいに返事をするペンちゃん。うちの子かわいいですね〜。
「それじゃあ教室の外でアタシがこの子に話しかけるから、聞こえたことをそのままアタシの猫に伝えて」
「はい」
ミーナ様がペンちゃんを抱えて教室の外に出て、私の膝の上にはミーナ様の黒猫ちゃんが乗ってきます。
自分の耳を手で塞いで、ペンちゃんが伝えてくる音だけに神経を集中させます。
『今日の天気は雪。明日の朝まで降り続くから、防寒対策をしっかりしなさい』
積もるんですか。寒いの苦手だからちゃんと着込まないとですね。って、そうじゃありません。
猫ちゃんにそのまま伝えます。
「今日の天気は雪。明日の朝まで降り続くから、防寒対策をしっかりしなさい」
ドキドキしながら音に集中します。
『正解よ。よくできたわね』
ミーナ様がペンちゃんを抱えて戻ってきました。
「ど、どうしよう、アラセリスさん、会長」
クララさんが声をうわずらせて私とミーナ様に言います。珍しく落ち着きがありません。
「えと、あの、『次は別の劇も見に行かないか』って」
まさかの、デートのお誘い。
ミーナ様が口元に手を当ててニヤニヤしています。
「思ったことをそのまま答えなさいな。ローレンツの使い魔も待っているようですし」
「そうですよクララさん。早くしないと授業の時間が終わってしまいます」
『キャンキャン!』
クララさんの足元でポメラニアンが尻尾をフリフリ。
「あううぅ……。ぜ、ぜひ、ご一緒したいです」
顔を両手で隠しながら答えるクララさんはすごくかわいいです。
教室に戻ってきたローレンツくんがいつもよりハイテンションだったのは言うまでもありません。
休み明けの月の日。
クララさんは弾む声で教えてくれました。こんなにはしゃいでいるところ、友だちになってから初めて見ましたよ。
「ふふっ。楽しめて良かったですね」
「ええ。アラセリスさんも機会があったらイワンさんと行ってみるといいわ」
「いいですね。今度イワンに話してみます」
話しながら魔法学の教本を出して、しおりを挟んでいたページを開きます。
今日は使い魔召喚応用。
聴覚の共有です。
ステイシー先生が教壇に立って感覚共有の方法を説明します。
先生が実演してくれたあと、二人一組になって練習します。
これまでなら授業でペアを組むときはクララさんとでしたが、ちょっと気を利かせましょう。
「ミーナ様、お願いします」
「任されたわ」
今日の補佐役をつとめているミーナ様にペアをお願いしました。
「クララさん、今日はローレンツくんと組むといいですよ」
こっそり耳打ちしたら、クララさんはわかりやすく真っ赤になりました。
ペンちゃんを喚《よ》んで、目を貸してもらったときのようにお願いします。
「ペンちゃん、耳を貸してほしいの」
『ピィピィ〜』
元気いっぱいに返事をするペンちゃん。うちの子かわいいですね〜。
「それじゃあ教室の外でアタシがこの子に話しかけるから、聞こえたことをそのままアタシの猫に伝えて」
「はい」
ミーナ様がペンちゃんを抱えて教室の外に出て、私の膝の上にはミーナ様の黒猫ちゃんが乗ってきます。
自分の耳を手で塞いで、ペンちゃんが伝えてくる音だけに神経を集中させます。
『今日の天気は雪。明日の朝まで降り続くから、防寒対策をしっかりしなさい』
積もるんですか。寒いの苦手だからちゃんと着込まないとですね。って、そうじゃありません。
猫ちゃんにそのまま伝えます。
「今日の天気は雪。明日の朝まで降り続くから、防寒対策をしっかりしなさい」
ドキドキしながら音に集中します。
『正解よ。よくできたわね』
ミーナ様がペンちゃんを抱えて戻ってきました。
「ど、どうしよう、アラセリスさん、会長」
クララさんが声をうわずらせて私とミーナ様に言います。珍しく落ち着きがありません。
「えと、あの、『次は別の劇も見に行かないか』って」
まさかの、デートのお誘い。
ミーナ様が口元に手を当ててニヤニヤしています。
「思ったことをそのまま答えなさいな。ローレンツの使い魔も待っているようですし」
「そうですよクララさん。早くしないと授業の時間が終わってしまいます」
『キャンキャン!』
クララさんの足元でポメラニアンが尻尾をフリフリ。
「あううぅ……。ぜ、ぜひ、ご一緒したいです」
顔を両手で隠しながら答えるクララさんはすごくかわいいです。
教室に戻ってきたローレンツくんがいつもよりハイテンションだったのは言うまでもありません。