戯れで作った、銀八先生名義のTwitterアカウント

鍵垢にしておけばどうせ誰にも見られないしと思い、一人で遊んでみることにした

二人きりの意味深な会話をイメージして、アカウントを切り替えながらDMでやり取りをする

そこまで書いて、手が止まった

全部私の勝手な想像だし、あの童貞代表みたいな先生に、そんな経験あるはずない

だらしなくて、やる気もなくて

いつだって死んだ魚のような目をしてて

あんなどうしようもない男なのにーー

……になっちゃったんだよなぁ……

でもこの気持ちを伝える事は許されない

教師と生徒の恋愛なんて、漫画やドラマの世界だけの話だもん

だったらせめて、この場所くらいは……

自作自演の世界でなら……

妄想をそのまま文字にして打ち込んでいると、突然掴まれた手

驚いて顔を上げれば、そこには本物の銀八先生が立っていた

打ち込むことに夢中で、周りが見えていなかったことを後悔する

さすがに気まずいと慌てて立ち上がり、この場を離れようとした

ところがーー

目の前で、信じられないことが起きている

いつの間にか、私のスマホが銀八先生の手の中にあったのだ

そんなはずは無いんだけれど……とは思いながらも、実際銀八先生の手の中にあるのだから仕方ない。私はおずおずと手を差し出した

妄想の会話を読まれてしまった事が確定し、恥ずかしさで真っ赤になった

当たり前の疑問に、答える勇気はない

恥ずかしさと軽率な行為への後悔で固まっていると、銀八先生が言った

何も言えず、俯きながら謝罪する

きっと呆れられただろう。ずっと秘めていた恋心も知られ、立場がない

頭が真っ白になった私は、零れ落ちそうになる涙をただ堪えることしか出来なかった

そんな私を見てため息を吐いた先生は、私のスマホを操作し始める

消したところで意味でもあるんだろうか？

理由は分からないけれど、何も言える立場では無いから。私は素直に頷いた

それから数分後

スマホを返され、受け取る

改めて謝った私は、アカウントが消えているかを確認するためTwitterを確認した

画面に大きな変化は無い。しかも会話の内容も残っている

先生は私のスマホに一体何をしたんだろう？

わけも分からず、促されるまま改めて内容を確認した私は、ようやく気づいた

それは、さりげなく書き換えられた会話

会話はそこまでで途切れていた

思わず先生を見る

そう言った先生の目は、いつもの死んだ魚の目とは違い、とても真剣だった

ならば、迷いはない

私は先生の目をまっすぐ見て答えた

フッ……と優しく微笑んだ先生が、私の頬に触れる

指で頬を撫で、最後に唇をなぞった先生は、ゆっくりと私に顔を近づけた

様子を伺うようにそっと触れた唇は一度離れ、その後は安心したように深く何度も重ねてくる

そう言って私を抱きしめた先生は大人の余裕を見せていたけれど

胸に押し当てた耳に聞こえていた鼓動の早さを隠せてはいなかった