BLEACH
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淡い憧憬
廊下と副隊首室を隔ている戸を手のひらを軽く握って作った拳の甲で数回叩く。
──コン、コン。
そして中にいるであろう人物に声を掛ける。
「檜佐木副隊長。名字です」
「おう」
「失礼します」
短い返事が部屋の中から聞こえ、襖を開く。
部屋の中には忙しなく手を動かしている檜佐木副隊長の姿があった。檜佐木副隊長は部屋に入ってきた私へ目を移すと左手を上げて、疲れた顔で笑った。私はそれに対して頭を下げる。
檜佐木副隊長の机の上には数十枚の書類と編集中の瀞霊廷通信の原稿が置いてある。
「書類か?」
「はい。こちらの書類へ判をお願い致します」
また檜佐木副隊長は「おう」と短い返事をし、私が手に持っていた書類を受け取る。書類に目を通すと、"九"と刻まれている隊首印を書類へ押した。
「ほらよ」
「ありがとうございます。では、失礼します」
檜佐木副隊長から書類を受け取り、もう一度頭を下げる。
「髪伸びたな、名字」
副隊首室から出て行こうと、身を翻すと檜佐木副隊長が独り言のようにポツリと呟いた。
「あ、はい。伸ばしてみようかな、って思って……」
「よく似合ってる」
そう言って、また疲れた顔で檜佐木副隊長ははにかんだ。
「……ありがとう、ございます」
そんなことを言われるとは思っておらず、手に持っていた書類を少し強く握り込んでしまった。
「……檜佐木副隊長、あまり無理されないでくださいね。では失礼します」
私はそれだけ言うと副隊首室を後にした。
暫くそのまま廊下を歩き、副隊首室から離れた場所で立ち止まる。
檜佐木副隊長の言う通り、私は髪を伸ばした。肩ぐらいの長さだった髪は今は鎖骨より下までの長さになっている。
髪を伸ばした理由は、檜佐木副隊長が憧れているあの人をただ真似てみただけ。
彼に少しでもよく思われたくて、そうしたはずなのに檜佐木副隊長の言葉を素直に喜ぶことが出来なかった。胸が痛い。素直に喜べない可愛くない自分に嫌気がさす。
──よく似合ってる。
髪を伸ばす前にその言葉が聞けていたら、どんなに嬉しかっただろうか。
檜佐木副隊長の言葉に可愛らしく素直に喜んで、笑いながら言葉が返せていたら、何か変わっていたのだろうか。
いつも後悔ばかりの私。
それでも、そんな私を優しく照らす太陽が空にはあった。
廊下と副隊首室を隔ている戸を手のひらを軽く握って作った拳の甲で数回叩く。
──コン、コン。
そして中にいるであろう人物に声を掛ける。
「檜佐木副隊長。名字です」
「おう」
「失礼します」
短い返事が部屋の中から聞こえ、襖を開く。
部屋の中には忙しなく手を動かしている檜佐木副隊長の姿があった。檜佐木副隊長は部屋に入ってきた私へ目を移すと左手を上げて、疲れた顔で笑った。私はそれに対して頭を下げる。
檜佐木副隊長の机の上には数十枚の書類と編集中の瀞霊廷通信の原稿が置いてある。
「書類か?」
「はい。こちらの書類へ判をお願い致します」
また檜佐木副隊長は「おう」と短い返事をし、私が手に持っていた書類を受け取る。書類に目を通すと、"九"と刻まれている隊首印を書類へ押した。
「ほらよ」
「ありがとうございます。では、失礼します」
檜佐木副隊長から書類を受け取り、もう一度頭を下げる。
「髪伸びたな、名字」
副隊首室から出て行こうと、身を翻すと檜佐木副隊長が独り言のようにポツリと呟いた。
「あ、はい。伸ばしてみようかな、って思って……」
「よく似合ってる」
そう言って、また疲れた顔で檜佐木副隊長ははにかんだ。
「……ありがとう、ございます」
そんなことを言われるとは思っておらず、手に持っていた書類を少し強く握り込んでしまった。
「……檜佐木副隊長、あまり無理されないでくださいね。では失礼します」
私はそれだけ言うと副隊首室を後にした。
暫くそのまま廊下を歩き、副隊首室から離れた場所で立ち止まる。
檜佐木副隊長の言う通り、私は髪を伸ばした。肩ぐらいの長さだった髪は今は鎖骨より下までの長さになっている。
髪を伸ばした理由は、檜佐木副隊長が憧れているあの人をただ真似てみただけ。
彼に少しでもよく思われたくて、そうしたはずなのに檜佐木副隊長の言葉を素直に喜ぶことが出来なかった。胸が痛い。素直に喜べない可愛くない自分に嫌気がさす。
──よく似合ってる。
髪を伸ばす前にその言葉が聞けていたら、どんなに嬉しかっただろうか。
檜佐木副隊長の言葉に可愛らしく素直に喜んで、笑いながら言葉が返せていたら、何か変わっていたのだろうか。
いつも後悔ばかりの私。
それでも、そんな私を優しく照らす太陽が空にはあった。
End.