ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
よく晴れた日、ファクターが行商に来た。
見晴らしのいい村の広場に厚手の布シートを広げて、荷車から商品ををおろしている。
オレは朝食のあと、ミミと一緒にファクターの店を見に行く。
「はよ、ファクター。なんかオススメある?」
「やぁキムラン。この世界の言葉覚えたんだネ」
「ハハハー。ありがと。ミミには“マダマダだね”って言われるけどな」
「うむ。キムラン、まえよりはよくなったが、さきがながくおくはふかい」
腕組みしてうなずくミミ。えーん、ママンが厳しいよう。オレ泣いちゃう。Orzのアスキーアートのようになるオレの頭を、ミミがなでる。
漫才かコントと思われているらしく、もう最近村の誰もオレたちのやり取りにツッコミを入れない。
それがさらにオレのハートにきく。
ファクターも笑うばかりで止めてくれない。
「そうだ。オイラ広場に来る途中、ドロシーさんが畑で珍しいアイテムを使っていたね。あれはなんだい。水が途切れることなく出てくる。王都でも見たことがない」
「ん? 無限ジョウロのことかな。オレたちが材料集めて作ったんだよ。なあミミ」
「自分たちで作った!? アレを? ……スゴイね。大きい町でジョウロを売っているけど、鉄で作るから重いし、職人が一つずつ作るから値がはるし、あんまり一般市民が日常的に使えるものじゃないんだヨ」
「へ〜。一応この世界にもジョウロはあるんだな」
オレが流れ着くまでにも、異世界から何人も人が流れ着いてこの世界に暮らしている。ジョウロがあるのは当たり前だ。
ただ、機械やプラスチック・化合繊維など化学工学系の技術はこの世界で未発達。来たばかりの頃村長に聞いたら、そんな便利な素材見たことないと言われたし。
生活まわりの品を100均に並べられるレベルに量産することはできないんだな。
「あのジョウロ、量産できたら村のみんなで今より楽に畑仕事できるんだけどな。ファクター、水魔法の組み込まれた石かなんかないか」
「ゴメンよ。この村では需要ないと思って買いつけてないんだ」
「そらそうだ」
話しているうちに、徐々に村人たちも集まってきた。接客で忙しくなったファクターの邪魔にならないよう店から離れて、ミミとベンチに移動する。
「う〜ん。そう簡単に手に入らないか〜。みんなの分も加工したかったんだけどな」
「キムラン。ファクターは、じゅよーがないからかいつけなかったといった。だから、たのめばしいれてくれるんじゃないか」
「あー、でも仕入れてもらうにしても、金の問題もあったか。ビリーとユーイさんが、魔法具はすんごく高いって言ってた」
「はたらく。かせげばかえる」
「ごもっともです」
オレは狩りの手伝い(ほんとうにほとんど手伝い)とアーティファクト収集しかできない。向こうの知識を活かせる仕事があれば、不慣れな狩りより安全かつ効率的に稼げるだろう。
アーティファクトのプレゼン係という手もあるが、そう都合よく何回も蒸し鍋みたいな地球のアイテムが流れ着くとは限らない。
あーでもないこーでもないと悩んでいると、誰かに声をかけられた。
「キムラン殿、ミミ。買い物はもういいのか?」
「コトリさん。どうもー。……って、エエェェ、そんなに買ったの!?」
コトリさんは、パチンコ屋で勝ちまくったおっさんかと思う格好になっていた。山盛りの紙袋を4つ器用に抱えていて、顔が見えない。袋からは干し肉や果物が飛び出している。
あまりの量に、ミミも目が点だ。
「そこまで驚くほどでもないだろう。私とドロシー殿で3日分の量だ」
「その量が3日しか保たないの!?」
「たくさんすぎる」
ざっと見ても、オレとミミで1週間かけても食べきれない量だ。どんだけ食うんだ、そしてどこにその栄養が行っているんだ。
コトリさんは隣のベンチに食料の山を置いて(すごい音がした)ふり返る。
「なんだかキムラン殿が悩んでいるように見えた。私で良かったら、なにか助けになろう」
「あ、えーと……」
どう相談したらいいか考え込んでいるオレの横で、ミミが手をバッと上げて言った。
「コトリのいえはまほうトクイといっていた。みずまほうのアイテムたくさんほしい。むげんジョーロたくさんつくる」
「ちょ、ちょっと待てミミ」
オレの記憶では、コトリさんは実家での立場というか、家族との折り合いがあまり良くなかったんじゃ。そんなコトリさんに実家を頼ってくれなんてお願いできるわけない。
コトリさんは驚きと戸惑いを隠せず、困ったような顔をする。そしてかすかに笑んで、ミミに答えた。
