現実を受け入れる時
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ミュウツー、おやつだよー」
中庭に駆けて入ると、ミュウツーは池を覗いていた
此方に顔を向けると彼はやはり何時もの表情
「頼んだ覚えがないのだが。」
「当たり前じゃん、あたしが勝手に作ったやつなんだから。
それよりも食べてみてよ! 多分ミュウツーには甘いと思うけど、不味くはないよ!」
「自信あるのだな」
そうミュウツーはフフッと笑った
あらま、珍しい事もあるものですね…。
思った通り、「悪くはないな」とお手製のカップケーキを食べてるミュウツー
食べ終わると口を開いた
「そうだ、そのおやつをロイにもあげたらどうだ?
面白い事になると思うのだが」
「え”ぇー!?」
ミュウツーは他人事だからそんな事言えるんだろう…
ロイとはあの剣士さんの事なんですけど
あたしから見ると凄いアタックをしてくる人です。
あたしを見つけようものなら絶対にやってきます、追っかけてきます
キザな行動あり、口説きあり、どこかの王子を遥かに超える感じです
此処に来て長く経ちましたが、ある日突然、彼はこうなりました。
それまでのイメージは普通の人。控えめな人。大人しい感じの人。
たまに話すくらい、たまに大乱闘するくらい
…だったのに! 突然、豹変しました!
一体何があったのか、あたしには分かりません。
「お前もロイに満更ではないのだろう?
その手作りおやつをくれてやれ、奴からすればご褒美だと思うが」
「ご、ご褒美って…。」
彼の豹変に最初は引くばかりでしたけど、何時まで経っても今になっても完全には慣れません。
プリン達が「どう見てもロイがユズを落そうとしてる」と言うので余計に意識してしまいます。
嬉しいのは嬉しい、でも引いているのは引いているのだ。
…プリンが言うには「その中途半端な反応はロイの想いと行動を加速させてるぞ。」との事ですが。
とりあえず今はロイに会わないように気を付けよう
「いや、もう遅いぞ。」
「え?」
そうミュウツーが一方に指差した
なんだ? とそちらを見てみれば、なんとロイが居るじゃないですか!
あたしの存在を確認したらしい彼は、足を止めてそのままフリーズした
あぁー、ヤバいヤバーい。ヤバい展開
少しずつ、後ずさりをする
でも何故かミュウツーに捕まった。
「ユズ!」
そう叫びながら凄い速さで駆け寄ってきたロイ
勿論あたしの持っていたおやつにも気が付いた
「これは? ユズが作ったの?」
「う、うん、まぁ…」
「僕も貰って良い?」
「どうぞどうぞ」
特に食べて貰うぶんには文句とかはないので、持っていた物を何個か差し出す
とりあえず一つと、ロイは一番形の悪かったやつを口にした
それにしても、あんまり目を合わせないでおきたいな
危ない奴だし、ぶっちゃけイケメンなので恥ずかしくて凝視は出来ない。
性格はアレだが、見た目の良さは認めてる。
そうちょっと目をロイから外した
「美味しい、とっても美味しいよ」
「そ、そう、ありがとう…」
「もっと食べて良い?」
「まぁ良いけど…」
そんなに良かったのかは分からないけど、彼はどんどん食べていく
本当はプリンとかにもあげるつもりだったのだが、なんと全部食べられてしまった。
こうなるのなら最初にプリン達の分を分けておくべきだったな…。
「全部食べやがった…。」
「だってユズの作った物だからね、独り占めしたかっただけ。
美味しかったよ、ありがとう」
驚いて持っていた皿を見ていた所、開いていた片手を取られる
なんだと思ったらそのまま手の甲に口付けされた
…今となっては当たり前になってしまったこの行為。
こういう風に、この人は頭がちょっとアレである。
本当にこういう事さらっと出来る人が居るんだなって感心するレベルだ
そういえばここにはミュウツーが居る
ミュウツーにこの人の言動は本心か聞いてみよう
もしかしたら、冗談半分でやってるかもしれない
「いや、冗談ではなく本気故の言動だ。
恥ずかしさは無い様だな。生まれ持った脳ミソのおかげだ」
「そうなの!?」
口を開くよりも先に答えを言ってくれたミュウツーさん
ミュウツーはほぼ嘘吐かないし、やはりこやつは本物だったのか。
ふとロイの方を見てみると、まあなんと爽やかな笑顔。
普通の人ならこんなのされたらイチコロでしょうに…
