間違った楽しみ方
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今年もやってきたバレンタインデー
館内のレディース軍団が気合いを入れてチョコレートを作り、あげたい人にあげる日です
勿論あたし達もチョコを作って、それぞれお相手にあげるのだけど
今年のチョコは一味も二味も違うのです。
「ユズちゃんがそのチョコを誰にあげるのか楽しみだわー」
「別に本命じゃないんだけどねー」
あたしの手には四つのチョコレートがある
「二つは二人の分だよ、いわゆる友チョコだね」
そう可愛い包装の箱をプリンとナナにあげた
「わぁありがとう!」
「まさか一つはプリン達の物だったとは…。
すまんなユズちゃん、プリンはユズちゃんにあげる分を作ってないぞ…。」
「まぁファルコの分に全力を注いでいたからね。」
「語弊があるぞ。焼き鳥に全力なのはあくまで激辛チョコを分かりづらーく作るためでありー…」
彼女の言う通り、三人でチョコレートを作っている時に
プリンは何処からか赤いソースの入った瓶を持ってきました
なんだそれはと尋ねてみたら、それはどうやら激辛ソースだったらしく
何時も悪い意味でお世話になってるファルコに、激辛チョコレートをくれてやると意気込んでいました。
プリンが作ったのは大きな四角い一枚のチョコレート
そしてチラチラ見える小さい辛そうな欠片を隠す為、派手にトッピング済みだ。
それをファルコにあげるらしい
「ファルコさん大丈夫かな…?」
「焼き鳥が「辛れー!」って絶叫するの楽しみだなぁー」
それぞれチョコを渡し終えた後、大乱闘する約束をする
そしてそれぞれ目的地を目指して食堂を後にした
あたしがまず目指したのは中庭のミュウツー
ミュウツーには日頃からお世話になっているから、こういう時にお礼も込めてあげるべきですよね
紫の箱と白い箱を片手ずつに持って、中庭に飛び込んでいった
「ミュウツー! チョコレートだよー! どっちが欲しい?!」
「…。」
池の近くで本を読んでいたミュウツーは、こちらに顔を向けると目を細めた
まぁそんな事を聞かなくても、ミュウツーは自分のがどっちか分かるだろうし
自分のでない方はダメだと分かってるから、一択だと思うけど。
「その紫の箱が私のだろう…?」
「そうそう! 白い方と言ってもこっちを渡したけどね」
紫色の箱をミュウツーに渡した後
円滑に残りの箱を渡す為に、目的の人が今何処に居るのか尋ねる
どうやら今は、仲良しさん達とジムでトレーニングマシンで遊んでいる様です。
ミュウツーにお礼を言った後、早速ジムに向かった
ジムは待ち合わせの転送部屋の近くだし、都合が良いわ…。
ジムはトレ子やサムス、リトルマックが居るのが多いけど、エムブレム組が居るとは珍しいなぁ
部屋の中を覗いてみると、ルキナのトレーナでもやってるみたいなトレ子達と
笑いお喋りしながら色んなマシンを楽しんでる他のエムブレム組が居た
勿論その中に目的の人も居る。
今回はわけあって彼らに多くは語りません。
色々聞かれたり、深く突っ込まれると面倒臭いので。
速足で部屋の中に入ると、気付いた人達がどんどん声を掛けてくる
無言のままベンチに座っていたロイの膝上に白の箱を乗せ、そしてそのまま急いで部屋を後にした
因みに逃げ出したわけではなく、遠くから様子見です
扉の所から覗き込むように様子を見てると、部屋に居た色んな人達がこちらを見たまま笑い出した
「ユズ、どうしたんだよ、そんな所に隠れて」
「ロイ、なんだその箱」
「もしかして今日バレンタインだから、チョコじゃない…?!」
「えぇ!? ロイに?!」
そうです。
特に仲も良くない、ろくに関わった事の無い彼にチョコですよ。
それで、何故そんな人にチョコをあげるのかというと
ロイは辛いのが得意というのを風の噂で聞きました
確かにご飯作ってる時、時々辛めの物を作ったりするけど
そういう時に「辛い」と話してるのを聞いた事ありません。…まぁそもそも話をあまりしないけど。
そんな中、チョコを作ってる時にプリンが激辛ソースという物を持ってきたものだから
じゃぁロイに試してみようと思ったわけです。
勿論前もってミュウツーに本当なのか聞きましたよ?
本当は辛いのが得意でなかった場合、ただの嫌がらせになるのでね
ちなみに「お前の想像以上に得意だ。」というミュウツーお墨付きです。
「おーいユズー!
私に言ってくれれば幾らでも二人の間を持ってやったのにー、なんで言ってくれないんだー…!」
「チョコを持ってきたって事は…?! もしかしてロイの事を…?!」
「…。」
ジム入り浸り組とエムブレム組が勘違いしまくってるのは置いといて
果たしてロイが「辛ーい!」ってなったりするのでしょうか?
それをここで見守りたいと思います…。
早速ロイは箱を開けて中身を確認する
あの中には小さな激辛チョコが何個も入っています。
あたし達が味見した時は
それはそれは辛くて、暫く三人でヨーグルトを飲みまくったレベルの物です
周りの迷惑な輩が茶化しながらも、彼はチョコを口にする
じっと様子を見ていたのだけど
彼は「美味しいけど、辛いのかな?」と呟いただけだった
思わず驚いてそのままロイを凝視する
「は? 辛い?」
「そんなわけないだろ、チョコだぞ? ユズだぞ?
