ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
オレはこの世界に流れ着いてこのかた村のテリトリー外へ行ったことがないけれど、この村はウェストワースという小国の西端にある。(ドロシーばあちゃん談)
首都に出回らないような珍品を探すため、そして物品を売るため、たまに行商人も訪れるという。
そんなわけで、今日オレは初めて村人以外の人間と出会った。
畑仕事して朝飯を食べたあと、ミミと外に出てみたら見知らぬ人がいた。
「ミミ、あの人村の人?」
「ぎょーしょうにん。たまにむらにきて、いろいろうってくれる」
「へー!」
毛がアルパカのようにフサフサな馬(たぶん馬)の鞍に荷車が繋がれていて、商人さんが手作業で荷台から商品を降ろしていく。
そして村の広場に敷物を広げて商品を並べる。
手のひらに収まるサイズの巾着、あとなんか不思議な生き物の干物、美味しそうな木の実等々。
珍しい商品あれこれよりもオレの目を引いたのは、商人さん本人だ。黒髪の青年。それもただの青年ではなく、ファンタジーなゲームに一人はいそうな黒い翼を持つ天使だった。
「こんちは。商人さん天使? この世界だと別の呼び方かな? どこから来たの?」
「※☆△●?」
うむ。やはりというかなんというか、商人さんが何言ってるか全くわからん。言語翻訳スキルがないからか。
「あんたもみないかおだね、っていってる」
「おおお、翻訳ありがとな。えーとミミ。この世界の言葉で『オレはキムランです』はなんて言ったらいい?」
ミミがゆっくり、耳慣れない言語の羅列を口にする。きっとこれがスキルを介さないこの世界の言葉だ。オレはそれを復唱して、行商人さんに挨拶する。
「☓☓▽∀∂●●、ファクター」
ファクター、だけはなんとか聞き取れた。
「おいらはファクターっていうんだ、よろしくキムラン……といっている」
「ファクター、うん。覚えたぞ」
そのあともミミを介していくつか質問して、ファクターもナガレビトとして異界からここにたどり着いたヒトだということがわかった。
天使ではなく、翼人 という種族。
こうしてファクターと出会ってみて、いろんな世界と境界を接しているというのを改めて実感する。地球には有翼人種なんて実在しない。
「▼▼≫○★※Ω、○△」
「かえるほうほうをさがそうとおもったこともあったけど、いまはこのせかいの、しょうにんとしてのくらしがきにいっている……って」
「はー。教えてくれてありがとな、ファクター。ミミも通訳ありがと。オレも通訳なしで会話できるように、ドロシーさんから文字だけでなく言葉も習わないといけないな〜」
「がんばれ、キムラン」
ファクターがこの世界の言葉を話せるってことは、努力してこの世界で生きるために言葉を習得したってことだ。今は村で暮らしているからみんなの翻訳スキルに助けられているけど、自活できるくらいにはなりたい。
村の外の人と話せるようになれば、見える世界がもっともっと広がるだろうな。
日が高くなるとともに他の村人たちもファクターの商品を見に集まってきて、ついでに先日海辺で回収してきた物をファクターに買い取ってもらう。
小銭がいくつかとお札がたくさん。
買い物に来ていたドロシーばあちゃんが、いい機会だからと、村の子どもたちも交えてお金についての授業をはじめた。
「いいかい。最小単位が1リル。この鈍い色のコインだ。その次が10リル。赤いコイン。100リル、500リルはコインがひとまわり大きい。1000リルからはお札になる。1000、1万、それぞれ札に数字が印字されているし、札の色が違うから分かりやすいだろう」
ものを買う、宿に泊まる、食堂で食事をする。いずれにしろ、生活するのに金を知らないと困るからな。
村のみんながファクターと売買しているのを見る限り、金銭のやりとりは日本とさして変わらないように見える。
「金が足りないときは仕事をしてまかなったり、身につけたもので金になりそうなものを代わりに差し出すこともある。とくにユーイなんて初めて村の外に出たときは本を買いすぎて」
「はぁ!?? ちょ、ちょちょちょ!! やめてよドロシーさん、そういうこと小さい子達の前で言わないでくれない!? あたしにだって面目ってものが」
思わぬところで飛び火を食らったユーイさん。慌てるあまり買ったばかりの果物を取り落とした。
子ども達は面白がってドロシーばあちゃんに先を促す。
「とめるなよユーイ。こんな面白い話なかなか聞けないだろ。ばあちゃん、ユーイはどうなったんだ?」
「教えて教えて!」
「やめてったらーー!!」
結果、ドロシーばあちゃんは黙っていたけれど。
予想外の人がバラした。
「ユーイは手持ちのお金が足りないけど欲しい本を諦めるのも嫌って駄々をこねて、町に残って3日間レストランで皿洗いに明け暮れていたの。わたしも一生のお願い! って泣きつかれてバイトを手伝ったからよ〜く覚えているわ」