あたしは一体どこで素直でない悪い性格になってしまったんだろう。
「僕の事かい? 恥ずかしくなんてないさ、ユズへの気持ちは本物。」
「あーそう、なんであんたはそんなに積極的なんだろうってね」
「あぁ。それは勿論君の為さ」
「あたしの為…?」
「君に喜んで貰いたいからね。」
とてもにっこりした表情をしておられますが
果たしてこれらロイの行動はあたしの為になっているのか? 甚だ疑問である。
「まぁ、私から言わせてもらうと、他の輩よりロイを選ぶ方が良いと思う」
「え”ぇー!?」
まさか突然のミュウツーの発言に
思わず本人が居る目の前で、やってはいけない反応が出てしまった
幾らこの人相手でも申しわけないと思う。
でもロイは笑うだけ
「お前は「キザ」だと言うが、私から見れば「紳士」だ。似て非なる物だ。
キザという物は自分の本位にやる者の事を言う。紳士とは相手の本位にやる者の事を言う。
今までの奴の言動を思い返してみろ。確かに発言は所々痒いが、行動の数々はお前の為にはなっていただろう。
奴は一回でも「僕はカッコいいだろ?」と言っていたか?」
「…。」
…なんかそう言われたら、そんな気がしないでもないな
確かにあたしには悪影響を与えるような事はしてない。寧ろ良い影響やありがたい事ばかりだ。
確かにミュウツーの言う通りかもしれない。
…いや待て待て
もしかしたらミュウツーとロイはグルかもしれないだろう?
…でもさっきのミュウツーの説明は頷ける物だったんだよね
「じゃ、じゃぁついでに聞きたい事があるんだけど」
この際だ、ちょっと気になってた事を訊ねてみよう
「何?」
「どうしてロイはあたしを選んだの? あたしの何が良かったの?」
これはずっと疑問に思っていたのだけど、本当に何故あたしなのか。
ピーチみたいに綺麗じゃない、デイジーみたいに可愛くもない
プリンみたいに人付き合いも上手くないし、ナナみたいに家庭的でもない
なのに何故あたしなのか。
余り物だからでしょうか?
…と思ったらミュウツーが「んなわけあるか。」と呟いた
なんとも珍しい汚い言葉のミュウツー
「まずはギャップ、すべての始まり。忘れられないよあの試合」
「試合?」
あたしがここにやってきて、皆と同じ様に大乱闘をしていた時の事
大乱闘をしていた人達の中でランダムに選んだ8人で乱闘をしてました
その中にプリンとロイが居ました。
誰かに追撃されたロイを見たプリンが「本当あいつは大乱闘になると並みだよな」と呟きました
その理由をきけば何やら一対一で無類の強さらしいのです。
とても興味が沸いた自分は三回戦勝負で一騎打ちを挑んだのです
Miiファイター三種での三回戦だと、誰もが思っていたようですが
ミュウツー・ゼロスーツサムス・ベヨネッタスタイルで挑んだあたしを、皆驚いていたのを覚えてますね
誰が相手は最強だと分かっていて、そのまま対策を取らず挑みますか?
チートレベルのキャラで挑むに決まっているでしょう!
初戦のミュウツー戦は結構な差を付けられて負けてしまいました
皆は「まぁそうだろうな」との事
でも二戦目のゼロスーツサムス戦はあたしの圧勝
この人相手に適当にしたらやられると、あたしはマジでした
幾らパラライザーありでも、圧勝だった事に皆驚いていましたね
そして最後のベヨネッタ戦。
流石に前の試合で少しの手抜きも駄目と思ったらしい彼との試合です
結果的にはあたしが勝ちましたけど、かなり接戦でした
バースト圏内でウィッチタイムが決まった時の喜びと言ったらそれはもう!
一発殴りあげた後「楽しかったわよボウヤ」とベヨネッタを真似て投げキッス
今考えればアホだなと思いますが、この時の喜びは凄かったので調子に乗りました。
この調子に乗った行為が、原因らしいです。
「その時の君の仕草と声は本当に…、もう…。
僕の残機も心も奪われた。とても痺れたよ」
「そ、そうなんですか…。あれは黒歴史でして…」
ミュウツーとかプリンとかで戦う時は、まるまるその姿になりますが
ベヨネッタやゼロスーツサムス、ピーチとかで戦う時は服装だけ変わる感じです。
そりゃぁ普段のあたしを知っていて、あの格好見たらギャップ感じるわな。あたしと、ベヨネッタ、全然性格行動違うもん。
そもそも基本的に、大乱闘中はスタイルを借りてるキャラのイメージに合わせて行動しているだけなので…。
…てかこいつのあたしに惚れた理由、浅はかだなおい!
