マリオネットは契約結婚で愛を知る。
「ゆ、優一さん、待って、落ち着いて。ほら、水分取って。酔っているからそんなこと言うのよ」
動揺しすぎて、静は声がうわずってしまう。優一はスポーツドリンクを一気飲みして、静を腕の中に閉じ込める。
コートを着たまま布団に転がった。
額をくっつけて、静に聞いてくる。
「静ちゃんのこたえ、きいてないよ」
「え、わ、わたし、は……」
夫婦になってから、どんどん好きになっている。
酔っ払って正気じゃない優一に想いを告げても、明日になったら全て忘れられていそうだ。
逆に言うなら、今なら正直に言っても許されるんじゃないかと思う。
優一の目をまっすぐ見つめ返して、大きく息を吸って答える。
「…………私も、好きです。優一さんと、ずっと一緒がいいです」
「おそろいだ」
もう一度口づけをされて、静は目を閉じて受け入れる。
夫婦の営みはなし、という最初の約束が頭の端をかすめるけれど、今だけは忘れてしまいたかった。
手を重ねて、肌を重ねて、優一の腕の中で眠りについた。
翌朝、静は優一の部屋で目を覚ました。
優一はまだ静かな寝息を立てている。
下腹部の痛みもあって、昨夜のことが夢ではなかったと再認識する。
急いで服を整えて、洗面台で髪も整える。
首筋にも、優一が残した痕がついていて顔が熱くなる。
優一はきっと覚えていない。
記憶にないなら、なにもなかったのと同じ。約束を破ったことにならないはず。
静は頭を左右にふって、いつもどおり朝食と弁当の準備にとりかかった。
しばらくして、優一が起きてきた。
予想通り二日酔いになっているようで、辛そうに頭をおさえている。
「お、おはよう……静ちゃん」
「おはようございます、優一さん」
なんとか平静を装って、いつもどおりの挨拶を返す。
「どうぞ。二日酔いにきくと聞いたので、シジミのお味噌汁にしてみました」
「ありがとう。助かるよ」
白米に梅干し、ほうれん草の卵炒めに、フルーツヨーグルト。
優一はいつもよりゆっくりなペースでご飯を食べて、ちらちらと静の顔をうかがっている。静と目が合うと真っ赤になって、慌てて顔をそらした。
「あの、どうしたんです?」
「え、あ、いや、えーと…………。昨日、僕はどうやって帰ってきたのかな」
「だいぶ酔っていたので、私が迎えに行ってタクシーで帰ってきたじゃないですか」
「あ、そ、そっか。うん。迷惑かけたみたいでごめんね。もう飲まないようにするよ」
やっぱり記憶があやふやみたいだ。
忘れてくれてよかったような、寂しいような、複雑な気持ちになる。
「私が迎えに行った時点でかなり酔っていたので、職場の皆さんにからかわれるのを覚悟したほうがいいです」
「う…………。合わせる顔がない。でも講習があるし、出勤しないわけにはいかないよなぁ……」
静ちゃんのかわいいところ百選、なんていう、のろけの極みみたいなことをやらかしていたことは忘れたほうが幸せかもしれない。
静自身もそのことを教えるのは恥ずかしいから、口にするのはやめておいた。
弁当を持って家を出る前、優一はじっと静の顔を見る。
「ど、どうしました?」
「……いってきます」
静の額に口づけを落として、玄関を出ていった。
(もしかして、覚えている? で、でもそうならそうって言うはずだし、まだお酒が残っているのかな)
昨夜なにをしたか覚えていますか、なんて聞くに聞けないし、覚えていなかった場合どう説明していいのかわからない。嘘をついてごまかす自身がない。
静はその場に座り込んでひとり悶絶した。
動揺しすぎて、静は声がうわずってしまう。優一はスポーツドリンクを一気飲みして、静を腕の中に閉じ込める。
コートを着たまま布団に転がった。
額をくっつけて、静に聞いてくる。
「静ちゃんのこたえ、きいてないよ」
「え、わ、わたし、は……」
夫婦になってから、どんどん好きになっている。
酔っ払って正気じゃない優一に想いを告げても、明日になったら全て忘れられていそうだ。
逆に言うなら、今なら正直に言っても許されるんじゃないかと思う。
優一の目をまっすぐ見つめ返して、大きく息を吸って答える。
「…………私も、好きです。優一さんと、ずっと一緒がいいです」
「おそろいだ」
もう一度口づけをされて、静は目を閉じて受け入れる。
夫婦の営みはなし、という最初の約束が頭の端をかすめるけれど、今だけは忘れてしまいたかった。
手を重ねて、肌を重ねて、優一の腕の中で眠りについた。
翌朝、静は優一の部屋で目を覚ました。
優一はまだ静かな寝息を立てている。
下腹部の痛みもあって、昨夜のことが夢ではなかったと再認識する。
急いで服を整えて、洗面台で髪も整える。
首筋にも、優一が残した痕がついていて顔が熱くなる。
優一はきっと覚えていない。
記憶にないなら、なにもなかったのと同じ。約束を破ったことにならないはず。
静は頭を左右にふって、いつもどおり朝食と弁当の準備にとりかかった。
しばらくして、優一が起きてきた。
予想通り二日酔いになっているようで、辛そうに頭をおさえている。
「お、おはよう……静ちゃん」
「おはようございます、優一さん」
なんとか平静を装って、いつもどおりの挨拶を返す。
「どうぞ。二日酔いにきくと聞いたので、シジミのお味噌汁にしてみました」
「ありがとう。助かるよ」
白米に梅干し、ほうれん草の卵炒めに、フルーツヨーグルト。
優一はいつもよりゆっくりなペースでご飯を食べて、ちらちらと静の顔をうかがっている。静と目が合うと真っ赤になって、慌てて顔をそらした。
「あの、どうしたんです?」
「え、あ、いや、えーと…………。昨日、僕はどうやって帰ってきたのかな」
「だいぶ酔っていたので、私が迎えに行ってタクシーで帰ってきたじゃないですか」
「あ、そ、そっか。うん。迷惑かけたみたいでごめんね。もう飲まないようにするよ」
やっぱり記憶があやふやみたいだ。
忘れてくれてよかったような、寂しいような、複雑な気持ちになる。
「私が迎えに行った時点でかなり酔っていたので、職場の皆さんにからかわれるのを覚悟したほうがいいです」
「う…………。合わせる顔がない。でも講習があるし、出勤しないわけにはいかないよなぁ……」
静ちゃんのかわいいところ百選、なんていう、のろけの極みみたいなことをやらかしていたことは忘れたほうが幸せかもしれない。
静自身もそのことを教えるのは恥ずかしいから、口にするのはやめておいた。
弁当を持って家を出る前、優一はじっと静の顔を見る。
「ど、どうしました?」
「……いってきます」
静の額に口づけを落として、玄関を出ていった。
(もしかして、覚えている? で、でもそうならそうって言うはずだし、まだお酒が残っているのかな)
昨夜なにをしたか覚えていますか、なんて聞くに聞けないし、覚えていなかった場合どう説明していいのかわからない。嘘をついてごまかす自身がない。
静はその場に座り込んでひとり悶絶した。