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11月1日の朝。
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いつものように目を覚ますと、何故か隣に銀さんが寝ていた。
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驚いて思わず悲鳴を上げ、布団から飛び出した私が次に目にしたのは、一糸まとわぬ銀さんの体。
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そして最後に見た物は、あられもない格好の私自身だった。
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まどか
何よこれぇっ!
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銀時
……んだよ朝っぱらからうるせェなァ
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銀時
ってまどかか。おはよーさん
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まどか
あ、おはよ
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まどか
じゃなくて!
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まどか
ちょっと銀さんこれ何なの何でこんな事になってるの私がいて銀さんがいてどんな事があってこんな格好になってそれでもって……
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銀時
はいはい、ちょーっと落ち着こうねまどかちゃん
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銀時
ブレス無しでそんだけ喋ってたら、酸欠になっちまうぞ
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銀時
っつーかその前に、風邪ひいちまうからこっち来いよ
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パニックになっている私を見て、呆れたように言った銀さんは、あっという間に私を布団に引っ張り込んだ。
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抵抗する間も無かった事への驚きと、直に触れた肌の熱さに、心臓がドキリと跳ねる。
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まどか
あ、あの、銀さん、私は落ち着いてるから! 風邪もひかないからっ!
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銀時
ばァか、ちげェよ
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銀時
風邪ひいちまうのは銀さん
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まどか
は?
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銀時
まどかの体温がねェと、あったまらねェだろうが
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まどか
……っ!
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銀時
それに夕べも言っただろ?
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銀時
Trick or Trick
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耳元で囁くように言われた銀さんの言葉で、私は夕べの出来事を思い出した。
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10/31 夜
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銀時
なァ、まどか
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銀時
Trick or Trick
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まどか
何よそれ、意味分かんないんだけど
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まどか
お菓子をねだるならTrick or Treatでしょ?
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銀時
ちげーよ
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銀時
銀さんはお菓子が欲しいんじゃなくて――
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銀時
まどかにイタズラしてェだけ
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まどか
銀さ……んっ!
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銀時
あ、でもやっぱお菓子も欲しいわ
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銀時
まどかの唇、甘過ぎだっつーの
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銀時
こんな味を知っちまったら、もう止まらねェよ
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銀時
せっかくのイベントだし、お菓子もイタズラも楽しませてもらうとしますか
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その後銀さんが満腹になるまで、イタズラは続き――
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夕べの記憶が全て蘇った私の体は、一気に熱を帯びた。
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銀時
んー、やっぱあったけェな、まどかは
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銀時
ハロウィンは終わっちまったけど、これから寒くなっていくし
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銀時
防寒対策も兼ねて、俺たちのイベントは続行って事で
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言っている事は横暴なのに、銀さんの顔は赤く染まっている。
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それを見た私は確信した。
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夕べ眠りに落ちる直前に聞こえた言葉が、嘘では無かったという事を。
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まどか
回りくどいやり方ね
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まどか
素直じゃないんだから
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銀時
あん?
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銀時
何か文句あんのかよ
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照れ隠しなのか、拗ねたような表情を見せる銀さん。
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そんな彼に向けて、私は言った。
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まどか
Trick or …Kiss?
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突然の私の言葉に、銀さんは驚きで目を見開く。
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でもすぐにそれは優しい笑顔となった。
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銀時
意味深だねェ、まどかちゃん
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銀時
銀さん的にはどっちも捨てがたいけど?
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銀時
選ぶならやっぱこっちっしょ
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ゆっくりと近付いてくる銀さんの顔。
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その直後、心に沁み渡った夕べと同じ言葉は、耳からではなく、触れた唇から伝わって来た。
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――好きだ
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