ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
契約を取り付けたあと、オレたちは商会の建物をあとにする。
村長やみんなは空になった荷車を見て満足そうだ。今回収集したオーパーツは完売。オレも頑張って海辺を探した甲斐があるってもんだ。
商店街まで来て、村長がオレとミミに言う。
「俺たちは今回の売り上げで、村の備蓄食料を仕入れル。キムランとミミも、時間まで好きに見て回るとイイ。ミミは迷子にならないように気をつけろよ」
「おお!! いいんですか村長! やったー、自由行動! 行こうぜミミ!」
「キムランうるさい」
「あはは。いいじゃん今日くらい。オレ、村の外初めてなんだよ」
「むぅ……わたしよりも、キムランが迷子になりそう」
ミミにたしなめられつつ、人の行き交う大通りに向かう。
ミミが小さすぎて人混みに紛れてしまいそうだから、ミミを肩車して歩く。
雰囲気は昔ネットで見た、海外のマーケットかな。果物店や干し肉が吊るされている店や、露店がいくつもひしめき合っている。
ふと、500メートルほど先に人だかりができているのが見える。弦楽や小太鼓で奏でているような、軽快で小気味いい音楽が聞こえてくる。
そこに集まる人たちは音楽にあわせて体をゆらして鼻歌を歌い、とっても楽しそうだ。
「あれなんだろ」
「たぶん旅芸人の一座。楽器ならして、踊る人や芸をする人がいる」
「マジ!? 要はちっさいサーカスか。せっかくだし見に行こうぜ。オレ、サーカス見たことないんだよ〜!」
「うむ。そこまでいうならしかたない。いっしょにいく」
人だかりの中心には、ミミの言うように旅芸人一座がいた。
服を着た二足歩行のウサギがラッパを吹きミニ太鼓を叩く。
シルクハットの男が帽子を脱いで観客に見せる。中身は空っぽ。男が一度帽子を投げると、帽子の中から青い小鳥が二羽飛び出す。
くるくる宙でまわる帽子を、小鳥たちが左右で咥えて、男の頭に被せた。
一斉に拍手とアンコールが贈られる。
帽子の男が下がり、次に前に出てきたのは黄色い1m級のスライムと、レオタードに腰布を巻いたネコミミ少女。
ラッパの音にあわせて、スライムは大人の背丈と同じくらい大きな球体に変身した。
「うおおおおお!」
歓声と驚きの声の中、ネコミミと尻尾を持つ青髪の少女がスライムの大玉に飛び乗った。ポヨンと跳ねて、少女は器用に玉を転がしながら歩く。
なんというバランス感覚。
スライム玉乗りをしていた少女が足を滑らせた。
「あ、危ない────!!!!」
あたりに観客たちの悲鳴が響き渡る。
けれど少女は2回宙返りして、器用に着地した。
照れ笑いしながら仲間のもとに戻っていき、また次の人が前に出てくる。
肩車したまんまだったミミは、オレの肩の上でオー! とか すごい! とか子どもらしい無邪気な反応を見せている。
いつもはおませさんだけど、やっぱり年頃の子どもらしさもあるな〜。
ショーが終わると、ミミはオレの肩から飛び降りて一座の人のところへ走っていく。
「リンリンすごかった。わたしもスライムたまのりできるか」
興奮冷めやらぬように、テンション高めに少女に聞いている。
一座の人たちは迷惑そうな顔一つせず、笑顔でミミの相手をしてくれている。
「ミミ。そろそろ集合の約束をしていた時間になるぞ」
「あとちょっとゆるせ」
「許しましょう」
ミミがわがまま言うのは珍しいし。おとなしく村長に怒られる道を選ぶことにした。
ネコミミ少女はミミといくつか言葉を交わして、オレに声をかけてきた。
「あなたはキムランやね。うちはリンリンいうんよ。よろしくね」
「え、あれ? 言葉……」
この前ファクターが来たときは、一切言葉がわからなかった。でも、リンリンの言葉ははっきりわかった。
商会の人や観客の言語は全然理解できないのに、どうして。
リンリンはミミと目を見交わしあって口角をあげる。
「うちは村の出身なんよ。2年前にこの旅の一座に加えてもらったの。だからミミちゃんとも顔見知り」
「あ、だから会話できるんだ」
「そうなんよ。このスキルあるから、旅先でも役に立つわ。異世界から流れ着いた人とも会うし。馬が要らん鉄の馬車が走る世界や、竜に乗って移動する世界もあるんやって。想像もつかんよな」
「あははは。そっすねー」
リンリンって、オリビアさんやユーイさんとはまた違う雰囲気の人だな。
話がもりあがっているところで、村長がオレとミミを探しに来た。集合時間をとっくに過ぎていたから、怒られると思ったけど、そうはからなかった。
村長もリンリンと再会して、懐かしさで昔ばなしに花が咲いた。
「今度一座のみんなで村に顔を出してくれ。みんなも会いたがる」と話が締めくくられて、旅芸人一座のみなさまとお別れした。
帰宅後、ミミも旅芸人でスライム玉乗りやりたいと言い出した。
フライパンを持ってスライムを捕獲しに行こうとしたので、全力で阻止した。
