嫌いな人
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この館にやってきて長く経ちました
ありがたい事に仲良しも出来ましたし
基本一日中自由ですから、やってみたかった事にチャレンジする等、毎日充実した日々を送ってる
そんなあたしにプリンは一言「ユズちゃんには、あと「恋愛」が足りないな」と言いました。
「お前とファルコはどうなんだと」反論するとプリンは爆発しますが、言われてみればそうとも思う
そして「良い人探してみるよ」と毎度適当な答えを返すと
プリン達も含めみーんな決まって「ロイが居るじゃん」と言葉を締めるのです…。
冗談じゃない! なんで奴と!
ある日突然、彼はあたしを一騎打ちに誘ってきました
それまでは「自分は最強」までは言わないものの、まぁまぁ一騎打ちでは強い方だと思ってました
その自尊心を真っ二つにしてきたのがこの男!
もう事ある毎に戦ってるけど一回も勝ててません
何がどうなろうと最後は負けてしまうのです
しかも言われなくても分かるのだ…!
彼はわざわざ接戦風を装って、僅差っぽく演出する
あたしが調子良くて押せ押せの時は、途端に本気モードで来て
思い通りにならず調子が悪い試合になると、手を抜いてくる。
多分違うとは思うけど、もう…! それが馬鹿にされてるみたいで…!
そこから何かと何でも勝負するようになった仲
調理室でナナからお菓子作りの勉強していれば、途中参戦のくせに明らかにあたしより上手に作るし
プリンが希望したお絵かき教室を開いてあげれば、「ユズちゃんよりロイの方が上手くない?」って皆に言わせるし
些細な事からちょっと特別な事まで、何かと奴が現れた時は勝負になってしまう
そんで負けず嫌いな自分は「この分野なら」と受けて立つけど、ほぼほぼ負けてしまうのです。
…ちなみにナナが言うには「プリンとファルコさん、ユズちゃんとロイさんは全く一緒」との事
だけどプリン達は明らかに両思いで、こちらは勝負仲間だからちょっと違うんですよ。
…そう言っても納得してくれないけどね。
「勝てないっ!」
「あはは」
「やっぱり一騎打ち最強の名は伊達じゃないね」
「本当だな。あのユズちゃんを微塵も寄せ付けないもんな…。」
今日も運悪く転送室で奴と遭遇してしまった。
何時もみたいにからかいの様な挑発みたいな事をしてきたので、ムキになって乗ってしまったが
何時もと同じパターンに陥った。
もう悔しくて悔しくて自分の頭をぽかぽか叩く
「ロイも凄いがめげないユズちゃんも凄いぞ。だから色々その辺にしとけ」
「そんなに連続で大乱闘をしたら、明日に響いてしまうよ」
と、二人からドクターストップが掛かってしまった
出来れば勝てるまで戦いたいのだけど、確かに疲れからか思うように身体が動かなくなってきた…
悔しいけれど今日はこの辺で我慢だ…。
「また相手してあげる」と笑う彼の余裕な感じが、また悔しさを増幅させた
転送室を出て、早速足元にやってきたプリン…
「お前、毎回最後に頭自傷する事態になるなら戦わないのも手だろ…。」
「そうなんだけど…!」
「もうロイさんも最後は流してる感じの戦い方だもんね…。
ただいたずらにユズちゃんが疲れるだけだよ…。」
「でもあんな言い方無いよね…?! 「どう? 強くなった?」って…!
人を馬鹿にしてるのか?! まだファルコの方が優しいよ!」
「落ち着けユズちゃん、あの輩はユズちゃんを可愛がってるだけだって」
「何が可愛がってるだよ…!
負けず嫌い利用して好き勝手に弄んでるだけでしょ…!!」
「まぁまぁ、気晴らしに三人だけ夕ご飯で美味しい物食べよう!
冷凍庫の奥に凄いステーキ肉あったんだ。…誰のか知らないが。」
そろそろ夕ご飯の準備をしなければならない時間だ
ある程度朝の内に下準備とかやっておいたから、あっという間に用意が終わると思う
出来上がったおかず達を運び終えた後
プリンとナナがご飯を用意している傍らで、あたしは例のステーキを焼いていた
プリンの言う通り冷凍庫を探してみたら凄い肉があった
肉は大きくは無いから、三つまとめて焼いている
その肉を見ていたら理由も無くイライラしてきて
突発的な感情が抑えられず、その肉を叩き握りつけた
「あれ? ゼルダだけ来てないのか?」
「いや、何か三人に用事があるんだって、調理室に居るよ」
調理室にやって来たエムブレム組
ルキナは近くの席で一席だけ空いてるのを見つけた
リンクの話を聞いたルキナは、ふとワイワイと賑わっている食堂内を見渡すと
ピーチやデイジー、サムスやトレ子も居ない事にも気が付いた
何かあったのか? と男達を置いて、ルキナは調理室に向かった
「入るぞ…」
また部屋のノックが聞こえて来たと思ったら、今度はルキナか…。
テーブルに伏せたまま、こちらにやって来たルキナに目を向ける
「み、皆ここで何をしてるんだ…?」
「いやね、ユズちゃんが大火傷したみたいだから応急処置というか」
「えぇ!?」
あたしの手に何をしてるのか分からないけど、魔法をかけてるっぽいゼルダ
魔法中は感覚が弱まって強い痛みは感じないけど
手は赤くなってるしちょっと皮も向けてるし、見た目は自分の手じゃないみたいだ
「不注意か…?! 気を付けないと…!」
「あんまりユズちゃんを刺激するなよ…、不注意じゃないんだから…。
はぁ…、プリンがステーキを提案しなければこんな事にはならなかったのになぁ…」
「えぇ?」
「よし、大体熱は取れてきたわね…。
良いユズちゃん、何個かアイテムを渡してあげるから絶対にこれを使ってね?
