ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜

  ダンジョンから帰ってきて、早速ミミに羽根ウサギ肉を渡した。
 チーザに続いてこれも好物なようで、ミミの目はキラッキラに輝いている。両手で掲げて小躍りしている。なんてわかりやすい子。
 こんなに喜んでくれるなら、オレも囮になった甲斐があるってもんだ。

「ウサギ、ウサギにく! やく!」
「焼くのか」
「うむ。すぐやく。こんばん、にくたくさん。キムラン、きって」
「おーけー!」

 各家に振り分けられたのはウサギ肉の半身だ。
 ウサギの毛皮をはぎ取るのは、配分前にレイが手際よくやってくれた。さすがレイ様狩人様。オレが女だったら村の女の子と一緒にファンクラブに入っちゃうよ。

 さて、勢いでオーケーとは言ったものの。まな板に羽根ウサギ肉を置いて、さてどうしようか。
 パックにされた鶏肉の調理ならともかく、ウサギの半身解体なんてしたことない。どこが食べられる部位なんだ。
 えーと、とりあえず頭を落とす?

「キムラン、そうじゃない。あしのほねのキワにはをいれる。そぎとる」
「ええ? こ、こうか??」

 ミミに指導されながら、肉を食べやすい大きさ、部位に分けていく。
 隣ではミミが野菜を一口大に切っている。

「うむうむ。キムランいいこ、のみこみはやい」
「わ〜、ありがとうございますミミ先生」

 オレってば子ども扱いされてるよ。トホホ。
 親指サイズに切り分けて、臭み消しとして塩と粉末にしたハーブをもみこむ。染み出た水分は布巾で拭き取る。
 羽根ウサギの肉はピンクが強くて弾力があって、パッと見鶏肉に似ている。

 親指サイズに切り分けると、ミミが横からひょいひょい取って、白い串に刺していく。
 野菜、肉、野菜、肉、野菜と交互にするあたり栄養バランスが考えられている。

「その串なに?」
「レクサスのほねでつくったくし。もえない」
「へー。あっちでいうバーベキュー用の鉄串みたいなもんか。肉も骨も使えるなんて便利だな〜、レクサス」
「レクサス、すてるとこない。あたまのほね、かぶとになる」
「マジか!」

 レクサスの頭蓋骨でつくるかぶりものって、どこぞのゲームの仮面剣士みたいだ。

 ミミがバットに並べた肉串を持ち上げて、宣言する。

「じゅんびできた。やく」
「わーい、PCの向こうのみんな見てる〜? キムランとミミ先生の羽根ウサギクッキングだよ! 今日は串焼きを……」
「キムランうるさい」
「ごめんなさい」

 長年の癖が抜けない。うっかり配信者モードになっちゃうところでミミ様のツッコミをくらう。

 今日はビリーが串焼き用に作ったという土台に乗せて、回しながら焼いていく。(ミミがワガママ……もといリクエストして特注してもらった一品)

 15分ほどかけてじっくり焼け具合を確認しながらひっくり返す。滴る肉汁。香ばしいぷりぷりのお肉。そしてきつね色に焼き上がったボールネギ。まさしくバーベキュー!

 ペラく焼いたナンのようなパンを添えていただく。

「ハグハグハグハグごくん。モグモグモグモグ」
「ミミ、おーい、ミミ〜」

 お祈りも忘れて羽根ウサギ肉をほおばるミミ。ほっぺたが食べかすと肉汁でベタベタである。お茶のカップもそっこうで空っぽになる。

「あはは。それじゃアマツカミの恵みに感謝します」

 1拍遅れてオレも羽根ウサギ肉にかぶりつく。

「うんまーーい!! なんなんだこの肉は! この歯ごたえ。爽やかな大地の香り! 火が通ったボールネギの甘みとベストマッチ! 羽根ウサギ肉とボールネギの結婚式やー!」
「キムランうるさい」

 ミミのツッコミがいつもよりワントーン低い。
 ごめんなさい黙って食べます。だからそんな獲物を狩る獅子みたいな目をしないで……!!

 お食事中(特にミミの好物)は静かに。心に刻んだオレだった。


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