毛糸玉
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調理室からお菓子やジュースを持ってリビングにやってきた
先に来ていたプリンとナナは大量の毛糸玉を前に編み物をしている
あたしも自分の席に戻って、自分の縫いかけを手に取った
「それしてもナナは何でも出来るなー…、その圧倒的な女子力はなんだろうか…。」
そうプリンは自分の作品とナナの作品を見比べる
プリンが作ってるのは簡単なランチョンマット。
ちょっと形はいびつだけど、カラフルで色使いはとても良いと思う。
ナナが作っているのは熊のぬいぐるみ
まさかぬいぐるみを一から作るとは…、レベルが高すぎる…。
因みにあたしが作ってるのはよくあるマフラー
完全にあたしの望む幅・長さ・色・素材で作っています
「慣れだよね、私も最初から出来たわけじゃないし」
「プリンも女子力を上げなければならないなぁ…」
「そう? 今のままでも十分個性光ってるからそのままで良いと思うよ」
「そうか? …それもそうだな。」
プリンの作っていたランチョンマットは完成した様で
何個あるかも分からない、大量に積まれたランチョンマットの上にそれを置いた
「そんなに作ってどうするの…」
「メンバー皆の分以上を作ってるんだー
特にお子様達はどうしてこうなったと思う程、ご飯後のテーブルはヤバい。
これならテーブルへのダメージも少なくなるし、食器の音もたち難いし、掃除も楽だし、洗濯OKだし、多少の手抜き料理でも見栄え良くなるし、良い事だらけじゃないか。
何時も頑張ってるんだから多少楽しても良いだろ!」
「そうだね、ご苦労様」
「それにしてもユズちゃん、一体何メートルのマフラーを作るつもりだ…。」
プリンの言う通り、あたしはマフラーを編んでいますが
途中から「ここまでやったらもっと長くしたい」という衝動に負けて、どんどん長さを伸ばしています
作業は簡単だし、どんどん伸びるマフラーは床で何週ものとぐろを巻いている
もう3mは優に超えてると思う
「なんかここまでくると、もっともっとってなるんだよね…!」
「完全に辞め時を見失ったパターンだな。」
「まぁ好きな様に作れば良いと思うよ」
数日前から編み続けているので、えらい長さのマフラーが出来上がった
明らかにネタ枠で作ったような物だけど
ちゃんと使い道は考えてるし、決めてありますよ
早速プリンのランチョンマットは効果があったのか
夕ご飯の片付けの時、えらい速さでテーブル掃除を終わらせたプリンが調理室に戻って来た
何時もなら「なんであんなに汚れるんだー…!」と嘆きながら
掃除道具を何回も取りに来る感じだったけど
「終わるの早いね、そんなに効果あるんだ」
「全然違うぞ。汚れたやつはそのまま洗濯・乾燥機に入れとくだけだ。面倒くさいから使う時にそこから取ってくけどな。
あとはテーブル上を拭くのと、床を掃除するだけだからな。テーブル上なんて今までが嘘みたいだ。」
「それは良かったね。
ピーチさん達もお洒落だって喜んでたし、良い事づくしだね」
プリンのお陰で何時もよりも早く片付けは終わりました。
二人が大乱闘をしている間にあたしは要件を済ませよう
紙袋に出来上がったマフラーを突っ込んで、そのまま中庭に向かった
「ミュウツー、出来たんだよー」
「…。」
入った時はパッと見で誰も居なかったけど、声を掛けると彼は姿を現した
「ちょっと長くなったんだけどねー」
ミュウツーの側に駆け寄って、紙袋からマフラーの片端を取り出す
そのままミュウツーにマフラーを浮かしてもらって
空中だけど、首や肩周りを巻いている様なイメージでとぐろを作っていく
…何週も巻いているのだけど、終わりが見えない。
「…随分と長いな」
「そうなんだよ、落ち所が付けられなくて…。
