束縛

  • 時計を見ると、20時を回っていた。

  • 「今夜はどれだけ銀時の名を紡いだだろう」

  • 「どれだけ情熱的に愛されただろう」

  • 気だるさの中、まどかがそんな事をぼんやり考えていると、腕枕をしていた銀時が言った。

  • 銀時

    喉、乾いただろ

  • 銀時

    ちょっと水でも取ってくるわ

  • まどかを支えていた腕を抜き、立ち上がった銀時は、勝手知ったるまどかの部屋の冷蔵庫へと向かう。

  • 水のペットボトルとタオルを盆に乗せて持ってきた銀時は、まどかの体を起こさせて水を渡した。

  • まどか

    ありがと

  • 銀時に言われた通り、喉はカラカラになっている。

  • 早速口に含めば、喉を潤す冷たい感覚がとても心地良い。

  • まどか

    は……美味し

  • しみじみと呟くまどかに、銀時はクスリと笑った。

  • 銀時

    あんだけ喘いでりゃァ、喉も乾くってもんだ

  • まどかの横に並んで座り、自らも勢いよく水を飲む。

  • そして口の端から溢れた水を腕でぐいと拭うと、ニヤリと笑ってまどかに言った。

  • 銀時

    そんなにヨかったか?銀さんの……

  • まどか

    もう!それ以上言わないで!

  • 銀時

    へーへー

  • 顔を真っ赤にして怒るまどかを見た銀時の笑みが変わる。

  • それは、まどかが可愛くて仕方ないという蕩けた笑みだった。

  • 銀時

    ま、これで仲直りは出来たし、お互いの愛も確かめ合えたしで一石二鳥っしょ

  • まどか

    ……うん……

  • 赤い顔のまま、まどかが素直に頷く。

  • 銀時

    そーだろそーだろ

  • 満足げに頷いた銀時は、まどかの肩を抱き寄せた。

  • まどか

    銀さん……?

  • まどか

    苦しいよ

  • 抱き寄せる力がいつもより強かったようで、まどかが息苦しさを訴える。

  • 銀時の腕から抜け出そうにも、ビクともしない程の力にまどかは戸惑っていた。

  • まどか

    急にどうしたの?銀さん

  • まどか

    ちょっと腕を緩めて?ね?

  • 銀時

    ……嫌だね

  • まどか

    え?

  • 銀時

    もう二度と、俺以外の男と二人きりにならないって約束しろよ

  • 銀時

    でなきゃ離さねェ

  • 強く抱きしめられていて顔は見えないが、声から察するに銀時は本気だ。

  • 何をどう答えて良いのか分からないまどかは、敢えて素直な言葉を口にした。

  • まどか

    さっきの説明じゃ足りなかった?

  • まどか

    彼は仕事仲間であって、男として意識はしてないから…

  • 銀時

    「彼」って言ってんじゃねェか

  • まどか

    他に言い方が無いからよ。同僚って言えば良い?

  • まどか

    何にしても、私は全く意識してないから

  • まどか

    私にとって大切な異性は銀さんだけよ

  • 銀時

    昼間のヤツならそれで通るけどよ

  • 銀時

    別の男と仕事した時、そいつが強引に迫ってきたらどーすんだよ

  • まどか

    そんな心配は皆無だと思うけど…

  • まどか

    万が一の場合だって、私にその気が無ければ心配無いでしょ?

  • まどか

    それよりも銀さんがこんなに嫉妬深いとは思わなかったわ

  • 銀時

    悪かったな!

  • 銀時

    んじゃまどかは、銀さんが女と二人きりで出かけてても平気なのかよ

  • まどか

    それは…

  • 銀時に言われて初めてその姿を想像する。

  • チクリと胸に痛みが走り、まどかは眉間にシワを寄せた。

  • まどか

    嫌……

  • 銀時

    だろ?

  • 銀時

    今後またお前が仕事の度にヤキモキすんのは、銀さん的にもキツイんだわ

  • まどか

    銀さんの気持ちは分かったけど、だったらどうすれば…

  • 銀時

    こーすんだよ

  • ずっとまどかを強く抱きしめていた手を緩め、一旦体を離す。

  • そして盆の上に置かれたままになっていたタオルを手に取ると、間に挟み込んでいたらしい何かをゴソゴソと取り出した。

  • まどか

    銀さん?

  • 何を持っているのだろうと覗き込むまどか

  • すると銀時は目を泳がせながら言った。

  • 銀時

    左手

  • まどか

    はい?

  • 銀時

    良いから左手を出せって

  • まどか

    あ、うん……

  • 言われるままに左手を出せば、銀時がその手を取って固定する。

  • 銀時

    銀さんが何も言わなくても察しろよ

  • そう言った銀時が、まどかの薬指にスルリと通したのはーー。

  • まどか

    これ……!

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