「お、オリビア〜〜〜〜!!」
クールで通っているユーイさんが実は……。
しばらくの間ユーイさんは、村の子どもたちからからかわれることとなったのである。
首都に出回らないような珍品を探すため、そして物品を売るため、たまに行商人も訪れるという。
そんなわけで、今日オレは初めて村人以外の人間と出会った。
畑仕事して朝飯を食べたあと、ミミと外に出てみたら見知らぬ人がいた。
「ミミ、あの人村の人?」
「ぎょーしょうにん。たまにむらにきて、いろいろうってくれる」
「へー!」
毛がアルパカのようにフサフサな馬(たぶん馬)の鞍に荷車が繋がれていて、商人さんが手作業で荷台から商品を降ろしていく。
そして村の広場に敷物を広げて商品を並べる。
手のひらに収まるサイズの巾着、あとなんか不思議な生き物の干物、美味しそうな木の実等々。
珍しい商品あれこれよりもオレの目を引いたのは、商人さん本人だ。黒髪の青年。それもただの青年ではなく、ファンタジーなゲームに一人はいそうな黒い翼を持つ天使だった。
「こんちは。商人さん天使? この世界だと別の呼び方かな? どこから来たの?」
「※☆△●?」
うむ。やはりというかなんというか、商人さんが何言ってるか全くわからん。言語翻訳スキルがないからか。
「あんたもみないかおだね、っていってる」
「おおお、翻訳ありがとな。えーとミミ。この世界の言葉で『オレはキムランです』はなんて言ったらいい?」
ミミがゆっくり、耳慣れない言語の羅列を口にする。きっとこれがスキルを介さないこの世界の言葉だ。オレはそれを復唱して、行商人さんに挨拶する。
「☓☓▽∀∂●●、ファクター」
ファクター、だけはなんとか聞き取れた。
「おいらはファクターっていうんだ、よろしくキムラン……といっている」
「ファクター、うん。覚えたぞ」
そのあともミミを介していくつか質問して、ファクターもナガレビトとして異界からここにたどり着いたヒトだということがわかった。
天使ではなく、
こうしてファクターと出会ってみて、いろんな世界と境界を接しているというのを改めて実感する。地球には有翼人種なんて実在しない。
「▼▼≫○★※Ω、○△」
「かえるほうほうをさがそうとおもったこともあったけど、いまはこのせかいの、しょうにんとしてのくらしがきにいっている……って」
「はー。教えてくれてありがとな、ファクター。ミミも通訳ありがと。オレも通訳なしで会話できるように、ドロシーさんから文字だけでなく言葉も習わないといけないな〜」
「がんばれ、キムラン」
ファクターがこの世界の言葉を話せるってことは、努力してこの世界で生きるために言葉を習得したってことだ。今は村で暮らしているからみんなの翻訳スキルに助けられているけど、自活できるくらいにはなりたい。
村の外の人と話せるようになれば、見える世界がもっともっと広がるだろうな。
日が高くなるとともに他の村人たちもファクターの商品を見に集まってきて、ついでに先日海辺で回収してきた物をファクターに買い取ってもらう。
小銭がいくつかとお札がたくさん。
買い物に来ていたドロシーばあちゃんが、いい機会だからと、村の子どもたちも交えてお金についての授業をはじめた。
「いいかい。最小単位が1リル。この鈍い色のコインだ。その次が10リル。赤いコイン。100リル、500リルはコインがひとまわり大きい。1000リルからはお札になる。1000、1万、それぞれ札に数字が印字されているし、札の色が違うから分かりやすいだろう」
ものを買う、宿に泊まる、食堂で食事をする。いずれにしろ、生活するのに金を知らないと困るからな。
村のみんながファクターと売買しているのを見る限り、金銭のやりとりは日本とさして変わらないように見える。
「金が足りないときは仕事をしてまかなったり、身につけたもので金になりそうなものを代わりに差し出すこともある。とくにユーイなんて初めて村の外に出たときは本を買いすぎて」
「はぁ!?? ちょ、ちょちょちょ!! やめてよドロシーさん、そういうこと小さい子達の前で言わないでくれない!? あたしにだって面目ってものが」
思わぬところで飛び火を食らったユーイさん。慌てるあまり買ったばかりの果物を取り落とした。
子ども達は面白がってドロシーばあちゃんに先を促す。
「とめるなよユーイ。こんな面白い話なかなか聞けないだろ。ばあちゃん、ユーイはどうなったんだ?」
「教えて教えて!」
「やめてったらーー!!」
結果、ドロシーばあちゃんは黙っていたけれど。
予想外の人がバラした。
「ユーイは手持ちのお金が足りないけど欲しい本を諦めるのも嫌って駄々をこねて、町に残って3日間レストランで皿洗いに明け暮れていたの。わたしも一生のお願い! って泣きつかれてバイトを手伝ったからよ〜く覚えているわ」
「お、オリビア〜〜〜〜!!」
クールで通っているユーイさんが実は……。
しばらくの間ユーイさんは、村の子どもたちからからかわれることとなったのである。