戦国BASARA
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ぽかぽか。時々、へにゃり。
「では今日はここまでだ。三十五ページまで予習をしておくこと、良いな?」
三時限目の終わりを告げるチャイムが教室に鳴り響いた。ファッションモデル顔負けなスタイルと美貌を持つ英語教師・雑賀孫市先生はそれだけ言い残すと教材を片付けて教壇を去った。姿勢良く歩く姿から教壇から教室の扉までの短い道のりも大きなステージのランウェイに見える。
先生が教室を後にすると、静寂に包まれていた教室は生徒たちが会話を始めたり、席を離れたりで騒がしくなる。
「ふう、」
まだ三時限目か、お腹空いたな。と思いながら机に広げていた英語の教材を鞄へと片付ける。授業で使う大きな黒板の横にある小さな黒板で次の授業を確認し、数学の教材を鞄から取り出した。
教室の壁にある時計をちらりと目を移す。まだ次の授業までには時間がある。小腹を満たす為に鞄にいつも入れてあるお菓子専用のポーチを手を取った。
「あ」
心を踊らせながらポーチの口を開くが、中には目当てのお菓子は無かった。昨日最後の一つを食べたことを思い出し、溜息をついた。
空腹と戦いながら、苦手な数学とも戦わなければならないのか、と憂鬱な気分になった。
おやつがないと思うと、本格的にお腹が減ってきた。脳って単純だよね、本当に。私はまた小さく溜め息をついた。
「……?」
しょんぼりしてると、とんとんと右肩を叩かれた。頭を傾げつつ、振り返ると後ろの席の風魔くんが微笑んでいた。どうしたんだろ、と思いながら目線を下げると風魔くんの手にはタッパーが握られていた。風魔くんは中身を私へ見せるようにタッパーの蓋を開ける。中にはクッキーがたくさん入っており、今の私には宝の山に見えた。ふんわりと漂ってくる良い匂いが私の鼻孔を擽る。ぐい、と風魔くんはタッパーを私の方へと寄せた。
「……くれるの?」
「……」
風魔くんの唇は弧を描き、こくりと頷いた。あげる、と言うようにまたぐいっとタッパーを寄せられた。
「いいの?」
「……」
こくり。また風魔くんが頷く。
「じゃあ……もらいます……」
「……」
たくさんあるクッキーの1つを手に取る。チョコチップクッキーだ。
「いただきます」
「……」
一口齧り付いた。口に入れたそれを咀嚼すると口の中に広がる甘み。それが何とも言えない美味しさだった。学校の最寄駅にある行列ができるケーキ屋さんが売っているクッキーより美味しい。
「おいしい……!」
「……!」
作文コンクールで賞を取ったことすらない私は誰でも言えるような平凡な感想しか言えなかった。それでも風魔くんは嬉しそうに笑った。その笑顔に胸がぽかぽかした。私は手に持っている残りのクッキーをぱくぱくと食べきる。あー、やっぱり美味しい。
「……あの、」
「……?」
「もう一枚食べても良いかな?」
風魔くんは、少し食い気味に頷いた。私はクッキーを1つ手に取る。今度はアーモンドクッキーだ。今度は一口で食べきる。
「本当に美味しい!」
私がボキャブラリーに優れていたら、聞いた人が涎を垂らすほど上手風魔くんのクッキーの美味しさを表現できるのにな。ごめんね、風魔くん。現国の教科書に作品が載っている名だたる文豪達は、この味を何と文字で表現するのだろうか。そんなことを思った。
「風魔くん、これ自分で作ったの?」
「……」
こくりと遠慮がちに風魔くんは頷いた。
「すごい! 風魔くんすごいね! とってもとっても美味しいよ!」
「……!」
風魔くんは頬を赤らめた。そして、漫画なら"へにゃり"と擬態語を顔の横に書かれそうな笑顔で笑った。なんだその笑顔。とってもかわいい。
「ごちそうさまでした。お昼にまたもらっても良い?」
「……」
もちろん、と言いたげな顔で頷く風魔くん。
(またクッキー食べたらさっきの笑顔してくれるかな?)