でもそれも理由があるんだけどね。」
「そうだな…」
もう何周したかは分からないけど、やっと終わった頃には大きな毛糸? 布の塊となっていた。
途中、ミュウツーが中庭の扉の方を見たのでつられてそちらを見ると
そこには不機嫌そうな表情でこちらを見てるロイが居た
何も言わないまま、ずかずかとこちらまでやって来たのだけど
ミュウツーはちゃんと彼をここまで呼んできてくれた様だ。
「そのマフラーはミュウツーの為だったの?」
そう不満そうに言うものだから
多分これは勘違いして妬いてるのかもしれないなぁ
確かにプリン達とこれを編んでて、偶然エムブレム組が何してるんだって覗きに来た時
あたしは「ロイにプレゼントだよ」ってはっきり言わなかったものでね…。
「まさかそんなわけないじゃん。これはロイのだよ。
ミュウツーはこれを付けてないでしょ? ただ浮かせてるだけだよ」
「…。」
そう誤解しない様に言い聞かせてるけど、目を細めたロイは例の大きな毛糸玉の方へ目を向けた。
…パッと見じゃマフラーだって分からなそう。
あたしがマフラーの動きをイメージすると、ミュウツーはピッタリと動きを合わせてマフラーを空中で動かしてくれた
浮いてる毛糸玉を解いて、分かりやすくマフラーだという事を証明する。
それでも横幅はまぁまぁあるし、長さは長いってものじゃない
…ちなみに何してるのかって
穴が開いてましたとか糸が解れてましたとか、そんな失敗作をプレゼントしない為にミュウツーと一緒に最終確認をしています。
「…随分長いね。…ミュウツーに合わせて作ったんじゃないの?」
「違うってば、ちゃんと理由があってこの大きさなんだよ」
「確かにロイの思う通り、これがマフラーと言われてもマフラーとしては使い辛いな
だがユズが言う通りそれはマフラーであり、私ではなくお前の為に作った物だ」
「そうなの…? 全然見えないけど…」
「わざとおかしいくらい大きくしたんだよ。
ロイに普通のマフラーをプレゼントしたかったのはしたかったんだけど、出来上がった物がロイの好みじゃなかったら申し訳ないじゃない?
しかもそれで「使ってあげないと悪いし」なんて思わせるのは絶対に嫌だから、だったら「最初っからそういう普段使い出来ないような物で良くないか?」って、結論に至ったのよ」
「…」
「精神的に重いプレゼントをやるくらいなら、物理的に重いプレゼントにしておこうというユズの優しさだ。
「重くて動き辛い」なら使われないのも仕方ないからな、…実際に本当に重いと思うが。」
「最初出来上がった物をプリンやナナに見せたら凄い驚いてたんだよ。
まぁそりゃそうだよね、こんなの使える物じゃないから
紙袋に入れて運んだ時に、「この重さはヤバい」と思ったくらいだし」
「それでもしっかりと肌に良い素材を使っているし、色もロイに似合う物をと考えていたようだし
途中途中ナナに手伝ってもらって、形も崩さないで綺麗に仕上げているな。特に異常はなさそうだ。」
「よしよし。これでも一応プレゼントだからね。ちゃんとした物をあげたいじゃん?」
もうすっかり不機嫌さは無くなったロイの首や肩周りに、マフラー擬きをふんわりと巻きつける様にイメージをする
これも全くイメージと同じ動きをしてくれるミュウツー…
これはこれであたしが超能力を使ってる気分だな…。
途中、ロイが巻き付いてるマフラーを軽く摩ると、目を瞑ってそれに顔を埋めた
「(お前の考えや理由が分かって、一人で勝手に嫉妬していた自分を反省してるだけだ)」
そんなミュウツーからの密告が来た。
そうかそうか、ロイもちゃんと分かってくれたのですね
それならあたしは一安心ってもんですよ。
良い気分で超能力者をやっていたけど
半分くらい巻き終わった所で残りのマフラーがイメージしてるのと違う動きを始めた
「今度はロイからの話になるが…」
