熱が出たのです
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部屋の窓を見ると外は夕方
もうご飯を作らないとヤバイ時間なのですが、今はそんな体力も無い
昨日、発熱しました
だからだるくてろくに動けません
料理とかはマスターにお願いしたので問題は無いのですけども…
暇だったので布団に潜ったまま携帯をいじってると
ドアをノックする音が聞こえてきた
「はい?」
「ユズちゃーん! ご飯もって来たよー」」
扉の向こうから聞こえてきたのはナナとプリンの声
どうぞというと二人は元気に飛び込んできた
大回転しながらこちらに接近するプリン、もちろんだが彼女の手にはご飯は無い
そしてナナもご飯を持っていない
「プリン…、ご飯が見当たらないけど」
「ちっちっち…、プリン達じゃぁないのさー
実はな! ファルコが! 調理室で! おかゆを作ってたのさー!
これはきっとユズちゃんの為だー」
「ファルコが…?」
「そうなの、マスターが片付け手伝ってくれてた時
ファルコさんが調理室にやってきて、なべ引っ張り出したから
どうしたのかと思ったら、おかゆ作り始めたんだよ」
「…そうなの? あたしの為に?」
「多分ね、聞いてみたんだけどはぐらかされたの
でもおかゆ作る理由なんて、ユズちゃんくらいしかいないでしょ」
「もしユズちゃんの為だったら
奴はユズちゃんにちょっかいを出す人だから、塩を大量に混ぜ込んでる可能性がある。」
「確かに。」
「まさかそこまでしないでしょ」
気が済むまで喋ったらしいプリンは
「じゃぁ達者で」と言い残して部屋を出て行った
再び布団に潜って携帯をいじっていると
部屋に響くドアのノックオン
はいはいどうぞと答えると勢い良く扉が開いた
「ユズ…、おかゆ作って来たぜ…」
「!」
そこに居たのは何か湯気の立つ鍋を持ったファルコ
…確かにプリン達の言った通り、ミニテーブルにおかゆが置かれた
起き上がってミニテーブルの側に座り込む
「わぁ…、本当だ…、作ってくれたの…?」
「…」
「…なんで無反応なのさ」
…まさかプリンが言った通りに塩大量投入粥なのだろうか?
食べて「しょっぱい!」って飛び跳ねさせるのを目的としているのだろうか?
確かに「引っ掛かったー」って馬鹿にする彼が目に浮かぶけども
ベッドに寄りかかりながら床に座る鳥は、何を聞いても口を開かない
…だから余計に怪しいのです。
試しに少しだけお粥を食べてみると、普通に美味しかった。
何で? と無言でファルコを見る
「…なんだよ、その目は」
「いや…、普通に美味しいなって…」
「当たり前だろ…」
「いや…、てっきり塩てんこ盛りだと思ってたから…」
「病人相手にんな事しねぇよ。」
「うん…、まぁおかゆ用意してくれるとは思ってなかったし」
「…まぁ、そうだな」
自分のテレビを見ながらおかゆを頂く
そして隣で動く事の無いファルコ
「…そういえばランバル、どうして急におかゆを作ってくれたの?」
「…」
「…。」
「…」
「…無視ですか」
「どうでもいいだろうが、ありがたく思え」
「なんて偉そうなんだ…
でもまぁ嘘ではないんだけどね…」
「だったら感謝しろ「ファルコ様ありがとう」と」
「自分で言うのか…。しかも「様」まで付けるとは…」
「フン…」
おなか空いていたし、味も文句が無いので完食
ご馳走様した後、鍋をファルコに押し付けた
「はいお待たせ」
「は?」
「あたしが食べ終わるまで待っててくれたという事は
鍋を片付けてくれるって事でしょ?」
「誰がそんな事言ったんだ」
「あんただよ。口にはしてないけど行動ではそう語ってる。」
「違ぇよ、てめぇが片付けろ」
「えぇ? ヤダよ、あたしは病人だよ? ファルコが片付けてよ」
「甘ったれるな、一階に行くくらいだろ」
と言いながらも、ファルコは鍋を受け取ると立ち上がって部屋を出て行った
…おいおい、…マジですか。
これはきっと明日は雨が降り、嵐になり、槍も降ってくるだろう。
自分は今まで夢でも見てたんじゃないのか?
