没落令嬢ゲルダ、スパルタ農夫の妻になる。

「他人の妻を横取りするのが、由緒ある貴族のすることなのですか、クリストフ次期伯爵様」

 私はあくまでもゲルダ。
 こんな人に膝を折ったりしない。

「断るなら、この村を焼き尽くしても構わないんだぞ」
「そのときは裁判で証言しましょう。貴方が私の夫と村人たちを殺し尽くしたと。他国の村を焼くなんて真似をしたら、伯爵家はなくなるのではないかしら」

 村のみんなも、私を援護してくれます。

「ゲルダを拐う上にここを焼くってんなら許さないぞ!」
「今日のことを一部始終書いて、お前のとこの国王に手紙を出してやる!」
「二度と来るな!」

 四方八方から石を投げられ、クリストフも男も逃げるように馬車に乗り込み、退散していきました。



 みんなに守られた以上、私は身の上を隠していることなどできません。
 レオンに嫌われるのも承知の上ですべて話しました。

 自分は間違いなくゲルトルート・ハリエラその人であること。
 父が罪を犯したということで家が没落したこと。
 クリストフは元婚約者で、父の罪を理由に私との婚約を破棄したこと。

 そして今回の村に来たときの発言から考えて、父に濡れ衣を着せて陥れたのはクリストフの家であるだろうこと。


「私がいることでみんなに迷惑をかけるようですから、私は今このときを以てここを離れます。そうすればもうクリストフがここを攻撃する理由もなくなるでしょう」

 深々頭を下げて、お礼と謝罪をします。

「迷惑をかけてごめんなさい。この半年、いろんなことを教えてくれてありがとう、みなさんと一緒にいられて幸せでした」

 来たときと同じように、着の身着のままになるだけ。
 レオンのもとで働いた分、貯金も少しはあります。
 きっと、うまくやっていけます。


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