「……そう、だな。村のみんなには世話になっているし、私にできることがそれならば、手紙を送ってみるよ」
見晴らしのいい村の広場に厚手の布シートを広げて、荷車から商品ををおろしている。
オレは朝食のあと、ミミと一緒にファクターの店を見に行く。
「はよ、ファクター。なんかオススメある?」
「やぁキムラン。この世界の言葉覚えたんだネ」
「ハハハー。ありがと。ミミには“マダマダだね”って言われるけどな」
「うむ。キムラン、まえよりはよくなったが、さきがながくおくはふかい」
腕組みしてうなずくミミ。えーん、ママンが厳しいよう。オレ泣いちゃう。Orzのアスキーアートのようになるオレの頭を、ミミがなでる。
漫才かコントと思われているらしく、もう最近村の誰もオレたちのやり取りにツッコミを入れない。
それがさらにオレのハートにきく。
ファクターも笑うばかりで止めてくれない。
「そうだ。オイラ広場に来る途中、ドロシーさんが畑で珍しいアイテムを使っていたね。あれはなんだい。水が途切れることなく出てくる。王都でも見たことがない」
「ん? 無限ジョウロのことかな。オレたちが材料集めて作ったんだよ。なあミミ」
「自分たちで作った!? アレを? ……スゴイね。大きい町でジョウロを売っているけど、鉄で作るから重いし、職人が一つずつ作るから値がはるし、あんまり一般市民が日常的に使えるものじゃないんだヨ」
「へ〜。一応この世界にもジョウロはあるんだな」
オレが流れ着くまでにも、異世界から何人も人が流れ着いてこの世界に暮らしている。ジョウロがあるのは当たり前だ。
ただ、機械やプラスチック・化合繊維など化学工学系の技術はこの世界で未発達。来たばかりの頃村長に聞いたら、そんな便利な素材見たことないと言われたし。
生活まわりの品を100均に並べられるレベルに量産することはできないんだな。
「あのジョウロ、量産できたら村のみんなで今より楽に畑仕事できるんだけどな。ファクター、水魔法の組み込まれた石かなんかないか」
「ゴメンよ。この村では需要ないと思って買いつけてないんだ」
「そらそうだ」
話しているうちに、徐々に村人たちも集まってきた。接客で忙しくなったファクターの邪魔にならないよう店から離れて、ミミとベンチに移動する。
「う〜ん。そう簡単に手に入らないか〜。みんなの分も加工したかったんだけどな」
「キムラン。ファクターは、じゅよーがないからかいつけなかったといった。だから、たのめばしいれてくれるんじゃないか」
「あー、でも仕入れてもらうにしても、金の問題もあったか。ビリーとユーイさんが、魔法具はすんごく高いって言ってた」
「はたらく。かせげばかえる」
「ごもっともです」
オレは狩りの手伝い(ほんとうにほとんど手伝い)とアーティファクト収集しかできない。向こうの知識を活かせる仕事があれば、不慣れな狩りより安全かつ効率的に稼げるだろう。
アーティファクトのプレゼン係という手もあるが、そう都合よく何回も蒸し鍋みたいな地球のアイテムが流れ着くとは限らない。
あーでもないこーでもないと悩んでいると、誰かに声をかけられた。
「キムラン殿、ミミ。買い物はもういいのか?」
「コトリさん。どうもー。……って、エエェェ、そんなに買ったの!?」
コトリさんは、パチンコ屋で勝ちまくったおっさんかと思う格好になっていた。山盛りの紙袋を4つ器用に抱えていて、顔が見えない。袋からは干し肉や果物が飛び出している。
あまりの量に、ミミも目が点だ。
「そこまで驚くほどでもないだろう。私とドロシー殿で3日分の量だ」
「その量が3日しか保たないの!?」
「たくさんすぎる」
ざっと見ても、オレとミミで1週間かけても食べきれない量だ。どんだけ食うんだ、そしてどこにその栄養が行っているんだ。
コトリさんは隣のベンチに食料の山を置いて(すごい音がした)ふり返る。
「なんだかキムラン殿が悩んでいるように見えた。私で良かったら、なにか助けになろう」
「あ、えーと……」
どう相談したらいいか考え込んでいるオレの横で、ミミが手をバッと上げて言った。
「コトリのいえはまほうトクイといっていた。みずまほうのアイテムたくさんほしい。むげんジョーロたくさんつくる」
「ちょ、ちょっと待てミミ」
オレの記憶では、コトリさんは実家での立場というか、家族との折り合いがあまり良くなかったんじゃ。そんなコトリさんに実家を頼ってくれなんてお願いできるわけない。
コトリさんは驚きと戸惑いを隠せず、困ったような顔をする。そしてかすかに笑んで、ミミに答えた。
「……そう、だな。村のみんなには世話になっているし、私にできることがそれならば、手紙を送ってみるよ」