一年生冬編 花嫁修業と、優しい国を作るための一歩(終章)
今日二時間目の授業は薬草学です。
温室内は魔法の力で常に気温が二十五度に保たれているので、暖かいです。
だからでしょう、みんな冬になった途端薬草学が大好きになりました。
「やったー! 薬草学ばんざーい」
占学の授業が終わった途端、ローレンツくんが教室を駆け出して行きました。
夏までは「薬草学めんどくさい。なくなればいいのに」ってぼやいていたのに、別人のようです。
「ローレンツさんらしいわ」
「現金ですよね」
クララさんと顔を見合わせて笑います。
クララさんは机の引き出しから薬草学の教本とノートを取り出して、私に向き直りました。
他のクラスメートが近くにいないのを確認してから、おずおずと口を開きます。
「あ、あのね、わたし、星夜祭のダンス、ローレンツさんに誘われたの。パートナーとして出席してくれないかって」
「わあ。それで、オーケーしたんですか?」
これまで浮いた話のなかったクララさん。
教師の娘だからという理由で寄ってくる先輩がたくさんいたので、恋愛ごとには消極的だったのです。
そのクララさんが、ダンスパートナーになってほしいと頼まれて動揺しているのです。
これまでずっと、ゴメンナサイって即答してきたのに。
「ま、まだお返事してないの。一日考えさせてって言って、今日中にお返事しないとなんだけど」
「悩んでいるんですか」
「そうなの。アラセリスさんなら、入籍もしてるから恋のこと相談しやすいし、茶化したりしないでしょう。わたし、なんて答えたらいいのかな」
こんなにも不安そうで落ち着きのないクララさんは初めて見ました。
「クララさんはどうしたいんですか? ローレンツくんと踊るのは嫌ですか?」
「い、いやじゃ、ないです。でも、星夜祭がきっかけで恋人になる人が多いっていうじゃない。パートナーになってってお誘いも、そういう意味、なのかなって」
「恋人になってほしいって意味だったら、嬉しいですか」
「嬉しい、のかな。ローレンツさんと一緒にいるの、楽しいです。でも、これが恋愛感情なのかはわからないの。そんな中途半端な気持ちで答えていいのかな」
不安げに私を見て、悩みを口にするクララさん。そうですよね。なにが正しいかなんてわからないし、教本に答えが載っているわけじゃないから、迷いますよね。
だから、私は自分がどうだったか考えて答えます。
「お誘いを受ければいいじゃないですか。今のクララさんの気持ちも全部、ローレンツくんに伝えるんです。一緒にダンスして、星を見ていたら、自分の気持ちがわかるかもしれません」
「……わかる、かな」
「ええ。きっと。クララさんなら大丈夫です」
私はこの学院に入学してからの付き合いなので、クララさんの全てを知っているわけじゃありません。でも、不安を抱えながらもきちんと前を向ける人だとそう思っています。
「ありがとう、アラセリスさん。わたし、ローレンツさんと話すわ」
「はい。いってらっしゃい」
放課後になって、クララさんとローレンツくんはみんなより一足遅く生徒会室に来ました。
「ローレンツさんと一緒に、ダンスパーティー出ることになったの」
恥ずかしそうに話してくれたクララさんの表情は笑顔です。ローレンツくんもちょっと照れ臭そうに笑ってます。
二人がこのまま幸せになってくれるといいですね。
温室内は魔法の力で常に気温が二十五度に保たれているので、暖かいです。
だからでしょう、みんな冬になった途端薬草学が大好きになりました。
「やったー! 薬草学ばんざーい」
占学の授業が終わった途端、ローレンツくんが教室を駆け出して行きました。
夏までは「薬草学めんどくさい。なくなればいいのに」ってぼやいていたのに、別人のようです。
「ローレンツさんらしいわ」
「現金ですよね」
クララさんと顔を見合わせて笑います。
クララさんは机の引き出しから薬草学の教本とノートを取り出して、私に向き直りました。
他のクラスメートが近くにいないのを確認してから、おずおずと口を開きます。
「あ、あのね、わたし、星夜祭のダンス、ローレンツさんに誘われたの。パートナーとして出席してくれないかって」
「わあ。それで、オーケーしたんですか?」
これまで浮いた話のなかったクララさん。
教師の娘だからという理由で寄ってくる先輩がたくさんいたので、恋愛ごとには消極的だったのです。
そのクララさんが、ダンスパートナーになってほしいと頼まれて動揺しているのです。
これまでずっと、ゴメンナサイって即答してきたのに。
「ま、まだお返事してないの。一日考えさせてって言って、今日中にお返事しないとなんだけど」
「悩んでいるんですか」
「そうなの。アラセリスさんなら、入籍もしてるから恋のこと相談しやすいし、茶化したりしないでしょう。わたし、なんて答えたらいいのかな」
こんなにも不安そうで落ち着きのないクララさんは初めて見ました。
「クララさんはどうしたいんですか? ローレンツくんと踊るのは嫌ですか?」
「い、いやじゃ、ないです。でも、星夜祭がきっかけで恋人になる人が多いっていうじゃない。パートナーになってってお誘いも、そういう意味、なのかなって」
「恋人になってほしいって意味だったら、嬉しいですか」
「嬉しい、のかな。ローレンツさんと一緒にいるの、楽しいです。でも、これが恋愛感情なのかはわからないの。そんな中途半端な気持ちで答えていいのかな」
不安げに私を見て、悩みを口にするクララさん。そうですよね。なにが正しいかなんてわからないし、教本に答えが載っているわけじゃないから、迷いますよね。
だから、私は自分がどうだったか考えて答えます。
「お誘いを受ければいいじゃないですか。今のクララさんの気持ちも全部、ローレンツくんに伝えるんです。一緒にダンスして、星を見ていたら、自分の気持ちがわかるかもしれません」
「……わかる、かな」
「ええ。きっと。クララさんなら大丈夫です」
私はこの学院に入学してからの付き合いなので、クララさんの全てを知っているわけじゃありません。でも、不安を抱えながらもきちんと前を向ける人だとそう思っています。
「ありがとう、アラセリスさん。わたし、ローレンツさんと話すわ」
「はい。いってらっしゃい」
放課後になって、クララさんとローレンツくんはみんなより一足遅く生徒会室に来ました。
「ローレンツさんと一緒に、ダンスパーティー出ることになったの」
恥ずかしそうに話してくれたクララさんの表情は笑顔です。ローレンツくんもちょっと照れ臭そうに笑ってます。
二人がこのまま幸せになってくれるといいですね。