魔法少女ばあやの日常

 住民の避難が終わり、ようやく戦える状態になりました。
 魔法を放とうとすれば、魔物は建物を破壊しながら逃げ回る。
 バレィラを放とうと構えた途端、崩れた壁が目の前に落ちてきて、急いで飛び退きます。

「この、ちょこまかと!」

 今回の魔物はふわふわした見た目なのにとても素早い。ルーカスが振り下ろす刃を避けて着地します。
 ソフィアが頬を膨らませて叫びました。

「もおおお! 邪魔ばっかしないでよ! 追尾の火リアマ!」

 杖を大きく振り上げるとピンクの光球が、建物を避けながら魔物を追いかけ、魔物の頭に直撃しました。
 これがソフィアの新しい魔法。

「ホーミング魔法か」
「やったあ!! お姉さま! この隙に停止魔法を!」

 わたしはうなずき、時計を構えます。
 
「エスペイラ!」

 魔物は地に膝をついたまま停止し、ルーカスが剣で突いてたたみかける。

「エクストラディクション!」

 ソフィアの送還で魔物が魔法陣の向こうに消えていきました。
 
「よ、よかった……。なんとかなりましたね」

 今更になって足が震え、座り込んでしまいました。
 離れたところで待機していた騎士たちが駆け寄ってきます。

「ありがとうございます。団長、魔法少女さん」
「いえ、役目を果たしたまでで……」

 そろそろ時間切れになってしまう。
 急いで退散しないとと思う前に、元に戻ってしまいました。

 ーー騎士たちのいる前で。

「え、エデルミラ、さん!?」

 ああ、ばれてしまいました。
 隠しておきたかったのに。

 魔法少女のままなら飛んで逃げるのに、ただの人間のおばあさんではそんなことできません。

「お姉さま!」

 ソフィアもまた、元の姿に戻ってしまいます。
 ソフィアがいつもより遅く来た日。
 草原で魔物に襲われた人の一人でした。


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