《魔法少女としゅーくりーむ》


 ≪今度は敵対してないんだ≫

そういった時、リンカが嬉しそうな顔をして「そっか。今度は敵じゃないんだ」と呟いた。
Krieg Liedは敵対した四つの国の戦士のたたかいをコンセプトにしたユニットだ。
直感型の三人とはちがって私は時間をかけて役に入り込むタイプで、申し訳ないと思いながらもライブ一か月前からすこしずつ時間をかけてダイヤの戦士になっていくやり方をしていた。
その期間というのは私は戦士で三人も戦士で……
だからライバル心を芽生えてくるのだ。
そんな状態が一か月。そしてステージ上では全員が敵対した他国の戦士だ。
だから私たちはなかなか肩を並べて仲良く歩くこけとが出来なかった。
もともと四人そろってそんなにじゃれ合うタイプでもないが、仲がいいわりに敵対している期間が長い。
「ねえ。……これはどんな設定でもいいの?」
「もとはといえばイーが、魔法少女のイメージが掴めないっていうから始めたことだからねー。別にそれでパフォーマンスするわけでもないし」
「正直、魔法少女はいまいちピンとこない。ぶっちゃけこのプレゼン大会ですら魔法少女のイメージは定まらなかった。……でもたぶん、そんなことどうでもいいくらい大切なことに気付いたんだ。……いつもライブ一か月前からオフでも敵対し続けなきゃいけなかった私たちは、今度は仲間なんだ。自分の大切なものを守る為に三人に勝負を挑まなきゃいけなかった戦士じゃないんだ。世界の平和とやらを守り、そして三人の大切なものを守る、そんなバカみたいな魔法少女がいても、良いんじゃないかな」
私の言葉に耀がくくくと笑って崩れ落ちた。
「そんっなに笑うことかよ!? 」
しかし顔を上げた耀の瞳には涙が浮かんでいた。
「いやー。研究生時期めんどくさいくらい素直じゃなかった《光ちゃん》が、成長したなーと思ってさ」
そう言って笑うが、きっとその涙の理由はほかにあることがなんとなくわかった。
彼女にとってKrieg Liedがライバルであり憧れある……そんな特別な存在であることは何となく知っていた。
研究生時期から五人でいることが多かったから私たちだけが上がって自分だけが取り残されてしまったことに複雑な感情を抱いていたことも知っている。
そして私のこの不器用な性格と役に対しての向き合い方を心配してくれていることもわかっていた。
裏で三人のフォローをしてくれていることだって本当は知っている。
「ありがとう耀」
何がとは言わない。
私たちをいつも見守ってくれてありがとう。
いつだって私たちに手を差し伸べてくれてありがとう。
まるで自分のことのように泣いたり笑ったり頭抱えたりしてくれてありがとう。
言い出したらきっとキリがない。
きょとんとした耀が戸惑ったように「え、うん」と返事をする。
「よーっしっ! ……愛と平和とシュークリームを守ってやろうじゃん! 」
大きく伸びをしながらいう。
「おーうっ! 」
三人が声をそろえて言う。
仲間として立つ舞台……。
魔法少女になれるだろうか、と不安でいっぱいになっていたのがウソのように今はただただ楽しみで仕方がない。

END
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