ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜

 今日ゲットしたスライムとチーザの実は、村人それぞれの家族分に振り分けられた。いつも狩りはこうなんだってさ。
 みんな持ちつ持たれつ。ひとり暮らしのおばあちゃん家にだって平等にわけられる。
 お年寄りにも優しいとは、いい村だな。

「ミミただいまー。見ろよこれ、大収穫だぞー!」
「キムランおかえり。たくさん、ごちそう! わたしももつ」
「じゃあこっち任せるよ」
「まかされた」

 収穫物を前にしたミミの目が輝く。チーザの実のほうが軽いから、実をミミに任せる。

「チーザ、すき。おいしい」
「へー。ミミはチーザが好きなんだな」

 一緒に帰ってごはんの支度だ。
 家にある食材を見ると丸いもが多めにある。あ、これならアレが作れるかもしれん。

「ミミ、世話になってばかりだし、今日はオレが作ってもいいか?」
「いいよ。でも、だいじょぶ?」
「ん。知らないやつは使い方教えてくれ」

 ミミに教わって、まずチーザを開ける。
 チーザの実はピスタチオみたいなカラにおおわれている。すき間にナイフを入れて軽く力をこめると、パリ、といい音をたてて2つに割れた。
 生の状態だともちもちしている。ちょっと摘んで食べてみるとモッツァレラチーズみたいな味わい。

 鉄の深皿に油を塗って、薄切りした丸いも、スライム肉、チーザを乗せて少々の塩を振り、また丸いもとスライム肉、チーザを。何回もこれを繰り返して層にしていく。

 一番上にチーザと乾燥させた香草。
 珍しいものを見るように、ミミが横でジッーーっと作業一つ一つ聞いてくる。

「なんでこんなにかさねる?」
「オレのいた世界にこういう料理があるんだよ。使うのはあっちの食材だけど。食べた感じ味が似てるし、すごく美味しいはずだから楽しみにしてろよ〜」
「うむ、たのしみ」

 ここで下準備ができた。魔法の石窯に入れて弱火力で焼き上げる。魔法窯の使い方がよくわからないから、そこはミミに任せる。

 30分ほどしていい香りが家の中に漂う。
 焼け具合もバッチシ。表面にもいい感じに焦げがある。

「いえーい、できたぞミミ〜! キムラン特製チーザとスライムの重ね焼きぃ〜!」
「おおおぉ〜。チーザ、たくさん!」
「さぁ食べるぞー!」

 お祈して、さっそくそれぞれの皿に取り分ける。
 思惑通りきれいな層になって、それぞれの味が染みこみあっている。
 芋にはチーザとスライムの味、スライムにはチーザのとろみ、イタリアンなピザも真っ青な具合にチーザが伸びる。

「チーザうんま!! 丸いもとスライムと相性バッチシじゃん! どうだ、ミミ。気に入ったか?」
「おいしい。おかわり」

 ミミは満面の笑顔で重ね焼きをほおばり、次々お皿におかわりを追加していく。口のまわりがチーザでベタベタ。ホントに好きなんだな。
 こんなに喜んでくれるなら、作ってよかった。

 オレよりミミのほうがたくさん食べたんじゃなかろうか。ハルルのみつで喉をうるおして、完食。

「またつくって」
「おう! ミミが食べたいって言ったらいつでも作るよ」
「ん。やくそく」

 こうして、5日に1回はオレが料理を作る日が設けられることとなった。養われる身として、育て親ミミさんが喜んでくれるなら何よりだな、うんうん。



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