最初はこのクリームを火傷の所に塗る、ばい菌バリアよ
次にこの包帯、変にくっつかない様に施してあるから絶対にこれを使って。最後にこの普通の包帯を巻いて終わり。
定期的に取り換えて清潔に保つ事、一日二回、最低一回は流水で優しく洗うのよ?」
「あ、ありがとう…」
「一人で出来そうになかったら私でも良いし、誰かにお願いしてやってもらうのよ?」
「分かった…」
突発的だったとはいえ、無意識だったとはいえ
自分はなんてつまらない事をしてしまったんだろう。
利き手をやってしまったので、ろくにご飯も食べれなくなってしまった
「食べさせてあげるから」とプリン・ナナは、食堂にあったあたし達のご飯を調理室に持ってきて
まるで介護を受けてるみたいな状態でステーキを食べたけど
調理がめちゃくちゃになってしまったし、まぁまぁ焦げていたのであんまり美味しくなかった
料理所か片付けも皆に禁止にされて出来ないので、自由な時間が出来ました
もう気分が沈みに沈みまくってるので、プリンの相手する元気もなく、ナナを心配させる事もしたくなく。
ちゃんと怪我は大切に扱うからと約束して、自分の部屋に向かった
引きこもりになる事で他の人からの刺激をシャットダウン、寝る事により更に現実逃避。
…また発作的に、火傷した手で何かを殴ってしまったらヤバいな
痛い痛くないもそうだけど、ゼルダとかプリンに監禁されてしまいそうだし。
寝てる時はどうしようもないけど、とりあえず自分の身体から手を離すように寝てみよう
何時もよりも全然早い時間だけど、腕を大きく広げた状態で眠りに着いた
…ふと、目を覚ますと、最後に記憶にある体勢のままだった。
それは良かったとして、なんか包帯を巻いている所が蒸れているのか、少し痒くて不快な感じになっていた
なんかくっ付かない様に施したって言ってた気がするけど…
寝ている間に何処か触ったり何か掴んだりしたのかもしれない
時間を確認するとまだ日を越してもなかった。
「仕方ない…」
起きてたらゼルダに事情を話して巻き直してもらおう…。
ゼルダから貰った薬や包帯を持って部屋を出る
彼女の部屋を訪ねたけど応答はない。
寝てるのか、まだ起きてるのかも分からない
こういう時は皆のたまり場である、転送室に行くに限る。
何も言わず転送室を覗き込むと、中には誰もいなかった
パッと見何組かが大乱闘をしているみたいなので、誰が居るのかと確認してみれば、おっさん組や怪獣組だ…。
もしかしたらこの中にゼルダ並みの手当てが出来る人が居るかもしれないけど、…疑問多いな。
転送室を後にして今度はリビングへ向かう
部屋の灯りが点いていたのを見たので、誰かが居るのは分かっている
こちらも何も言わずに扉を開けると、中に居た人達が一斉にこちらを見た
「あれ、ユズちゃん? どうしたの?」
「…。」
中にはエムブレム組が居たから、もしかしたらゼルダも居るかもと思ったけど、やっぱりエムブレム組だけだった。
ので、何も言わずに部屋を後にした
今度は食堂に向かう。
たまに此処でレディース軍団がお喋り会をしてたりするのですが…
そもそも部屋の電気が点いていなかった
…ゼルダは一体何処にいるんだ? リンクの部屋なのかな?
それだとなんか訪問しにくいなぁ…。
「ユズ、どうかしたの?」
「!」
後ろから声を掛けられ振り返ると、そこ居たのはロイ
…他に誰か来ている様子はない
それにしても、よりによってお前かよ…
まだルキナとか、ルフレとかだったら穏やかだったのに…
この怪我を攻撃されたらどうするんだ自分…
「誰か探してる?」
「あ、あぁ…、ゼルダなんだけど…」
「ゼルダか…、多分剣士組で遊んでるか、ピーチ達と一緒だと思うけど」
「…。」
見当たらなかったから、今こうやって探し回ってるんでしょうが…。
あ、こういう時は素直にミュウツーに聞けば良かったんだ
そこで大丈夫そうなら包帯のお願いしに行くし、駄目そうならミュウツーにやってもらうと。
これは良い案だな。なんで気付かなかったんだろう。
「そうだね、じゃぁ探しに行ってくるから」
「ちょっと待って」
適当に流して中庭に向かおうとしたら、まさかの制止が入った…
しかしこちらは怪我した手が不快かつ痒いので、奴に構っている場合ではない。
無視して足を進めると、今度は肩を掴まれた
「ちょっと待ってって言ってるでしょ?