とか思いながら再び布団に潜っていると眠くなってきた
正直疲れてるのかだるいし、ご飯食べて温かいし、寝転がっているし…
これで部屋が暗かったら完璧だと思いながら電気を消す
布団に潜り横向きで丸まって暫く
部屋の扉がゆっくりと開く音と部屋の中に差す光
誰だよ。と思ったけど、その人は寄ってくると側で立ち止まる…
目は閉じていたので顔は見れない
目を開こうと思ったら頬に何か当たった
「お前、何で熱が出たんだ?」
「…えぇ?」
目を開くと近くでしゃがんでこちらを見るファルコ
頬に当たっていたのは彼の手だった
「わからねぇなら俺が教えてやろうか?」
「分かるの?」
「昨日の夕方、大雨に打たれながら自転車乗ってたからだろ。」
「あはは、やっぱりそう思う?」
「はぁ…、つまんねぇくらいにバカだな、お前」
「幾らでも言いな、気の済むまで…」
頬を撫でる彼の手をちょんちょんと叩いてやる
…自分でやっててだが、なんだこの戯れ。
「ねぇファルコ、ファルコはあたしの事好きなんでしょ」
そう言ってニヤニヤしながらファルコの方を見ると
なんとまぁ「無表情」という残酷な顔をしている事か…。
「…ごめん。
戯言ほざいてごめん。熱出てごめん。生きててごめん。」
「そこまで言う事ねぇだろ。」
「うん、そうだね」
寝返りをうってファルコの手から離れる
「ねぇ、つまんないから今日はそこに居てよ」
「はぁ…?」
「別に良いじゃん、こういう時独りは辛すぎる。」
「分かった分かった」
「それじゃぁもしも、魔の手がやってきたら今夜中は撃退してね」
「…魔の手?」
「…プリン。」
ファルコがお粥を作ってくれた、あたしの為に
プリンははぐらかされてあたしの為という事は知らないから
後であたしに確認する為に部屋に来るだろう
もしかしたら何処かに隠れて、お粥を手にあたしの部屋に入ってくファルコを見てたかもしれないけど
どっちにしても後で此処に来るのは目に見えているので
プリンが大回転しながらやってきたら撃退してもらうと…
「あれが部屋に来たらまずい…、安眠を妨害されるのは堪らん…」
「分かった、任せろ」
「さすがランバル、頼りになる。」
「…その呼び方止めてくれりゃぁ文句は無いんだがな」
とりあえず今夜の防護壁は立てた
ファルコには毛布を用意してあげようか
「じゃぁ毛布を用意しようか?」
「あーあー、大丈夫だ、気にすんな」
「そう? 寒いんじゃない?」
「問題ねぇよ」
「そう?」
数回聞いてみたけど大丈夫だと言って聞かないので用意はしませんでしたが
まぁ多分プリン撃退してあたしも寝たら自分の部屋に戻るという事でしょう。
起こしていた身体を布団に戻すとファルコは立ちあがった
そして何を思ったのか、部屋を見渡してあたしの机に歩み寄ると
机の上の物を物色し始めた
「おいおい…、あんた何やってんの…」
「暇なんだよ、どうでもいいだろ」
「どうでも良くないよ…」
あぁー…
机の上には大切なイラストや落書きがあるのに…
プリンとナナと描いた、皆のイラストとか見せられたもんじゃないのに…
面白可笑しく描いてある落書き
あのファルコ版の絵を見たら怒り出しそうだが…
起きて片付けに行くのも面倒臭い
もし見つけたとしても、あたしは病人なので大目に見てくれるだろう。
部屋の電気もついて少し眠りにくくなったけど
ファルコがあたしの睡眠を妨害する事もなく静かにしてくれてるので、これでも眠れそう
物色は気に入らないが、一方的に利益を得るのは申し訳ないので今回は許してあげよう
なんか紙の音を聞きながら目を瞑ると、あっという間に眠りについた
夜中にふと目が覚める
頭上にあった時計を見ると現在は午前2:30
ちょっと喉が渇いたから食堂に向かおうと身体を起すと、手が何かにぶつかった
部屋の電気が消えていてすぐには気が付かなかったが、隣で鳥が寝ている。
…こいつは大問題だ。
隣でファルコが寝ているという現実も十分問題なのだが
この状況をあの魔の手が見てしまっていたら、そっちの方が大問題だ。
きっと悪い噂に変えて皆に言いふらしてしまうだろう
とりあえずまずは水とプリンの様子という事で
ファルコを起こさないように彼の足の方に回ってベッドを出た
部屋を出て真っ先に向かったのはプリンの部屋
廊下の微妙な灯りの中、プリンの部屋の扉をずっと連続でノックしていると
とっても眠そうな寝帽子&抱き枕プリンが出てきた
「んん…? ユズちゃん…?」
「おいプリン、あんたはあたしの部屋に来た?」
「えぇ…?