「それは奴の始まりの時の話だ。
普段は大人しいお前が、戦いの時だけベヨネッタスタイルで乱れまくるというギャップに文字通り何度も痺れたのだろう。」
「も、もっと適切な言い方はなかったの…? 凄く恥ずかしいんですけど…。」
「いや、私はそいつの考えていた事を代弁しているだけであって」
「お前が思っていたのかい!」
と、ロイの腕を軽く叩いた
「あまりああいう姿は僕以外に見せないで欲しい。他の男も夢中になると思う」
「言われなくともお前以外に見せてないよ!」
あんな格好本当は恥ずかしいので、よっぽどの時にしかしません!
大して良い身体でもないのに、なんであんな服を着なきゃならないんだよ
…ちなみにそのよっぽどと言うのが、マジロイとの一騎打ちですが。
「僕以外に見せてないのかい?」
「変な意味じゃないからねっ!」
「はは、ツンデレなユズも悪くないね。僕ならどんな君でも愛せるよ」
「…。」
…こういう焦ってる時にストレートな表現されると、調子狂うなぁ。
冷静に居る時だった良かったのに
こうやってまたこいつに「手ごたえあり」って勘違いさせているんだろうな、あたし。
思わずがっくりしてため息をついた
「どうしたの? 嫌な思いさせた?」
「気にしないで、自分自身に落ち込んだだけだから」
奴にもういいからと手を振って、分かりやすく落胆してみせると
伏せていたあたしの顔に彼の両手が添えられる
両頬挟まれていますから、そのまま難なく上を向かされた
「悲しまないで? せっかくの可愛い顔なのに勿体ないよ?」
「…。」
…誰かこのキチガイの目を覚まさせてやってくれ。
「あ、ありがとうね…、心配させて悪かったよ…」
「そうだ、ちょっと待ってて」
そう言うとロイは何処からか剣を取り出して、中庭の中を歩き回り始めた
何をしてるんだ? と細い目で様子を見ていると
突然近くに居たミュウツーが口を開いた
「お前は幸せだな」
「ん? どうして?」
「ロイが居るからに決まっているだろう。
女を自分から離れられなくする方法をよく分かってるな」
「怖い事言うなよ…」
「仮にお前があいつと恋仲だったとするなら、良い相手だとは思わないのか?」
「ま、まあ恋仲だったらね…。悪くないよ…。」
「随分と偉そうだな…。
こう言うのもなんだが、何時までもあると思わない方が良いぞ。
幾らあのキチガイでも無理だと悟ればお前から離れる」
「…」
当たり前のその言葉を聞いて、少しショックを受けた
その衝撃はそれが嫌なのか、寂しさから来てるのか分からないが
確かに第三者から見たこの「キラキラ」は永遠ではない
ロイがあたしを諦めればそれで終わりなのだ
…というかショックを受けたという事は、少なからず自分はキラキラを欲してるんだなと
またその事にショックを受けた
「お前は忙しいな。もっと素直になれ。」
「う、うるさいよ…。
でも確かにそれはちょっとショックかもしれない…」
「まあアドバイス出来るとすれば
貰うばかりでなく、自分からも何かを渡した方が良いという事だな」
「…。」
「あと一つ、提案というか試してほしい事があるのだが」
「何でしょう?」
「一回ロイに抱きしめて貰うと良い」
「えっ?!」
「その感覚が本当に無理だ不快だというなら、お前は本当にロイが無理だという事。
だがそういうのが無ければ思い切って付き合ってみるのも良いと思う」
「た、確かにと思わせるミュウツーの言葉の不思議…。」
皿は持っていてやると言うので、空皿はミュウツーに渡す
それと同時にロイがこちらに戻ってきた
「ユズにこれを」
ロイの手にあったのは中庭にあった花々で作られた、小さな花束
えらい綺麗にまとめられていて、何ともあたし好みの色合いと形
本当に即興で作ったのかと疑う程だ
ありがとうと受け取って、思わずその花束のあちこちを凝視する
「な、何か変だった…?」
「いや違う、変じゃない。恐ろしく完璧で…。器用だね…。」
「好みで喜び通り過ぎて驚いているだけだ。
それよりもロイ、少しユズを抱きしめてやってくれないか? 遠慮はいい、本気で頼む」
「えっ? 本当に良いの?」
ミュウツーの話を聞いて意識を花束から二人に戻す
ロイはあたしに訊ねていたみたいで、あたしの方を見ていた
とりあえず頷くと、ロイは嬉しそうに優しく抱きしめてくれた
最初は緊張と恥ずかしさで何も考えられなかった、心が無になっていた。
でも少しずつ落ち着いてきて、状況を見つめられるようになった
なんて良い居心地…
彼はこんなにも温かったのか…
抱きしめられるだけなのになんという安心感、包容感
自分でも分かる程の幸福感が自分の中に溢れている
もう少し密着してみようと、身体を寄せて顔を彼の身体に埋める
彼はとっても良い匂いですね…
それにもまた、とても心が揺さぶられた
本当にこれを嫌いな人が居るのか? って程の良い気分
この感じに包まれて眠りたいわー…。
ピーチとかゼルダはこういうの味わっていたんだなぁ…
…仮にあたし達も付き合ったとしたら、何時でもこの感じに浸れるというのか?
