ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜

「キムラン、起きなさい。もう朝よ」
「ふへ」

 眩しい日差しを背に、オレを起こしたのはミミではない。目を細めてよく見ると、ユーイさんだった。

「おはよう。もしかして寝ぼけてる? ミミとナルシェはもう起きてるわよ」
「ふわぁー。大丈夫。起きた。おはよう、ユーイさん」
「あっちに井戸があるから、顔洗って来なさいな。ミミが大張り切りで朝ごはん作ってくれてるわ」

 お言葉に甘えて井戸に向かう。
 やはりここもキャンプ場よろしく、いくつか共用調理場が設えられている。管理小屋のそばの椅子には管理人さんがいて、家庭菜園に水やりをしていた。
 ここでも桶に汲んだ水を柄杓のようなものでまくるんだな。
 おじいちゃんだから大変そうだ。

 桶をおろして井戸の水を汲み上げて、ひんやり冷たい水でぱっちり覚醒。
 他のスペースを借りている旅人は、まだ寝ている人もいるようだ。布団が丸く盛り上がっている。


 拠点に戻ると、もうみんなシャッキリ起きて火を囲んでいた。ナルシェからなんか渡される。

「キムランさん、おはようございます。はいこれ」
「なんぞ」

 定番のレクサス骨の串に、白くて細長いパン生地が巻きつけてある。後ろにある調理場で鍋に向かっているミミが、腰に手を当て言う。

「くるくるパン。じぶんでたべるぶん、やく」
「あ、はい」
「パンやいてるあいだに、こっちもできる」

 火にかけられている2つの鍋は何が入っているのか、蓋の隙間から蒸気がシュンシュン漏れ出ている。

 言われるままに、マシュマロを焼くがごとく、焚き火にパンの串をかざして回す。
 しっとりしていたのがしだいにふくふくとしてくるパン。表面がきつね色になるにつれていい香りがしてくる。

「ジョウズニヤケマシター☆」

 某狩猟ゲームの肉焼きのジングルを真似してパンをかかげると、パンに負けないくらい白い目が突き刺さる。

「キムランたべものであそぶな」
「ごめんなさい」

 ミミかあさんに謝って、静かにパンを食べることにした。コトリさんが自分のパン(5つ目)を焼きながら聞いてくる。

「今のはキムラン殿の出身地での儀式か何かか? どんな効果が」
「あ、いや。なんでもないですー」

 元ネタを知らん人ばかりだから真面目にツッコまれると悲しいわー。チャンネル視聴者の皆様の声が懐かしい。
 泣き真似してると、ミミがどんとみんなの前に鍋をひとつ置く。

「これ、パンにつけてたべる」

 蓋を開けるとトロトロに溶けたチーザが顔を出す。

「わー、フォンデュじゃない! さすがミミ! やっぱ外のご飯はこうでなきゃね」
「うむ」

 この世界にもあるのかチーズフォンデュ。
 ユーイさんが目を輝かせて、ちぎったパンをフォンデュにつけている。

「んー、おいっしー!」
「じゃあオレも」

 焼きたてパンをちぎってフォークに刺し、チーザにフォンデュ。すげーのびる! くるんと巻き取って口にダイブさせる。

「うめー! すげーうまい!」
「ふふ。焼きたてはいいですね〜」

 ミミがもう一つの鍋を持ってきて開ける。
 重厚な厚手鍋だ。こちらにはレクサス肉と野菜が!
 ほんのり焦げ目がついていて、肉汁が溢れ垂れている。
 ナイフで削ぐといいロースト具合だ。野菜も肉も好きなやつをフォークに刺してフォンデュ。

「うまい、うまいぞ。日本でもこんな贅沢したことない」
「こっちのやさい、かんりにんさんがくれた」
「そうかありがたい事だ。あとで礼を言いにいかないといけないな」

 ミミが串に刺してくれたのは黄色くて丸っこい野菜だ。ピンポン玉くらいのミニサイズ。表面がツヤツヤしている。

「これ、マトマ。そのままでも、おいしい。チーザつけるともっとおいしい」
「オーケーグー○ル。マトマとは」
「○ーグルってだれだ」

 相変わらずミミの冷静なツッコミが冴え渡る。
 まずはフォンデュしないで食べてみよう。

「むぐむぐ。おお、これは、トマト!? とろみと酸味のある汁、たっぷりの水気」
「トマトちがう。マトマ」
「あ、はい。マトマですね。わかります」

 チーザにフォンデュしてもとても美味しゅうございました。
 ミミが朝ごはんを作ってくれたからと、片付けはナルシェが引き受けた。

「美味しいご飯ありがとなー、ミミ」
「わたし、ごはんつくるやくめちゃんとできたか」
「ええ。ありがとう、ミミ。美味しかったわ」
「とうぜん」

 みんなから美味しいの声をもらって、ミミは満足げだ。
 片付けを終えて、いざ出発。
 夏の暑い日差しの下、つばの大きな帽子をかぶって、歩き出す。(数が足りなくてオレだけほっかむり)

「あすにはノーシスつくか?」
「ノーシスは無理だが、明日の夕方には小さな宿場町に着く。野宿よりは休めるはずだ。食材も買い足せるだろう」
「暑いと日持ちしないから、そこで調達できると助かるわね」

 そんな話をしながら、5人の旅は続くのだった。



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