一回行ったけど、ユズちゃん爆睡してたからすぐに戻ったよ…」
「そうなの…?」
おかしいな…
プリンはファルコを見てないのか…?
「何かあったの…?」
「いや…、ご飯後、起こされて追求されるのかと思ってたから」
「…いくらプリンでも病人相手にそこまではしないよ!
まぁ元気になったら追求するけど…!」
「分かった分かった、寝てろ、お休み」
「お休みー…」
扉を閉めて、食堂の方へ給水に向かう
気の済むまで水を飲んで部屋に戻ると、何故か部屋の電気がついていた
ベッドの上では最後に見たまんまのファルコがいた
「ねぇファルコ、あんた隠れてたの?」
「何時の話だ」
「プリンは部屋に来たんだって、でもファルコは見てないって」
「俺が部屋を出て留守だった時、丁度来たんだろ」
「え、じゃぁなんであんた此処に居るのよ」
「お前の私物物色に時間掛かった、今は休憩中だ」
「…あんた知ってる通り最悪だな。」
まさかまだ私物物色をしていたとは…
まぁ落書き以外のヤバそうな物は、マスターに作ってもらったミニ倉庫に隠してあるので
ここにあるのは見られても大丈夫なものばかり、…多分。
しかし見ても何の得の無い物ばかりですけどね。
「それにしても休憩中だとしても、ベッドで寝るのはどうかと」
「ほっとけ、寒いんだよ」
「だから毛布提供してあげますよと言ったのに」
「終わった事はどうでもいいだろ」
「そしたらあたしの寝る場所は…」
「此処にあるじゃねぇか、ごちゃごちゃうるせぇな」
そうさっきまであたしが寝ていた所をバシバシ叩くファルコですが…
なんてご無体な…。
さっきは知らんかったから寝てたけど
今回は隣に奴が居るという現実を受け入れてからの睡眠となります
これは無体です…。
「病人が、さっさと寝てろ」
「うわっ」
起き上がったファルコに引かれてベッドに連れ込まれる
さっきまで寝ていた所まで引かれると、部屋の電気が消さされた
「…」
「…」
…無駄にモヤモヤする
きっと何もしてこないと思うけど恐ろしい
ある意味緊張して眠れそうに無い。
今の自分に南無阿弥陀…
仕方なく掛け布団はファルコに譲って、その下の毛布に丸まりながら
極めて端っこ、壁の方に寄って、ファルコを背に丸まる
「てめぇこそ俺の事が好きなんじゃねぇのか?」
「…」
急に聞こえてきた言葉に、一瞬ドキッとした
「何も聞こえませーん」
「聞こえてるじゃねぇかよ。」
そうパシッと軽く頭を叩かれた
その手は離れる事無くあたしの頭の上
てっきり病気になったから優しくなったのかと思ったけど
今の言葉、…どうやらそれだけじゃなかったんですね。
熱が出たのです
「とりあえず言っておくぞランバル」
「なんだよ」
「昨日はありがとう」
「………あぁ。」
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