愛おしい光 ずっと貴方を捜していました。
あたしを愛してくれる貴方を。
あたしは父親も母親の顔も知らず、治安の悪い流魂街で育ち、なんであたしがこんな目に遭わないといけないのだと散々な目に合ってきた。思い出したくもなければ、人に話したく無い出来事ばかりだ。
それでも、自分が不幸だとは思ったことは無かった。不幸ではなかったけど、寂しいと思うことは良くあった。友達がいなかったわけではない。寧ろ友達はいる方だと思う。それなりに毎日は楽しかった。
だけど、ふとした時に孤独に襲われる。それは夕暮れ時の空を見上げた時だったり、薄暗くなった部屋でぼんやりとしている時だったり、一人でご飯を食べている時だったり、夜寝る前だったり。
――なつめがすきだ。
それがたったそれだけの言葉で全部吹き飛んでしまった。
夕暮れ時の空は、手を繋いで二人で見上げたらとても綺麗だと思った。
薄暗くなった部屋に灯りをつけて、「腹すいたな」「今日は何を食べようか」と笑いながら話しをする。
二人で食べるご飯は美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまう。食べ終わったら「今度は口コミで流行ってるあれを食べよう」「現世にもご飯食べに行きたいね」なんて話をする。そして、また楽しみが増えていく。
夜寝る前には「また夢の中でね」なんて約束をして眠る夜が楽しい。
彼の言葉だったり、表情だったり、声だったり、全部から愛されているのだと感じて胸が暖かくなって空だって飛んでしまえそうな気分になってしまう。大虚だって一人で一撃で倒せちゃいそうなぐらい無敵な気分だ。生きていれば必ず良い事があるとはよく言ったものだ。
彼がこんなにあたしを強くして、勇気を与えてくれる存在になるなんて思わなかった。彼がいなくなってしまったら、きっとあたしは耐えられなくて死んでしまう。彼に愛をもらう前のあたしがどうやって生きて来たのか分からないのだ。これを依存と呼ぶなら、呼んでもらって構わない。それ程、もう考えられないのだ。彼があたしの隣にいない事を。
「あたしを見つけてくれてありがとう、一角」
まだ隣で眠っている一角の胸に擦り寄って呟く。一角は少し身を捩って、あたしを優しく抱きしめてまた寝入ってしまった。
「あたしがシワだらけのおばあちゃんになっても、ずっとずっと一緒にいてね」
あたしの左手にある銀色の指輪が朝日を反射して眩しくて、頬に涙が伝った。
終