ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
それから半月かけてオレたちは村に帰った。
まずは30個を3ヶ月以内に売り切れと、カズタカさんからノルマを課せられた。
「みんな。兄上が失礼なことを言って、本当にすまない」とコトリさんが謝りどおしだったが、これはビジネスだし、オレは納得している。
|危険回避《リスクマネジメント》は経営者が必ずしなければならないこと。期限を決めて駄目ならば損切りするのは、まともな経営者だからこそだ。
オレたちが成すべきことは、最高のジョウロを作り目標の数を売ること。
30個作るための材料が足りないため、男性陣の半分は森の奥に木を採りにいく。
オレはというと、やはり材料調達班に組み込まれた。モンスターをハンティングしてお肉を採取するのに向いてないから仕方ないね。
悲しいけれど適材適所だ。
そんなわけで、オレは旅から帰ってきた翌日、早々に仲間とともに森の中にいる。
目の前を歩いているのはナルシェだ。
肩を丸めて足取り重く。出発した段階ですでにお疲れモードなのがわかる。
「大丈夫かナルシェ。なんか疲れてる?」
「…………キムランさん。まあそうですね。姉さんがキッチンを滅茶苦茶にしていたので、掃除に丸一晩かかりました。臭いも汚れもなかなかとれなくて」
「あ、察し」
オリビアさんはスープを作ろうとするだけで謎の物体を生成するゲテモノ職人だ。ナルシェが料理を担当していたのに、ひと月いなかった。
そうなると自炊しかない。
一ヶ月分のこびりついたゲテモノの掃除。想像するだけで泣けてくる。
「キムランさんのところは二人暮らしでしょう。それなりにホコリも溜まっていたのでは」
「あ、それは大丈夫。村長夫婦がこまめに換気してくれてたから」
「うらやましい限りです」
うちはオレとミミ二人ともいなくなることを考慮してくれていたけれど、|住人《オリビアさん》が在宅のお宅の掃除には行かないわなー。
コトリさんはドロシーばあちゃんちだから問題ないし。
「ユーイさんとこは大丈夫だったのかな」
「うちも問題ねーよ。お袋が常に掃除しているからな」
話に入ってきたのはレイだ。
「なんでレイが知ってんの?」
「そういやお前が挨拶に来たとき俺は不在だったな。あの読書馬鹿は俺の妹だ」
「そうだったのか」
村についた初日に挨拶回りしたとき、レイはいなかった。ユーイさんとこに挨拶したとき、そういえば兄は家を空けていると言っていたような。
「だからユーイさんはレイを見てもキャーキャー言わないのな。他の女の子はみんなレイさまレイさま言ってるのに」
「俺だって好きで追いかけられてるわけじゃねぇ。女どもが勝手に騒いでるだけだ」
もしかしてレイ、女の子に追いかけられることにうんざりしている? 他の男たちと違って自分から女の子に声をかけることもないし、色恋に興味ないのかもしれない。
「ケッ。これだからモテる男は!」
「おれなんて町でナンパしても秒で振られるのに!」
話を聞いていたらしい他のメンズから嫉妬丸出しの声が飛んでくる。そういうところだぞキミたち。
レイみたいなストイックな男が惚れる女子なんて、サイハテ村にいるのだろうか。
「すまないが静かにしてくれないか。モンスターの気配を察知しづらい」
「はひぃ!!」
コトリさんが剣を片手に言うと、騒いでいた奴らが一斉に静かになった。
「……なぜみんな私を見ると怯えるんだ」
「ドンマイ、コトリさん。コトリさんにもいいとこあるから落ち込まないで」
オレは落ち込むコトリさんの肩を叩いて慰める。オレみたいに弱い弱いと言われるのも悲しいけど、コトリさんのように顔を見るだけで逃げられるのもまた悲し。
「私のいいところ?」
「すっごく強いところ。オレが弱くてもここに来られるのはコトリさんのおかげだもん。旅の中でもかなりお世話になったし」
「……いや、私にはこれくらいしかできることが」
「それ禁止」
旅の間もそうだったけれど、やっぱりコトリさんは、二言目には私なんて、私なんかと言う。
「実家にいた頃どんな扱いだったかは知らないけど、コトリさんの力がみんなの助けになっていることは確かなんだから。謙遜も卑下もしなくていいんだよ」
「…………私が?」
すごく困惑しているけれど、オレたちが助かっているのは事実。
