ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜

 その夜、例のごとくファクターが村長宅に泊まることになった。
 せっかくだからと大人の男連中で集まることになり、オレも呼ばれて現在酒盛りの真っ最中である。

「おらー、キムラン飲め飲め! ファクターが仕入れてきてくれタ新物のワインだゾーい!」
「酒クセェよ村長!」

 村長が俺の酒を注ぎ込んで、勢い良すぎてテーブルがびちゃびちゃになる。
 慎重にカップを持ち上げて縁に口をつけ、吸うように飲む。

 遥か昔に地球から来たナガレビトがたまたまワインの生産者で、この世界でも果実酒を広めたんだとか。
 酒の名前はまんまワインだ。
 パイラプを熟成させたワイン。透明感のある黄色をしている。何故かあの酸っぱさはなりをひそめて、甘さが際立つ酒となっている。

 大半のやつがベロンベロンでテーブルに突っ伏してカオス。
 あぁ、バイト先で無理やり付き合わされた飲み会みたいだ。

「キムランこっち来てからけっこうたつらろ〜、いい子はいねぇがー」
「ナマハゲかよビリー。変な酔い方したんならもう帰って寝ろよ……」
「オリビアはんは俺のだから、だめらかんな〜?」
「ハイハイ」
「ハイはいっかいまでら〜オェ」

 村長と同じく足元がおぼつかなくなっているビリー。ニンマリ笑いながらオレの肩に腕を回す。
 ついでに吐いた。ツマミが出てきてんぞコノヤロウ。
 レイとファクターだけ涼しい顔して、壁際のテーブルで延々互いに酌をしながら飲んでいる。

「レイ。この酔っぱらいをなんとかしてくれ!」
「酔ったそいつの相手をしていると酒が不味くなるから断る。頑張って介抱しろ」
「ヒデェ! わかっていてオレをこの二人の間に座らせたな!」

 レイが「キムランは村の飲み会初めてだからそこにしろ」ってこの酒癖悪い二人の間に座らせたんだ。

「もう二度と参加するかチクショー!」

 
 力ずくでビリー&村長を引っぺがして家に帰ったら、玄関先で仁王立ちしているミミ様とご対面である。

「キムランふくをぬげ。くさいまんまいえにはいっちゃダメッ」
「ゴメンナサイ」

 しくしく。たらいに水を組んできて、洗剤になる木の実の粉でシャツを洗う。
 よくもんで汚れを落としてススギ2回。
 ついでに自分にもかかっていたから念入りに体を拭く。
 乾いた替えの服を出してくれた。

「キムランあまりおさけのにおいしない。のみかいじゃなかったのか」
「だってミミが寝る前に帰らないとって思ってたし」

 ミミは一人じゃ寂しくて寝られないから、というのはミミの名誉のために言わないでおく。

「なら、やしょくたべろ。つくりすぎてあまってる」
「わー、ありがとミミ!」
「キムランうるさい」

 なでなでしたら怒られた。

 ミミが器に持ってくれたのは、なんと雑炊だった。米ではなく、オートミール的なアレだ。荒く潰した中麦を具材とともに煮込んである。

「うおおお、雑炊〜!! こっちの世界で食えるなんてキムラン感激! やっぱ酒のあとはコレだよな」
「リゾット。おとーさんが、よくのみかいのあとにこれたべてた。やくそうもはいってるから、ふつかよいしない」
「ありがとう、ありがとう。ミミの優しさが五臓六腑にしみわたるわー」
「ゴゾーにシミル? ってなんだ」
「体に良いってこと」

 匙ですくって熱々の雑炊をいただく。
 刻んだたくさんの野菜からいいダシがでている。自然のとろみがあって美味しい。

「おお……これがゴゾーにシミル……」
「あはは。それオレの真似?」

 ミミも小さめの器にちょっとだけ雑炊を盛って食べている。

 食べ終わった食器を桶の水に浸ける。

「ミミ、これ洗うのは明日の朝にしてもう寝よう。オレ眠いや」
「しかたないな。キムランまだこどもだ」
「そうだよ〜。寝る子は育つんだからよく寝ないとなんだよ」

 ミミと二人で布団に入って、おやすみなさい。


 オレがここに来てこのかた、ミミは一度だって夜食を食べたことないのに。
 ミミは大人になったら本当にいいお母さんになりそうだな。
 なんだかあったかい気持ちで眠りに落ちた。


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