プリンだったらやりかねないけど、ユズが異物混入するわけないだろ」
そう興味深々でチョコを手に取る周りの輩達
どんどん食べ始めると、食べた順番通りに「辛い!」と騒ぎ始めた
当たり前だろう、辛いのが相当得意なロイが「辛いかも」って言った物が
一般人も「本当だ、辛いね」ってにこやかに居れるわけがないでしょ。
周りの人達は慌てて、自分の分っぽい飲み物に飛びついている
その光景は面白いのだけど、元々は周りの人達に食べさせるものでもなかったし
目的のロイは全然辛そうにしてないし、あんまり面白い結果にならなかったなぁ
つまらんと舌打ちした後、ジムの扉を閉めた
プリンは凄い自信を持って「これは相当辛いぞ」と語ってた代物ですよ?
やっぱりミュウツーが言った通り、ロイは相当辛いのが得意なんですね
待ち合わせ場所の転送部屋に入ると、既に二人は居た
でもちょっとプリンの様子がおかしい…。
ソファーに座ってた二人の所に向かうと、プリンはしんみりとあたしの名前を呼んだ
「どうしたのプリン、大分やつれたね…」
「聞いてくれユズちゃん…
焼鳥は全く辛そうにしなかったんだ…。」
「えぇ!?」
「なんか、ただ普通にチョコをあげた感じになっちゃったんだって…。」
三人分かれた後、早速ファルコにチョコをあげに行ったプリン
辛いと苦しむのを早く見たくて「今食え!」と押しまくってたら
彼が「何か入れてるだろ」と怪しみだしたそうだ
どうでも良いから早く食えと、プリンが箱を開封して激辛チョコを手に取り
食べろ食べないの取っ組み合いの末、無理矢理口に突っ込んだという
仕方なく、渋々もぐもぐしていたファルコ
楽しみにしていたプリンの希望と反して、「普通のチョコ?」と言いながら残りも全部食べたらしい
全く面白くない展開を迎えたプリンは
ファルコや一緒に居たフォックス、ウルフに声を掛けられたけど、何も言えずここにやって来た。
…これがプリンの今年のバレンタインです。
「なんでだよ…、プリンは何の為に一生懸命チョコを作ったんだよ…」
「ファルコも辛いの得意なんだ…、初めて知ったわ…」
「そういえばユズちゃんも激辛チョコを作ってたけど、あれは誰にあげたの?」
「あれはロイにあげたよ。
辛いのが得意って噂を聞いたから、本当か試した」
「そ、そうなの? 確かにそんな話聞いた事あるけど…。
それでどうだったの?」
「プリンと全く同じ展開でつまらない思いをした。」
「そ、そうなんだ…。
というか二人とも、バレンタインは激辛チョコをあげる日じゃないからね。
本当は男女限らず大切な人に贈り物をする日だよ」
「分かってるよ。ミュウツーにチョコあげたし、ロイはただの検証だし」
「今回は残念な結果になってしまった…。
でも、でもきっと来年は! もっと辛いソースを探し出して焼き鳥を「辛ぇー!」って言わせてやるんだ…!」
「プリンは根本的な所から間違えてるよ…。」
間違った楽しみ方
三人で数回大乱闘をした後、転送部屋に戻ると
戦闘態勢のルキナが部屋に居た。
ルキナはあたしを見つけるや否や、「この野郎!」と飛び掛かってきた
勿論本気でやりに来てるわけじゃなくて、お怒りな感じだと思う。
「お前! なんであんな辛ーいチョコをロイにあげたんだ!
まだ口がヒリヒリするぞ! ヨーグルトも無くなってるし、サムスもアイクも皆泣いてたぞ…!」
「…ユズちゃん、ロイに限らずルキナ達にもあげたのか?」
「いや、ルキナ達は勝手に食べただけだよ。あたしはちゃんとロイにあげたから」
「それじゃあそれはルキナ達の自業自得では…?」
「うるさいぞ…! それにしてもなんであんなものをあげたんだ…!
皆がまさかの展開にウキウキしてたというのに…! お前はロイに恨みでもあるのか…?!」
「違うよ。辛いのが得意だって聞いたから、辛いのを作っただけだよ」
「ま、まぁ確かにロイは辛いのが得意だが…。」
「ユズちゃんはロイ以外の輩に食べてもらう予定は無かったから、うんと辛いのにしたんだぞ。
なんでお前等が食ってるんだよ。」
「そ、そうなのか…? 何も言わなかったから分からなかった…。」
「言ったら全部分かっちゃうじゃん…、言うわけないでしょ…。」
激辛ですが食べて下さいって言って、食べる輩がいるわけないでしょ。いくら辛いのが得意だったとしても。
しかしルキナは何を考えているのか
暫く何かを考え込んだと思ったら、「そうだよな!」っとパッと明るい表情になった
「確かに今の感じで言えるわけないよな! 悪かった!
それじゃぁロイにはちゃんとそう言っておくから」
「「「…??」」」
ウキウキルキナはそう言い残して、足早に転送部屋を後にした。
「…なんでルキナさんは嬉しそうだったの?」
「プリンが思うに、彼女は大変大きな勘違いをしてしまったと思う。
プリン達の言葉選びが悪かったのか、ルキナはユズちゃんがロイを遠くから好いてると勘違いしてるのでは?」
「えぇー…?! そ、そうなのかな…?!」
「ま、まぁ別に私達はルキナさん達と特別仲が良いわけじゃないし、そのままにしておけば大丈夫じゃない?」
そんなナナの言葉も虚しく
少ししたら牛乳を持ったエムブレム組があたし達に大乱闘を誘いに来たものだから
あぁこれは本当に勘違いしてるんだと改めて思い知らされた
これは大変面倒くさい事になってしまったようだ…。
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