今すぐは無理でも、いつかちゃんとわかってくれるといい。
まずは30個を3ヶ月以内に売り切れと、カズタカさんからノルマを課せられた。
「みんな。兄上が失礼なことを言って、本当にすまない」とコトリさんが謝りどおしだったが、これはビジネスだし、オレは納得している。
|危険回避《リスクマネジメント》は経営者が必ずしなければならないこと。期限を決めて駄目ならば損切りするのは、まともな経営者だからこそだ。
オレたちが成すべきことは、最高のジョウロを作り目標の数を売ること。
30個作るための材料が足りないため、男性陣の半分は森の奥に木を採りにいく。
オレはというと、やはり材料調達班に組み込まれた。モンスターをハンティングしてお肉を採取するのに向いてないから仕方ないね。
悲しいけれど適材適所だ。
そんなわけで、オレは旅から帰ってきた翌日、早々に仲間とともに森の中にいる。
目の前を歩いているのはナルシェだ。
肩を丸めて足取り重く。出発した段階ですでにお疲れモードなのがわかる。
「大丈夫かナルシェ。なんか疲れてる?」
「…………キムランさん。まあそうですね。姉さんがキッチンを滅茶苦茶にしていたので、掃除に丸一晩かかりました。臭いも汚れもなかなかとれなくて」
「あ、察し」
オリビアさんはスープを作ろうとするだけで謎の物体を生成するゲテモノ職人だ。ナルシェが料理を担当していたのに、ひと月いなかった。
そうなると自炊しかない。
一ヶ月分のこびりついたゲテモノの掃除。想像するだけで泣けてくる。
「キムランさんのところは二人暮らしでしょう。それなりにホコリも溜まっていたのでは」
「あ、それは大丈夫。村長夫婦がこまめに換気してくれてたから」
「うらやましい限りです」
うちはオレとミミ二人ともいなくなることを考慮してくれていたけれど、|住人《オリビアさん》が在宅のお宅の掃除には行かないわなー。
コトリさんはドロシーばあちゃんちだから問題ないし。
「ユーイさんとこは大丈夫だったのかな」
「うちも問題ねーよ。お袋が常に掃除しているからな」
話に入ってきたのはレイだ。
「なんでレイが知ってんの?」
「そういやお前が挨拶に来たとき俺は不在だったな。あの読書馬鹿は俺の妹だ」
「そうだったのか」
村についた初日に挨拶回りしたとき、レイはいなかった。ユーイさんとこに挨拶したとき、そういえば兄は家を空けていると言っていたような。
「だからユーイさんはレイを見てもキャーキャー言わないのな。他の女の子はみんなレイさまレイさま言ってるのに」
「俺だって好きで追いかけられてるわけじゃねぇ。女どもが勝手に騒いでるだけだ」
もしかしてレイ、女の子に追いかけられることにうんざりしている? 他の男たちと違って自分から女の子に声をかけることもないし、色恋に興味ないのかもしれない。
「ケッ。これだからモテる男は!」
「おれなんて町でナンパしても秒で振られるのに!」
話を聞いていたらしい他のメンズから嫉妬丸出しの声が飛んでくる。そういうところだぞキミたち。
レイみたいなストイックな男が惚れる女子なんて、サイハテ村にいるのだろうか。
「すまないが静かにしてくれないか。モンスターの気配を察知しづらい」
「はひぃ!!」
コトリさんが剣を片手に言うと、騒いでいた奴らが一斉に静かになった。
「……なぜみんな私を見ると怯えるんだ」
「ドンマイ、コトリさん。コトリさんにもいいとこあるから落ち込まないで」
オレは落ち込むコトリさんの肩を叩いて慰める。オレみたいに弱い弱いと言われるのも悲しいけど、コトリさんのように顔を見るだけで逃げられるのもまた悲し。
「私のいいところ?」
「すっごく強いところ。オレが弱くてもここに来られるのはコトリさんのおかげだもん。旅の中でもかなりお世話になったし」
「……いや、私にはこれくらいしかできることが」
「それ禁止」
旅の間もそうだったけれど、やっぱりコトリさんは、二言目には私なんて、私なんかと言う。
「実家にいた頃どんな扱いだったかは知らないけど、コトリさんの力がみんなの助けになっていることは確かなんだから。謙遜も卑下もしなくていいんだよ」
「…………私が?」
すごく困惑しているけれど、オレたちが助かっているのは事実。
今すぐは無理でも、いつかちゃんとわかってくれるといい。