あってはならないパターン
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「ユズさん、昨日はなんて返事をしたんですか?」
図書室で一人雑誌を読んでいた所、部屋に誰かがやってきた
やってきたのはしずえなんだけど、こちらを確認した瞬間に彼女はそう言ってこちらに来た
…昨日の返事とは?
「昨日何かあったっけ?」
「あっ、もしかして返事はNoだったんですか…?!
そしたらごめんなさい、よく考えないで私ってば…!」
「…話がよくわからないんだけど」
「えぇ…? 昨日告白されませんでしたか? ロイさんに」
「…。」
…これは、…もしかしたらあたしに知られてはならなかったパターンの話では?
「おととい一階を掃除していたんですが、その時に聞いたんです。あれはロイさんとマルスさんとアイクさんでしたね。
三人が廊下を歩きながら告白するだの、早い方が良いよだのマルスさんがロイさんを諭していたので、ロイさんが誰かに告白するみたいでした。
そしてユズさんの名前を挙げていたのでてっきりユズさんかと…。」
「…。」
やはり聞いてはいけない話だったかもしれない。
あ、ちなみに昨日そんな事はありませんでした
「いや、昨日ロイは来なかったけど」
「えっ? そうなんですか?」
「他の人の名前は言ってなかったの? プリンとか」
「いいえ! 話の内容では絶対にユズさんです!
私が聞いた話だけだと他の方の名前は出てないです…、二人はよくお喋りも大乱闘もしているみたいですし、仲が良く見えたので疑いませんでした」
「そ、そうか…」
確かにロイとは仲が良い方とは、あたしも思うけど
まさかそういう感情まで持っていてくれたとは…。ありがたい話だけどさ。
というかまだ確定的な話ではないのか。
実際昨日ロイは来なかったわけだし
やっぱ怖くなって止めたのか、そもそもしずえさんの推理が間違ってるのか、どっちだかも分からないし
よく分からないけどあんまり調べたりしない方が良いかな…
彼は彼なりに考えがあるかもしれないし
その体で行って本当は違いましたとなったら、それはもう恥ずかしくって顔も合わせられなくなるわ
「ちなみに告白されたらユズさんはなんて答えるんですか?」
「えぇー…? そりゃ勿論OKって返事するけど…。
…ってしずちゃん、彼に何か言って告白を勧めるとか止めてよ…?!
そもそも本当に告白しようとしてたのかも、確証がないんでしょう?」
「大丈夫です、分かってますよ」
良いのか悪いのかよく分からない笑顔のしずちゃん…
大丈夫だの、分かっただの言ったけど
果たして本当に分かっているのだろうか? 疑問多い…。
読みたい雑誌も読み終わったので、プリン達をとっ捕まえて夕ご飯の準備をしよう
自室には居なかったから大乱闘部屋かリビングにいると思う
先に着いたリビングの扉を開いて中を覗くと、そこにはエムブレム組が居た
思わず驚いて、無言で扉を閉める
すると中からルキナがあたしを呼ぶ声が聞こえてきた
とりあえずもう一回顔を出すと、何人かこちらを見ていた
こ、ここは上手い具合になんとか切り抜けなくては…!
「ユズー、どうしたんだー?」
「プリンとナナを探してましてー、何処かで見かけなかった?」
「いや、私は見てないな…、誰か見てない?」
「僕は見てないけど…?」
「夕ご飯の準備かな?」
「そうそう。
あ、そうだ、ルキナは何か今夜食べたい物はある? 材料があったら作ってあげるよ」
「本当か!?」
何とかどうでも良い方向に話を持って行けたので
あたしの不審な感じは出て無かっただろう…。
ルキナは「ハンバーグ!」と子どもみたいな事を言ったけど
それくらいならいくらでも作りますとも…。
それにしてもさっきのしずちゃんの暴露のせいで、ロイ達の方をちゃんと見れないわ…。
本当はしずちゃんの思い違いかもしれないけど
たった一日で「相手」の方まで情報が漏れてしまっているんだぞ?
それはそれは可哀想で見てられないよ…。
夕飯後、また一人で図書室で本を読んでいたら部屋に誰かがやってきた
プリンやナナがあたしを探してるのかと思ったけど
顔を出したしずちゃんはあたしを見るなり、ドヤ顔をしてこちらにやって来た
「どうしたのしずちゃん…。」
「聞いてくださいユズさん!
やっぱりお昼に言った話は本当なんですよ!」
「え? お昼?」
「告白の話ですよ! 私やっぱり気になって、さっき三人の動向を伺っていたんですよ!
そしたらやっぱりロイさんがユズさんに告白するって話をしていました…!
「何で昨日しなかったの」ってマルスさんは笑っていましたよ…!」
「そ、そうなんだ…。」
しずちゃんよ。
仮に確証を得たとして、それを宛て張本人のあたしに知らせるとはどういう事なんだ。
「ロイさんは恥ずかしがり屋さんなんでしょうかね?
