ふたりのひみつ 空が茜色に染まり始めた頃、僕は台所に立っていた。親が共働きで2人共帰りが遅くなる為、僕はいつも母親の変わりに晩御飯を作って両親が帰ってくるのを待っている。
包丁で野菜をまな板の上でザクザクと切っていると小さな足音が近づいてくるのが聞こえた。
その足音の主はドンっと僕の右足に突進してきて、そのまま足に抱きついてきた。僕は握っていた包丁を落とさないように慌ててまな板の上に置いた。
「ちかちゃん…」
「
名前」
僕の右足に引っ付いているのは、紛れもなく血の繋がっている僕のたった一人の妹。まだ幼い妹の身の丈は僕の太股ぐらいしかない。
「どうしたの、
名前?」
優しく話しかけ、頭を撫でてやる。すると潤んだ瞳でこちらを見上げた。
名前は小さな手でぎゅっと僕のジーンズを更に強く握った。
「ぱぱと…まま、は…?」
「パパとママはね、今日はいつもより遅くなるんだって」
「……ままぁ…」
目に涙を溜めて、今にも泣き出してしまいそうな
名前を抱き上げる。
名前はよく母さんと父さんの帰りが遅くなると今みたいに泣き出してしまう。
「
名前、泣かないで」
優しく微笑んで目元にキスを落とす。すると、
名前は擽ったそうに笑った。
「お兄ちゃんね、
名前の為に今日はシチューを作ってあげるよ」
「!…ほんと?」
「うん」
「ちかちゃんのしちゅー、おいしいから…
なまえだいすき!」
名前はそう言うと笑顔の花を咲かせた。
「ちかちゃん、きょうもいっしょにおふろはいろうね!それでね、それでね
なまえといっしょにねようね」
「うん、いいよ」
頭を撫でてやると
名前は気持ちよさそうに目を細めた。
「ちかちゃん、だいすき!」
「僕も大好きだよ、
名前」
僕はにこにこと笑っている
名前の髪を掬い、キスを落とした。すると、
名前のふっくらと柔らかい頬は空と同じ茜色に染まった。
終