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村長やみんなは空になった荷車を見て満足そうだ。今回収集したオーパーツは完売。オレも頑張って海辺を探した甲斐があるってもんだ。
商店街まで来て、村長がオレとミミに言う。
「俺たちは今回の売り上げで、村の備蓄食料を仕入れル。キムランとミミも、時間まで好きに見て回るとイイ。ミミは迷子にならないように気をつけろよ」
「おお!! いいんですか村長! やったー、自由行動! 行こうぜミミ!」
「キムランうるさい」
「あはは。いいじゃん今日くらい。オレ、村の外初めてなんだよ」
「むぅ……わたしよりも、キムランが迷子になりそう」
ミミにたしなめられつつ、人の行き交う大通りに向かう。
ミミが小さすぎて人混みに紛れてしまいそうだから、ミミを肩車して歩く。
雰囲気は昔ネットで見た、海外のマーケットかな。果物店や干し肉が吊るされている店や、露店がいくつもひしめき合っている。
ふと、500メートルほど先に人だかりができているのが見える。弦楽や小太鼓で奏でているような、軽快で小気味いい音楽が聞こえてくる。
そこに集まる人たちは音楽にあわせて体をゆらして鼻歌を歌い、とっても楽しそうだ。
「あれなんだろ」
「たぶん旅芸人の一座。楽器ならして、踊る人や芸をする人がいる」
「マジ!? 要はちっさいサーカスか。せっかくだし見に行こうぜ。オレ、サーカス見たことないんだよ〜!」
「うむ。そこまでいうならしかたない。いっしょにいく」
人だかりの中心には、ミミの言うように旅芸人一座がいた。
服を着た二足歩行のウサギがラッパを吹きミニ太鼓を叩く。
シルクハットの男が帽子を脱いで観客に見せる。中身は空っぽ。男が一度帽子を投げると、帽子の中から青い小鳥が二羽飛び出す。
くるくる宙でまわる帽子を、小鳥たちが左右で咥えて、男の頭に被せた。
一斉に拍手とアンコールが贈られる。
帽子の男が下がり、次に前に出てきたのは黄色い1m級のスライムと、レオタードに腰布を巻いたネコミミ少女。
ラッパの音にあわせて、スライムは大人の背丈と同じくらい大きな球体に変身した。
「うおおおおお!」
歓声と驚きの声の中、ネコミミと尻尾を持つ青髪の少女がスライムの大玉に飛び乗った。ポヨンと跳ねて、少女は器用に玉を転がしながら歩く。
なんというバランス感覚。
スライム玉乗りをしていた少女が足を滑らせた。
「あ、危ない────!!!!」
あたりに観客たちの悲鳴が響き渡る。
けれど少女は2回宙返りして、器用に着地した。
照れ笑いしながら仲間のもとに戻っていき、また次の人が前に出てくる。
肩車したまんまだったミミは、オレの肩の上でオー! とか すごい! とか子どもらしい無邪気な反応を見せている。
いつもはおませさんだけど、やっぱり年頃の子どもらしさもあるな〜。
ショーが終わると、ミミはオレの肩から飛び降りて一座の人のところへ走っていく。
「リンリンすごかった。わたしもスライムたまのりできるか」
興奮冷めやらぬように、テンション高めに少女に聞いている。
一座の人たちは迷惑そうな顔一つせず、笑顔でミミの相手をしてくれている。
「ミミ。そろそろ集合の約束をしていた時間になるぞ」
「あとちょっとゆるせ」
「許しましょう」
ミミがわがまま言うのは珍しいし。おとなしく村長に怒られる道を選ぶことにした。
ネコミミ少女はミミといくつか言葉を交わして、オレに声をかけてきた。
「あなたはキムランやね。うちはリンリンいうんよ。よろしくね」
「え、あれ? 言葉……」
この前ファクターが来たときは、一切言葉がわからなかった。でも、リンリンの言葉ははっきりわかった。
商会の人や観客の言語は全然理解できないのに、どうして。
リンリンはミミと目を見交わしあって口角をあげる。
「うちは村の出身なんよ。2年前にこの旅の一座に加えてもらったの。だからミミちゃんとも顔見知り」
「あ、だから会話できるんだ」
「そうなんよ。このスキルあるから、旅先でも役に立つわ。異世界から流れ着いた人とも会うし。馬が要らん鉄の馬車が走る世界や、竜に乗って移動する世界もあるんやって。想像もつかんよな」
「あははは。そっすねー」
リンリンって、オリビアさんやユーイさんとはまた違う雰囲気の人だな。
話がもりあがっているところで、村長がオレとミミを探しに来た。集合時間をとっくに過ぎていたから、怒られると思ったけど、そうはからなかった。
村長もリンリンと再会して、懐かしさで昔ばなしに花が咲いた。
「今度一座のみんなで村に顔を出してくれ。みんなも会いたがる」と話が締めくくられて、旅芸人一座のみなさまとお別れした。
帰宅後、ミミも旅芸人でスライム玉乗りやりたいと言い出した。
フライパンを持ってスライムを捕獲しに行こうとしたので、全力で阻止した。
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