アイクさんが「部屋に連れ込めば他に誰も居ない、だから恥ずかしくない」って、一生懸命アドバイスしていましたし
どうやらサプライズプレゼントもあるみたいです…!
「早くあげないと枯れちゃうよ」ってマルスさんが言っていたので、きっとお花とかだと思います…!」
あーあ、しかもシチュエーションやプレゼントまで教えてくれるなんて
あたしは一体何を楽しみにして、それを迎えれば良いんだ…。
…まぁ、…ちゃんと予習通りに事を運べるか見守る事くらいだろうか。
相変わらずえへんとしたドヤ顔のしずちゃん
あんたがあたしの立場だったらどう思う…。
もしかしたら前もって報告があった方が良い思考なのかもしれないし
ただ単に、本当に興奮し過ぎて空気が読めなくなってるかもしれないし
可愛いから許してあげるけどさ…
多分彼女は、心から「自分は良い事をしている」と思っていそうだから…。
しずちゃんにあたしから会いに行ってみては? と言われました。
しずちゃんの言い分は「多分また恥ずかしがって明日に回すかもしれません」です。
昨日告白出来ず終わってしまったのは、そもそも会ってすらないという事で
ならば今日はあたしの方から会いに行って、告白するチャンスをいっぱい作ってあげた方が良い。との事です。
別にそういう関係になる事を急いでるわけではないけど
確かにその通りだとも思うから、今回はしずちゃんの希望通り、ロイを訪ねようと思う。
とりあえず「報告ありがとう」としずちゃんにお礼を言った後、図書室を後にした
今回は本当にロイには申し訳なく思う
というか殆ど事故みたいなもので、しずちゃんが暴露に暴露を重ねたわけだ。
このままだと部屋に呼ばれるのも予想できるし
サプライズプレゼントで花っぽい物を貰えるのも目に見えてる。
本当に何も知らずに迎えてたら…、自分は凄い喜んだだろうなぁ…
ミュウツーから聞いたら、どうやら珍しく大乱闘はしておらず
リビングで三人と作戦会議をしているらしい
作戦会議というか、マルスアイクの一方的な物だし
会議というよりはロイの気持ちを持ち上げて、緊張感を和らげるような会話らしい。
事情を知ってるミュウツーは「お前も運が無いな」と、慰めてくれました。
またそこでしずちゃんの言った事が本当だったと、改めて思わされたり…
今度は教えの通りリビングに向かう
部屋を覗いてみると、ミュウツーの言う通りお喋りしてるっぽい三人が居た。
…もしかしたら今日彼は、この会議で一日を終えるかもしれないな。
そう思ったらまた憐れみの様な感情が湧いて来た…
今日ももしかしたら「やっぱり恥ずかしい」「振られたらどうしよう」って思って来ないかもしれない。
あたしは先に内容を聞かされてとっくに心の準備とやらは済んでいるからね
事情を知っているので、特にどうとか思う事も無く返事も決まってる。いつ来るのかを考えるだけ。
でもその間はロイは「何時、何処で、どうしよう」と悩み苦しむわけだ
例えその悩み苦しみが良い物良い経験だったとしても、可哀想ではある。
苦闘してるロイがもう切なくて…
なんか母親が子の紆余曲折を見守ってる気分だよ…
とりあえず連絡でも入れて、お喋りにでも誘っておこうか。
そう扉から離れ、電話でも掛けようと思っていた所
丁度別の所から誰かがこちらに歩み寄って来た
それはしずちゃんだった…
「誰かが来たと思って隠れていたのですが、ユズさんでしたか…。」
「…まさかとは思うけど、まだしずちゃんは三人の盗み聞ぎをしてるとか
そういうのではないよね…?」
「いや、盗み聞ぎしてますよ…! 当たり前じゃないですか…!」
「なんでそんなに自信満々なんだ…!」
「ユズさん…、部屋に三人居るでしょう…?
告白の流れはまとまったみたいなので、今はどうやってユズさんを部屋に連れ込むか話し合ってます…。
そうですよね、幾ら仲良しさんとは言え、異性の部屋に来てもらうのは大変です…。二人きりなら尚更…。」
「そ、そうなのね…。」
「でもこのままでは今日は話し合いで終わってしまうのではないでしょうか…? それが心配です…。」
なんでしずちゃんが心配するんだよ…。
そう思いながらリビングの扉に近づいて行くしずちゃんを細い目で見つめる。
また盗み聞ぎでもするのかと思いきや
先にリビングの扉が開き、マルスを先頭に三人が部屋から出てきてしまった
しずちゃんは相当驚いたのが、その場で動きを止める
あたしは特に悪い事をしたわけではないけど、思わず口を閉じた
「あ、あれ? しずえさん? と、ユズちゃん?」
「こ、こんばんは…。」
「どうしたの二人共、ここで何やってるの?」
「「…。」」
ここで何をやっているのか。
「しずちゃんが三人の話を盗み聞きをしてました」だなんて答えられるわけが無い…!!
