ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
雨の音を聞きながら、予定通りドロシーばあちゃん先生様のもとで異世界語を教わっている。
ドロシーばあちゃんが板に書いた文字を、翻訳スキル無しで読み上げてくれる手法である。
「※※✱●<◎■」
「う〜ん、う〜ん、わ、わからん! ヒントくれヒント」
「★Ⅱ##▼△▲」
「うおおぉ……ヒントまで異世界語」
「キムラン、いせかいごというものはない。ただしくは、ウェストワースご。くにごとに、コトバがちがう」
ミミの補足が無慈悲に響く。
デスヨネー。地球ですら日本語以外にも、ドイツ語、英語、中国語etc、両手足の指で足りない数の言語があった。
こっちの世界だって国によって文字や言語が違って当然なんだ。
「ふふふ、まずはウェストワース語で日常会話できるところまでやるぜ! オレがその気になれば、生きてる間にあと二言語くらいは習得できるはずさ」
「ほっほっほ。やる気があるのはいいことさね。頑張りすぎても頭に入らんじゃろう。みんな、少し休憩してそれから続きにするよ」
ばあちゃんが手をパンと叩いて声をかけると、みんな元気よく返事をして黒板を箱に返す。おやつタイムの合図だ。毎回、昼前になるとドロシーばあちゃんお手製おやつが振る舞われる。
「ドロシーばあちゃん。あたし手伝うよ」
女の子の中で年長のランが率先して動き、ミミにナルシェ、他の子もテーブルを布巾で拭いたり食器を出したり、自分にできることをする。
オレもみんなのテーブルを移動させて、向かい合わせにくっつける。
程なくしてフルーツケーキが運ばれてきた。ドロシーばあちゃん特製の、パウンドケーキと黒パンと間の子のようなケーキだ。
バターの香りがするふっくらした生地の中に、さいの目に切られた芋やフルーツがごろごろ入っている。砂糖とは違う果物や芋自体の甘みが口の中いっぱいに広がる。
昔、田舎のばあちゃんが作ってくれた不格好なおやつを思い出す。オレが初孫だからって張り切って、夏休みに会いに行くと必ず、食べきれないくらいたくさん作ってくれた。
「よしよし。みんな揃ったね。アマツカミ様へのお祈りを忘れるんじゃないよ」
「「はーい!」」
ドロシーばあちゃんに言われ、みんな口を揃えてお祈りを口にする。
キムラン、一番最初に覚えたウェストワース語は食事のときのお祈りである。
みんなでワイワイ話しながら食べる。
そして、ケーキを小さくちぎって口に運びながら、ドロシーばあちゃんはオレに言う。
「いいかいキムラン。言葉というのは、教本だけを頭に詰め込もうとしなくても、こういうふうにみんなと日常の会話で使っているうちに自然と身につくものさ。焦ることはない」
みんなもウンウン、と頷いてオレを見る。
「キムランがちゃんとこっちの言葉を覚えられるように、ボクたちもできるだけウェストワースの言葉で喋るようにするね」
「おう、ありがとな! そうしてもらえると助かる」
今までは、村のみんなの翻訳スキルという補助輪があったから会話が成立していた。それがなくても会話ができるようになったら、超カッコイイじゃん。
異世界の言葉をバリバリ話せるユーチューバー!
とかなんとか、やる気だけは1000%なんだけど、オレって高校卒業まで英語の成績は万年赤点ギリギリだったんだよな。
午後の授業はミミをはじめ子どもたちが宣言通りスキル無しで喋り、オレは頭がついていかなくて悲鳴をあげることになった。
翻訳スキル補助輪が完全に外れるまでの道のりは、まだまだ長そうである。
ドロシーばあちゃんが板に書いた文字を、翻訳スキル無しで読み上げてくれる手法である。
「※※✱●<◎■」
「う〜ん、う〜ん、わ、わからん! ヒントくれヒント」
「★Ⅱ##▼△▲」
「うおおぉ……ヒントまで異世界語」
「キムラン、いせかいごというものはない。ただしくは、ウェストワースご。くにごとに、コトバがちがう」
ミミの補足が無慈悲に響く。
デスヨネー。地球ですら日本語以外にも、ドイツ語、英語、中国語etc、両手足の指で足りない数の言語があった。
こっちの世界だって国によって文字や言語が違って当然なんだ。
「ふふふ、まずはウェストワース語で日常会話できるところまでやるぜ! オレがその気になれば、生きてる間にあと二言語くらいは習得できるはずさ」
「ほっほっほ。やる気があるのはいいことさね。頑張りすぎても頭に入らんじゃろう。みんな、少し休憩してそれから続きにするよ」
ばあちゃんが手をパンと叩いて声をかけると、みんな元気よく返事をして黒板を箱に返す。おやつタイムの合図だ。毎回、昼前になるとドロシーばあちゃんお手製おやつが振る舞われる。
「ドロシーばあちゃん。あたし手伝うよ」
女の子の中で年長のランが率先して動き、ミミにナルシェ、他の子もテーブルを布巾で拭いたり食器を出したり、自分にできることをする。
オレもみんなのテーブルを移動させて、向かい合わせにくっつける。
程なくしてフルーツケーキが運ばれてきた。ドロシーばあちゃん特製の、パウンドケーキと黒パンと間の子のようなケーキだ。
バターの香りがするふっくらした生地の中に、さいの目に切られた芋やフルーツがごろごろ入っている。砂糖とは違う果物や芋自体の甘みが口の中いっぱいに広がる。
昔、田舎のばあちゃんが作ってくれた不格好なおやつを思い出す。オレが初孫だからって張り切って、夏休みに会いに行くと必ず、食べきれないくらいたくさん作ってくれた。
「よしよし。みんな揃ったね。アマツカミ様へのお祈りを忘れるんじゃないよ」
「「はーい!」」
ドロシーばあちゃんに言われ、みんな口を揃えてお祈りを口にする。
キムラン、一番最初に覚えたウェストワース語は食事のときのお祈りである。
みんなでワイワイ話しながら食べる。
そして、ケーキを小さくちぎって口に運びながら、ドロシーばあちゃんはオレに言う。
「いいかいキムラン。言葉というのは、教本だけを頭に詰め込もうとしなくても、こういうふうにみんなと日常の会話で使っているうちに自然と身につくものさ。焦ることはない」
みんなもウンウン、と頷いてオレを見る。
「キムランがちゃんとこっちの言葉を覚えられるように、ボクたちもできるだけウェストワースの言葉で喋るようにするね」
「おう、ありがとな! そうしてもらえると助かる」
今までは、村のみんなの翻訳スキルという補助輪があったから会話が成立していた。それがなくても会話ができるようになったら、超カッコイイじゃん。
異世界の言葉をバリバリ話せるユーチューバー!
とかなんとか、やる気だけは1000%なんだけど、オレって高校卒業まで英語の成績は万年赤点ギリギリだったんだよな。
午後の授業はミミをはじめ子どもたちが宣言通りスキル無しで喋り、オレは頭がついていかなくて悲鳴をあげることになった。
翻訳スキル補助輪が完全に外れるまでの道のりは、まだまだ長そうである。