没落令嬢ゲルダ、スパルタ農夫の妻になる。

「公爵令嬢ゲルトルート・ハリエラ。君との婚約を解消する」

 婚約者だった伯爵家嫡男のクリストフは、いとも簡単に私を切り捨てました。

 理由は簡単。
 私の父が脱税と横領の罪に問われ、牢屋送り。公爵家は取り潰しとなったからです。

 犯罪者の娘を娶るわけにはいかないと、クリストフは言いました。

 父はそんなことできる人ではないです。優しく誠実で、領民からも慕われている人です。
 私がどんなに訴えても、犯罪者の父親をかばう哀れな娘としか言われませんでした。

 せめてもの情けで命だけは助けてもらえましたが、隣国との国境に投げ捨てられました。
 まだ十七歳。数日前までただの学生だった私に何ができるのでしょうか。


 私は使用人のような、飾り気のない灰色のワンピースだけ着せられています。
 お気に入りのドレスもアクセサリーも、全て没収されました。
 
 何をしたらいいのかもわからず、ただひたすら歩き続けます。
 せめて人里に置いていってくれればいいのに、山道のどこかに置き捨てる。人としての尊厳すら奪われた気がしてならないです。

 死刑と呼ばないだけで、殺すためにやっているのでしょう。


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