そうミュウツーが口を開くと、フリーな残り半分のマフラーがあたしの首や肩の周りにふんわりと巻き付き始めた
「お前は「手作りのしょうもない物をあげるくらいなら、相手好みの良い既製品を買ってプレゼントした方が良い」と思っているが
奴はそうでもなくて「マフラーレベルプレゼントなら良い既製品を買ってもらうより、気持ちの入ったしょうもない手作りの方が良い」という考えの様だぞ。」
「そうなのっ!?」
あたしはてっきり、買った物でもちゃんとした物の方が良いと思ってたわ…。
「そうだったのか…、ごめんねロイ…。ちゃんとした物作らなくて…。」
「大丈夫だよ。君の考えも間違ってはいないからね」
「まぁ考え方は人それぞれだから仕方のない事。
…それで、これは無駄に長いからこういう使い方も出来て良い物だと思う」
そう丁度あたしの分も巻き終わって、程度な長さになった余りが力無く下へ落ちる
これはあれですね、よく甘酸っぱい恋愛話とかでよく見るやつ…。
「ミュウツーってこういう情報は何処で仕入れてくるの…。」
「主に本だろうな。後は館内の女性達の考え事とか」
「誰だよ、こんなの考えてるの…。」
二人で一つのマフラー…
マフラーの共用…
…考えるだけでも恥ずかしくなってきた
「ありがとうねユズ、マフラーちゃんと使うよ」
「こんなデカいのどうやって使うのよ…。」
「はは、こうやって使うんじゃないの?」
「ち、違うから…っ!」
本当、これを狙ったわけじゃないんだよ? あたしは…。
外そうかと思ってマフラーに手を掛けると、ふんわりはしてるのに何故か微動だにしないマフラー
お前の仕業だろうとミュウツーを細い目で見ると
「(幸せ噛み締めている最中だから、せめて部屋に戻るまではそのままで居てやれ)」との密告助言をもらったので、そのままにしておきます
とりあえずミュウツーにお礼を言った後、本当に「ちょっと僕の部屋までついてきてくれない?」と言われたので、とりあえずまずはロイの部屋を目指します。
その途中、大乱闘をしているはずの二人が突然曲がり角から現れた
「あ、ユズちゃんロイさん」
「休憩で飲み物を…、取りに…行っ、て…」
そうプリンはあたしとロイを交互に何度も見ると、どんどん言葉がゆっくりになる…
ナナは別に良いけど、プリンにはあまり見られたくなかったなぁ…。
思った通り二人でマフラーを共用してる事に気が付くと、途端にプリンは悔しそうな顔をした
「そ、そうだったのか…! そういう使い方をする為のサイズだったのか…!
なんでプリンは気が付かなかったんだろう…!」
と、プリンは自分の足を叩いた
本当に言ってやりたいけど、それは全然違うんだからね。
これを目的としたわけじゃないんだからね。
ロイは笑ってるけど、使い難くする為にこのサイズにしたんだからね。本当に。
「確かに二人用だったら良いサイズですね」
「君も手伝ってくれたんだってね、ありがとうね」
「あーいえいえ! 私は大した事はしてないですから…!
殆どユズちゃんが作ってましたから…!」
「ロイも大喜びじゃないか…!
本当にユズちゃんはプリンよりも何枚も上を行ってるなぁ…! どうなってるんだその頭…!」
「…。」
それはこっちのセリフだからな
そう思いながらプリンを睨みつけた。
毛糸玉
ロイの部屋に戻るまでの間に何人もの人に遭遇してしまった。
興奮してはしゃぐピーチ達も居れば、冷やかしに入るカービィ達も居る。
瞬く間に館内の「そういう」噂好きの人達の間に広まってしまったのだった…。
ぶっちゃけもうマフラーは燃やして無に帰して欲しいくらいなのだけど
凄い嬉しそうに「大事にするよ」と言う彼を見ると、とてもじゃないけどそんな事は言えないです…。
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