しずちゃんが殆ど盗み聞ぎをしていたから、ここはしずちゃんに何か答えて欲しいのだけど
彼女はあははと中身の無い笑いをしているだけ。
ここからどうしようか言葉を考えていると
「そ、そうです!」としずちゃんが大声を上げた
驚いてなんだと様子を見ていると、しずちゃんは閉じられたリビングの扉を開く
「マ、マルスさん、アイクさん…! ここは空気を読みましょう…!」
「…えっ?」
相当テンパってるのか、開かれた扉にマルスとアイクを押し込もうとするしずちゃん…。
…まさか彼女がここまでのレベルだったとは。
「ロイさん…! 今ですよ…! チャンスですよ…!
ユズさんを誘って、部屋に連れ込むチャンスです…!」
もう隠すつもりがないのか、ただ善意が空回りしてるのか
しずちゃんの言葉で話がバレてると悟ったらしいマルスは大声で笑い出した
「しずえさん、僕達の話を聞いてたでしょ…!」
「!!、ま、まさか!」
「いやいや…! でないとこんな事しないしそんな事言わないでしょ…!」
流石に盗み聞ぎはバレてしまってるので、ここはあたしから正直に話をしよう…。
「しずちゃん、流石にもうバレバレだって…。」
「え? え?」
「じゃぁやっぱり俺達の話を聞いていたのか?」
「あたしは聞いてないけど、しずちゃんは聞いてたみたいだよ」
「…ちなみにユズちゃんは、その内容を知ってるの?」
「知ってるよ…。しずちゃんが頼んでも無いのに喜んで教えてくれるもの…。」
そう正直に答えると、恥ずかしそうにロイはこちらから顔を反らした
ミュウツーには災難だって言われたけど
こうなってしまったら、あたしよりもロイの方が遥かに災難だと思う。
「あ、ちなみにあたしの答えはYesだから心配しなくて良いからね。」
それよりもロイが可哀想過ぎて涙出そうだ…
本当、昨日の会話がたまたましずちゃんに聞かれただけだったってのに。
「良かったじゃないですかロイさん! 告白の返事はOKですよ…?! 何時まで恥ずかしがってるんですか…!」
「あ、あぁ…」
慌て半分喜び半分でロイの足をバシバシ叩いているしずちゃんだけど
話がいきなり過ぎるし、しかもどんどん進んでるし
三人からすると「こんな所で」って本当急展開だろうなぁ…。
「しずちゃんの悪意無き天然が凄過ぎて、もうロイが可哀想…。」
「え、な、なんでですか…?!」
「はは、確かにしずえさんはアイクに劣らず空気が読めない感じだね」
「そうだな。」
「アイクが自分で言うくらいだから相当だよ」
「…。」
皆から言われてやっと気付いたのか、冷静になれたのか
しずちゃんは恥ずかしそうに俯くと「ごめんなさい」と呟いた
まぁ、しずちゃんは悪気があったわけじゃない
ちょっと空気が読めなかっただけだし
それもあたし達の事を思っての行動だろうし。
一人あたふたしてたのも可愛いので、やっぱり許しちゃうのです。
「大丈夫、ありがとうね」としずちゃんに言った後、頭を撫でてあげた
あってはならないパターン
台風も過ぎ去り、とりあえず花? を受け取りに行く為、ロイに部屋に行こうかと提案する。
すると彼はとても驚いていた。
そりゃそうだ、リビングではサプライズプレゼントの話をしていなかったらしく、それを知ってるんだから驚くよ。
「あ、ちなみにこれもしずちゃん情報ね。
しずちゃん今日の話所か、昨日の話も盗み聞ぎしてたっぽいよ」
「え、そ、そうなんだ…」
「しずちゃんの空気の読めなさは凄かった…。
でもまぁこういうのもアリかもしれないね、ロイは悩みとか面倒臭い事減っただろうし」
「うーん…」
「ん? …そうでもないの?」
「いや…、なんかあの流れだったから、…あんまり実感が無いと言うか」
「そりゃそうだよね。しずちゃんに全部持ってかれたもんね。」
つくづくロイが可哀想だ…。
まだ実感が湧いてないみたいだから、こうなったらここはあたしから改めて告白してしまえ。それなら感覚が沸くでしょうよ。
という事で先を歩いていたロイの腕を掴んであげる、彼が後ろを見たこの瞬間に言うのがベストだろう。
「あたし、ロイの事がずーっと好きだったよ、勿論付き合ってくれるよね?」
「…。」
狙い通り「実感が湧いた」と呟いて、顔を赤くしたロイに思わず笑う
「しずちゃんからの災難なんかはもう忘れて、とりあえず今は幸せを感じてなさい。」
そう言ってあげると、彼は「ありがとう」と抱きしめてくれた
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