包帯がぐちゃぐちゃになってるけど、その為?」
ロイに言われて見てみれば、最後に見た時と比べて明らかに解けてきていた。本当、気付かない内にだ。
これはヤバいな、急がねば。
と再び足を進めると、今度は怪我してない方の腕を引かれた
「僕が直してあげるからこっちに来て」
「え、良いよ別に」
「いや緊急でしょ? 人を選んでる場合じゃないだろ」
と、そのまま無理矢理食堂の方へ連れていかれた
食堂にあった手洗い場にて、跡形も無い包帯を解く
また出てきた包帯は、クリームがあるものの、直接怪我の部分に着いているのでゆっくり外す
あらわになった火傷部分は、クリームのせいもあってドロドロになっていた
我ながら引いてしまう怪我の状態…
本当に自分の手なのか疑ってしまう
「まずは薬を洗い流して、その後は綺麗なガーゼで水分を拭き取る」
とりあえず言われた通りに自分で手を洗う
こんなの彼にやってもらったら怪我が悪化するに違いない…。
持たせていたガーゼを受け取って、ちゃんと水分を拭き取った
ゼルダから貰った薬セットを持って近くの席に着く
「これが最初に塗るクリームだね、次はこの包帯を巻いて、最後にこの包帯を巻く」
「な、なんで知ってるの」
「それじゃぁ手を出して」
「えっ!? クリーム塗るくらい自分でやるよ!」
「大丈夫、僕がやるから」
と、彼はクリームの瓶を取ってしまった…。
そこまでするなら塗る気満々なのだろうけど、何か自分の心情的に手を出す事が出来ない…
それは今までのこいつのあたしに対する態度対応を思って、そうなってしまうのだ
手を出したらパンチされるのではないか? 傷の所を叩かれるのではないか? 引っ掻かれるのではないか?
そんなのばかり思い浮かんで、全く身体が動かない
黙って待ってる彼には、多少なりとも悪いと思っているので早く手を出したいのだけど
現在一番のウィークポイントであるこの怪我をこいつにさらす
こんなに怖い事がいまだかつてあっただろうか?
怪我ですよ? 攻撃されたらおしまいですよ。
今までの彼のあたしに対する実績を思うと、どうしても攻撃されるのが目に浮かぶ
「…どうしたの? 早く塗らないと」
「う、うん…!」
意を決して怪我をした手を差し出す
でもすぐ引っ込めそうだから自分でその腕を押さえつける
見てられないのでグッと目を瞑って、下を向いた
別にここで死んでしまうわけではないけど、それくらいの不安感と緊張感に襲われる。涙が出そう
「…どうして、焼けた物を殴ったりしたの?」
「…。」
暫くの無音状態、というか外の音が頭に入ってこない状態だったけど
彼の声を聞いて少しだけ平穏が戻る
恐る恐る顔をあげると、彼はクリームを塗っているだけだった
怪我のせいかもしれないけど、全然痛くないし、何の感覚も無い
「こうなるの分かってたでしょ」
「…そうなんだけど」
ここで「お前のせいで」なんて言ったら、それこそパンチが来そうなのでグッと我慢…
「痛かったり、きつかったら言ってね」
ササっと綺麗に塗り終わり、今度は包帯を巻き始める
ちょっとは慣れてきたから黙ったまま見守るだけだけど…
…心配してた程痛くはない
流石にゼルダ程上手くはないけど、それでも何の問題も無く完成した
手を握ったり開いたりして動作確認しても、特に違和感はない。
「どう? 動かしにくいとか無い?」
「大丈夫」
なんだなんだ…、最後まで攻撃される事は無かったじゃんか…
良かった良かった…。
とりあえず問題は解決したから、片付けて部屋に戻ろう
「もしまたゼルダが見つからなかったら僕に言って、大体大乱闘してるから転送室に居るよ」
「はあ…」
「大丈夫だって、あんな怪我してるのに虐めたりしないよ」
確かに今回は酷い事はされなかったけど
その発言は、「自分は虐めてる」って自覚があるという事ですね。
…まぁ一応助けてはくれたからお礼はしておかねば
「あたし、貴方は嫌いだけど、優しい所もあるんだね。ありがとう」
「あはは、………ちょっとショックだな」
挑発に乗る自分も自分だけど、あなたもあなただよね。
これで心置きなく眠れそうなので
片付けた薬セットを持って食堂を後にした
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