剣八さんが怪我をした。治療室に向かうと既に卯ノ花隊長が剣八さんの治療に当たっていた。二人に近付き、傍らで見守る。
「全く。貴方と言う人は何度言えば分かるのですか」
「そうしねえと面白くねえだろうが。勝てば良いんだ。勝てば」
「面白さを求めて、その結果として命を落としてしまっては元も子もありません」
「失ってねえから良いだろ」
「私は顧みないと訪れてしまう未来の事を言っているのです」
「チッ………」
卯ノ花隊長の小言に剣八さんは屁理屈を並べている。何を言っても勝てないことを悟ったのか舌打ちをついた後は、大人しく治療を受けていた。その二人の姿に胸が少し騒ついた。
「……
優紫?」
私の名を呼ぶ剣八さんの声で我に返る。
そして、あろう事か卯ノ花隊長の手首を掴んで治療する手を制している事に気付いた。慌てて私は直ぐに手を離す。
「も、申し訳ございませんっ!」
どう弁解しようかと言葉を探す私。嬉しそうに笑う彼。微笑ましそうに笑う上司。
「……忘れて下さい」
ああ、穴があったら入りたい。恥ずかしくなって私は顔を覆った。
終