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言葉を失ったまどかの見つめる先にある物。
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それはシンプルながらも可愛らしいデザインの指輪だった。
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銀時
安物で悪ィけど、男避けくらいにはなるだろ
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銀時
外ではいつも着けとけよ
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銀時
……その内、ちゃんとしたのを買ってやっから
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強く言い切った銀時は、いつになく真剣な表情をしていた。
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まどか
銀さん……!
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銀時の言葉を聞き、ゆっくりと上がったまどかの口角が小さく震えている。
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まどか
嬉しい……
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同時に浮かんだ涙はすぐに溢れ、まどかの頬を伝っていった。
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まどか
ありがとう……銀さん
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銀時
おうよ
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まどか
この指輪、死ぬまで大切に持っておくからね
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銀時
死ぬまでって……さっきも言ったがそれは仮のヤツだぞ
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銀時
それとももう本番用は必要ねーってか?
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まどか
勿論正式な物も買ってもらう
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銀時
いるんかいッ!
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銀時
なかなかに強かなヤツだな
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まどか
何とでも言いなさいな
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まどか
銀さんがくれる物なら何でも嬉しいんだもの
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まどか
それだけの事よ
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銀時
あーそうかよ
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銀時
銀さんがくれるものなら何でも、ねェ……
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未だ止まらぬ涙を拭いつつ指輪を眺めて喜んでいるまどかに目を細めながら、銀時が言う。
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銀時
だったらよォ
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銀時
コッチでももっと喜んで良いんじゃねー?
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そう言って銀時は、まどかの唇に指を当てた。
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そこから顎、喉、胸元、下腹部へと滑らせていく。
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銀時
さっきだって銀さん、全身全霊で頑張ったつもりなんだけど
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銀時
な〜んか喜び方が違わねェ?
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先程の名残を確かめるように、深い場所へと指を差し込む。
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思わずビクリと体を震わせたまどかは、一気にぶり返した熱を吐息に替えて言った。
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まどか
アレは、その……
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まどか
喜び方にも色々あるわけで
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まどか
今私が言ってるのは、あくまで形に残る物であって
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まどか
アレとコレとでは喜びのジャンルが違うと言うか……
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銀時
うーむ
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銀時
ってェことはつまりまどかとしては、形に残る愛情表現が欲しいと
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まどか
んー……まぁ端的に言えばそういう事になるかな
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銀時
んじゃ、話は簡単じゃねェか
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まどか
簡単……とは?
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銀時
今のお前にとって、銀さんにしか出来ねェ事
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銀時
銀さんにしか許されねェ、形に残る愛情表現だよ
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まどか
どう言う事?
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銀時
ま、どんなに早くても触れられるのは10ヶ月くらい先だろうけどな
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まどか
それって……っ!
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まさかの提案に唖然とするまどか。
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まどか
本気で……言ってる?
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銀時
もちろん。お前が良ければって条件付きだけどよ
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まどかの気持ちを確認してからだと言い切る。
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それは、いかに銀時が本気なのかの証。
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まどか
銀さん……
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展開の早さに、迷いはあった。
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だがそれよりも銀時を求める気持ちの方が大きかったのだろう。
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決心を固めたまどかは照れながら小さく一つ頷くと、銀時の胸に寄り添った。
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そんなまどかの耳元に口を近づけ、銀時が囁く。
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銀時
死ぬまで……いや、死んでも離さねェから
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銀時
銀さん渾身の形に残る愛情表現だ……ぜってェ幸せにしてやっからよ
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まどか
……うん
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唇が優しく重なる。
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そのままゆっくりとまどかの体はベッドに沈んでいきーー。
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数年後
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まどか
銀さん、ちょっと買い物に言ってくるから子守お願いね
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銀時
はいよ
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まどか
この間みたいに、赤ちゃんせんべいのあげ過ぎは厳禁だからね。ご飯食べられなくなっちゃうから
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銀時
へーへー
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まどか
美味しいからって銀さんが食べるのもダメよ
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銀時
どんだけ銀さん、信用ねーんだよ
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まどか
お留守番のご褒美に、甘いおやつも買ってくるからね
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銀時
ガキじゃねーっつーの!
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まどか
じゃあいらないの?
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銀時
いりまーす。今日は小倉カスタードのたい焼きな気分
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まどか
はいはい。それじゃ行ってくるね
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銀時
おう、気をつけて行ってこい
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笑顔で手を振り、万事屋の玄関を後にするまどか。
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少し歩いて振り向けば、銀時と、銀時に抱きかかえられた黒髪天パの赤子が手を振っていた。
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だがすぐに赤子はまどかを求めて暴れだし、銀時の悪戦苦闘が始まる。
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まどか
ありゃりゃ、今日はご機嫌斜めだ
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まどか
急いで買い物済ませてこなきゃ
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見慣れた光景に笑いながら踵を返したまどかは、肩にかけた買い物袋を強く握った。
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その手の薬指には、ペアリングと思しき指輪が光っている。
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まどか
二人とも待っててね
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そう言ってまどかは、目的地へと走り出した。
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あの時から絶えず銀時に与えられ続けている、幸せを噛み締めながらーー。
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