魔法少女ばあやの日常

 今回魔物が現れたのは王城から北方に行った港町でした。
 三匹の魔物が町を破壊して回っています。
 わたしとソフィアが目の前の一匹を送還するため戦い、ルーカスはほかの二匹を人のいるところから遠ざけるためおとりになります。

「さあ来なさい! わたしが相手です!」

 最初の頃は一匹ずつ出てきていたのに、最近は数体が一気に来ることが増えました。魔物を呼び寄せている者たちはこちらの手を理解した上で作戦を練っているのでしょう。
 魔物が大きく跳躍したタイミングで時計を構え、着地するのに合わせ停止魔法をかけます。
 
「ソフィア、今のうちに!」
「はい、ミラお姉さま! エクストラディクション!」

 これで一匹。残る二匹を送還するため、ホウキに乗ってルーカスがいるところに急ぎます。
 

 ひときわ大きな魔物の肩に、黒髪の少女が座っています。魔物を怖がるのではなく、指揮しているような。

「いい戦いぶりねルーカス様。さすが騎士団長。その力、無力な人間なんかのためでなく、崇高なる魔族のために使うのが正しいんじゃない?」
「なにを馬鹿なことを。町を破壊するような者たちの味方なんてするわけがないだろう」

 少女の言葉から、魔物を呼び寄せている組織の一員だというのがわかります。そして少女の目的はルーカスを引き入れること。

 ルーカスのそばに降りようとして、目の前に雷の塊が飛んできました。
 とっさに避けたものがわたしの後方にあった時計台を壊します。

「魔法?」
「あたしの邪魔をしないでちょうだい、魔法少女。ルーカス様には魔の者の仲間になってもらうんだから。あんたらの力もそげて一石二鳥よ!」
「あなたたちの思い通りになんてさせないわ」
「偽物の手紙でのこのこ現れちゃうような馬鹿王子が継ぐ国なんて、守ってもしょうがないじゃない」

 どうやらこの子が、魔法少女を騙る手紙を出した張本人のようです。
 わたしとソフィアは顔を見合わせ、うなずいて地上に降り立ちます。

「たしかにダミアン殿下はおろかですが、それは国を見捨てる理由になりません。この世界から手を引いて、あるべき場所に帰ってください!」

 それぞれ武器をかまえ、魔物を率いる少女との戦いが始まりました。




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