先程の笑顔を思い浮かべていると思ってると四限目の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
「ありがとう、風魔くん。数学頑張ろうね」
風魔くんは頷いて小さく手を振った。私もそれに手を振り返し、風魔くんに背を向けて椅子に座った。
何だか今日は数学に勝てそう。そんな気分で先生の指示通り、教科書を開いたのだった。
「では今日はここまでだ。三十五ページまで予習をしておくこと、良いな?」
三時限目の終わりを告げるチャイムが教室に鳴り響いた。ファッションモデル顔負けなスタイルと美貌を持つ英語教師・雑賀孫市先生はそれだけ言い残すと教材を片付けて教壇を去った。姿勢良く歩く姿から教壇から教室の扉までの短い道のりも大きなステージのランウェイに見える。
先生が教室を後にすると、静寂に包まれていた教室は生徒たちが会話を始めたり、席を離れたりで騒がしくなる。
「ふう、」
まだ三時限目か、お腹空いたな。と思いながら机に広げていた英語の教材を鞄へと片付ける。授業で使う大きな黒板の横にある小さな黒板で次の授業を確認し、数学の教材を鞄から取り出した。
教室の壁にある時計をちらりと目を移す。まだ次の授業までには時間がある。小腹を満たす為に鞄にいつも入れてあるお菓子専用のポーチを手を取った。
「あ」
心を踊らせながらポーチの口を開くが、中には目当てのお菓子は無かった。昨日最後の一つを食べたことを思い出し、溜息をついた。
空腹と戦いながら、苦手な数学とも戦わなければならないのか、と憂鬱な気分になった。
おやつがないと思うと、本格的にお腹が減ってきた。脳って単純だよね、本当に。私はまた小さく溜め息をついた。
「……?」
しょんぼりしてると、とんとんと右肩を叩かれた。頭を傾げつつ、振り返ると後ろの席の風魔くんが微笑んでいた。どうしたんだろ、と思いながら目線を下げると風魔くんの手にはタッパーが握られていた。風魔くんは中身を私へ見せるようにタッパーの蓋を開ける。中にはクッキーがたくさん入っており、今の私には宝の山に見えた。ふんわりと漂ってくる良い匂いが私の鼻孔を擽る。ぐい、と風魔くんはタッパーを私の方へと寄せた。
「……くれるの?」
「……」
風魔くんの唇は弧を描き、こくりと頷いた。あげる、と言うようにまたぐいっとタッパーを寄せられた。
「いいの?」
「……」
こくり。また風魔くんが頷く。
「じゃあ……もらいます……」
「……」
たくさんあるクッキーの1つを手に取る。チョコチップクッキーだ。
「いただきます」
「……」
一口齧り付いた。口に入れたそれを咀嚼すると口の中に広がる甘み。それが何とも言えない美味しさだった。学校の最寄駅にある行列ができるケーキ屋さんが売っているクッキーより美味しい。
「おいしい……!」
「……!」
作文コンクールで賞を取ったことすらない私は誰でも言えるような平凡な感想しか言えなかった。それでも風魔くんは嬉しそうに笑った。その笑顔に胸がぽかぽかした。私は手に持っている残りのクッキーをぱくぱくと食べきる。あー、やっぱり美味しい。
「……あの、」
「……?」
「もう一枚食べても良いかな?」
風魔くんは、少し食い気味に頷いた。私はクッキーを1つ手に取る。今度はアーモンドクッキーだ。今度は一口で食べきる。
「本当に美味しい!」
私がボキャブラリーに優れていたら、聞いた人が涎を垂らすほど上手風魔くんのクッキーの美味しさを表現できるのにな。ごめんね、風魔くん。現国の教科書に作品が載っている名だたる文豪達は、この味を何と文字で表現するのだろうか。そんなことを思った。
「風魔くん、これ自分で作ったの?」
「……」
こくりと遠慮がちに風魔くんは頷いた。
「すごい! 風魔くんすごいね! とってもとっても美味しいよ!」
「……!」
風魔くんは頬を赤らめた。そして、漫画なら"へにゃり"と擬態語を顔の横に書かれそうな笑顔で笑った。なんだその笑顔。とってもかわいい。
「ごちそうさまでした。お昼にまたもらっても良い?」
「……」
もちろん、と言いたげな顔で頷く風魔くん。
(またクッキー食べたらさっきの笑顔してくれるかな?)
先程の笑顔を思い浮かべていると思ってると四限目の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
「ありがとう、風魔くん。数学頑張ろうね」
風魔くんは頷いて小さく手を振った。私もそれに手を振り返し、風魔くんに背を向けて椅子に座った。
何だか今日は数学に勝てそう。そんな気分で先生の指示通り、教科書を開いたのだった。
End.