一年生春編 運命に翻弄される春

 午後からは、生徒会役員による新入生対象の学院案内。
 生徒会役員一同……つまりミーナ様、セシリオ様、イワン様です。

 よく晴れた空のもと、中庭に集められた私たちに、生徒会役員の皆さまが挨拶をします。
 
「もう知っていると思うけれど自己紹介をしよう。わたしはセシリオ。生徒会副会長をしている」
「わたくしはギジェルミーナ。生徒会長ですわ。以後お見知り置きを。何かありましたらわたくしに頼ってくださいませ」
「……書記のイワンです。どうぞよろしく」

 セシリオ様とミーナ様が一礼する隣で、イワン様はぎこちなく会釈します。心なしか顔色があまりよくないようにみえます。

「入学した日に案内図はもらっているだろう。ただ地図をもらって終わりは面白くないだろうから、オリエンテーション形式にしてみたんだ」
「各地点にこの羽飾りを置いてきましたので、三人一組の班を作り、学院内を巡ってここに戻ってきてくださいな。一着の斑にはご褒美もあるので、頑張ってくださいませ」

 ついさっきイワン様から配られた紙には、六つの部屋を巡って羽かざりを集めるよう書かれています。
 ローレンツ様が乗り気で私の肩を叩きました。
 
「おーし。じゃあ俺と組もうぜ、アラセリス。やるからには一番乗り目指そうぜ!」
「はい、よろしくお願いしますローレンツ様」
「わたしも一緒にいいですか、アラセリスさん」
「もちろんです、クララさん」
 
 ローレンツ様、クララさんと一緒に巡ることになりました。

「それで、ローレンツ様。どこから行きましょう。一番を目指すなら効率よく回れたほうがいいですよね」

 中継点六箇所を地図で確認しながら見上げると、ローレンツ様は頬を指で掻いて言います。

「あー、あのさアラセリス。同級生なんだから、俺のことは様なんてつけなくていいからな。弟と話すような感じでいい。様なんてつけて呼ばれるのはこそばゆいっつーか、柄じゃねえんだ。敬語も使われたくないし、俺もセリスって呼ぶから」
「えーと、じゃあ、ローレンツくん。どこからまわる?」
「順応早すぎだろうが。少しはためらえっての」
「髪をくしゃくしゃにしちゃだめですー!」

 早起きしてブラッシングしたのに台無しです。
 自分が敬語なしにしろと言ったのに。
 ミーナ様いわく、ローレンツくんとは対等に話していればよほどのことがない限りは監禁される事態にならない。普通に接していた方がいいならそうします。

「順番を間違えると一階と二階を何回も往復することになってしまうから、医務室、実技場、図書室、教員室、生徒会室、薬草温室、最後に中庭《ここ》に帰ってくる。これなら早いと思う」
「クララさんすごいです! その案でいきましょう!」

 他の子たちも、もう何人かポイント巡りに出発しています。
 私たちもクララさんが提案した順に、校舎巡りを開始しました。
 



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