戦国BASARA
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頬を染めし彼
(猿飛佐助)
冬の寒さで悴み赤くなってしまった自分の手にはあ、と息を吹きかける。息は空気中で水蒸気へと代わり、白く形が見えるものとなる。
「絃ちゃん、手袋は?」
「それが……忘れちゃって……」
両手を擦り合わせながら私は自分の隣を歩いている佐助くんに苦笑する。首にはマフラーが巻いてあるから暖かいが、手袋を付けていない手は感覚が無くなってしまう程に冷えてしまっている。今日は確か最高気温がとても低くなると昨日のニュースで言っていた気がする。コートのポケットに手を突っ込みたくなるが、そうすると佐助くんに注意をされてしまうからできない。佐助くんはポケットに手を入れているのに、だ。そんな佐助くんの首にも自分と同じようにマフラーが巻いてある。ちなみに佐助くんのマフラーは迷彩柄だ。
「絃ちゃん、ギリギリだったもんね」
佐助くんの言う通り、私は今日寝坊をしてしまい遅刻ギリギリだった。慌てて家を出発したからいつも付けている手袋を忘れてしまった。
「佐助くんは遅刻だったよ」
慌てて全速力で走りながら登校した私とは反対に佐助くんはのらりくらりと一限目の途中に登校してくるのを座席が窓辺の私は見ていた。
「俺様はいーの」
「というか私より後に登校してきたし、クラス違うのにどうしてギリギリなの知ってるの?」
「あはー、さあどうしてでしょー?」
見慣れた笑顔で佐助くんは笑っている。何かを隠す時、誤魔化す時によく見る笑顔だ。どうして? と聞き出そうとしたが止めた。開いた口を閉じる。彼はあまり自分のことを話そうとしない。私はそれをよく知っている。彼は昔からそうだった。そう。昔、から。
「ほら」
「?」
佐助くんはコートのポケットに突っ込んでいた右手を外に出し、私に差し出す。私は佐助くんの意図が分からず首を傾げる。
「暖めてあげるから。手、出して?」
「う、うん……」
私が右手を宙に浮かせて彼の手に触れるのを躊躇っていると、佐助くんから自ら私の手に触れた。そのまま私の手を優しく包み込んだ。
「佐助くんの手、暖かい…」
「そう? 良かった」
佐助くんは嬉しそうに笑っている。
「左手も」
佐助くんにそう言われ、左手も佐助くんに差し出した。すると先程と同じように左手も彼の手によって包み込まれる。
昔は、こんな事なかった。彼はこんな事を絶対にしなかった。彼は私が触れることを嫌ったから。
『駄目だよ、姫様』
『……どうして?』
『どうしても』
遠い昔に私が"姫"と呼ばれ、彼が"忍"と呼ばれていた時の話。いつもそうして、はぐらかされあしらわれていた。そして、あの頃は触れることもできなかった。
だが、今はこうして何にも邪魔をされずに触れることができる。
「手袋、忘れて良かった…」
「ん? 何か言った?」
「ううん、何も」
首を傾げる佐助くんに私は微笑んだ。
彼がどこにも行ってしまわないように彼の手を握る。すると彼はまた嬉しそうに笑った。その笑顔は、赤でも黒でもなく夕陽の橙色に染まっていた。
(猿飛佐助)
冬の寒さで悴み赤くなってしまった自分の手にはあ、と息を吹きかける。息は空気中で水蒸気へと代わり、白く形が見えるものとなる。
「絃ちゃん、手袋は?」
「それが……忘れちゃって……」
両手を擦り合わせながら私は自分の隣を歩いている佐助くんに苦笑する。首にはマフラーが巻いてあるから暖かいが、手袋を付けていない手は感覚が無くなってしまう程に冷えてしまっている。今日は確か最高気温がとても低くなると昨日のニュースで言っていた気がする。コートのポケットに手を突っ込みたくなるが、そうすると佐助くんに注意をされてしまうからできない。佐助くんはポケットに手を入れているのに、だ。そんな佐助くんの首にも自分と同じようにマフラーが巻いてある。ちなみに佐助くんのマフラーは迷彩柄だ。
「絃ちゃん、ギリギリだったもんね」
佐助くんの言う通り、私は今日寝坊をしてしまい遅刻ギリギリだった。慌てて家を出発したからいつも付けている手袋を忘れてしまった。
「佐助くんは遅刻だったよ」
慌てて全速力で走りながら登校した私とは反対に佐助くんはのらりくらりと一限目の途中に登校してくるのを座席が窓辺の私は見ていた。
「俺様はいーの」
「というか私より後に登校してきたし、クラス違うのにどうしてギリギリなの知ってるの?」
「あはー、さあどうしてでしょー?」
見慣れた笑顔で佐助くんは笑っている。何かを隠す時、誤魔化す時によく見る笑顔だ。どうして? と聞き出そうとしたが止めた。開いた口を閉じる。彼はあまり自分のことを話そうとしない。私はそれをよく知っている。彼は昔からそうだった。そう。昔、から。
「ほら」
「?」
佐助くんはコートのポケットに突っ込んでいた右手を外に出し、私に差し出す。私は佐助くんの意図が分からず首を傾げる。
「暖めてあげるから。手、出して?」
「う、うん……」
私が右手を宙に浮かせて彼の手に触れるのを躊躇っていると、佐助くんから自ら私の手に触れた。そのまま私の手を優しく包み込んだ。
「佐助くんの手、暖かい…」
「そう? 良かった」
佐助くんは嬉しそうに笑っている。
「左手も」
佐助くんにそう言われ、左手も佐助くんに差し出した。すると先程と同じように左手も彼の手によって包み込まれる。
昔は、こんな事なかった。彼はこんな事を絶対にしなかった。彼は私が触れることを嫌ったから。
『駄目だよ、姫様』
『……どうして?』
『どうしても』
遠い昔に私が"姫"と呼ばれ、彼が"忍"と呼ばれていた時の話。いつもそうして、はぐらかされあしらわれていた。そして、あの頃は触れることもできなかった。
だが、今はこうして何にも邪魔をされずに触れることができる。
「手袋、忘れて良かった…」
「ん? 何か言った?」
「ううん、何も」
首を傾げる佐助くんに私は微笑んだ。
彼がどこにも行ってしまわないように彼の手を握る。すると彼はまた嬉しそうに笑った。その笑顔は、赤でも黒でもなく夕陽の橙色に染まっていた。
End.