それはそれで凄く良いわ…。
「まぁ言わずもがなだな。悪くはないのだろう?」
「!」
ミュウツーの声を聞いてハッとする。
本当にロイの包容に溺れていたよ
吃驚して反射的にその腕から飛び出た
彼は悪くないのだけど、まるで突き放すかのようなあたしの暴挙
「ご、ごめん…! 今のは吃驚して条件反射みたいな…!」
「大丈夫大丈夫。…本当はもっと抱きしめていたかったな」
「自分でも分かっただろう、別に生理的に受け付けていないわけではないと。
自分がツンデレなだけだと」
「ツンデレ言うな…!」
「お前はロイを好きではないのか?」
「…。」
急にビシッとストレートに訊ねるミュウツーに、やっぱりすぐに言葉が出なかった
これもまた彼を期待させる結果になるんだよね…。
口籠っていると、何も言わずにロイが近寄ってきた
「おぉなんだやる気か?」と心の中で構えていると、さっきみたいに両頬に手が添えられる
顔を上に向けられると同時に、今までにない距離まで顔を近づけてきた
まるでチューするかの様な流れと距離、でも唇にそんな感覚は無い
でも顔は目の前過ぎて、多分少しあたしの顔を前に出したら口は当たる
「僕を好きになりな? 愛してあげる」
その恥ずかしい行動が、その甘い匂いが、その色っぽい呼吸が、その優しい声色が
一瞬にして頭の中をゼロにすると、目の前が真っ白になった
そして途端に身体中あちこちで沸くドキドキ感覚
恥ずかしいという感情は綺麗な桃色で、これは言うまでも無く完璧に惚れたと理解した。
「こ、これはプリンに相談しなくては!」
いったん時間を置きたい。落ち着きたい。
プリン達とこの件について語り合いたい。
また突き飛ばすようにロイから離れると、飛ぶ様に中庭を後にした
「…皿。」
「あはは、そんなに恥ずかしかったのかな?」
「今ので完璧に落ちたようだ、良かったな」
「本当? やっと認めてくれたのかな?」
「というか前々からそういう感じだったが、やっと現実を見て受け入れられそう。というのが正しいか。
…まぁどんな結果だろうが、お前は諦めないのだろうが。」
「当たり前でしょ、誰にも奪わせないよ。…勿論君にもね」
「言われなくとも。
そんな心配しなくともお前の思い通りに進んでいるのだろう?
周りは勘違いしてお前の望む様に動いているし、ユズに逃げ道があるとは思えないな」
「可愛いでしょ? ユズが恥ずかしがって一生懸命抵抗してるのが。
僕は今のままでも好きだね、まぁこれ以上に進めるなら言う事無しだけど」
「…お前は感じが悪いな。嬲り殺しか。」
「あはは、酷い言われようだね」
現実を受け入れる時
少しして中庭に戻ってきたユズ
「ミュウツー聞いて!
プリン達との会議で決めたんだよ! もうちょっとロイの様子を見たい。
どうしてもあいつが怪しくてたまらない…。
プリンは「気の済むまで品定めしろ」って呆れてたけど…。」
「あの状態から何故そうなった。」
「あーでもこれからはちゃんとお返しをしようと思ってね、何時も悪いから」
「そこまでするなら恋仲同然なのだが、頑なに拒否するお前が分からん。」
1/1ページ