諦めない人
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片づけやらゲームやらパソコンやら
やる事もやりたい事も多くって、今日の入浴は遅くなってしまった
眠い中、リビングで夜のニュースを見ながらドライヤーで髪を乾かす
すると部屋に誰かが入ってきた
「お前、こんな所で髪を乾かしてるのか?」
誰かとそっちを見てみれば、それはファルコだった
…個人的にだが、こいつは面倒で今は話したくない奴だ。
「文句ある?」
「無ぇよ。
わざわざ此処までドライヤーを持ってきてる意味がわかんないけどな」
「どうでも良いでしょう…。
乾かしてるだけじゃつまらないから、テレビを見ながらしてるの」
「ふーん」
なんで面倒臭い奴かと言われると、彼はやたら口が立つ上に荒い。
そして間違えた扱いをするとすぐキレる…
結論的に「触らぬ神に崇り無し」です。
今現在までは取り扱いに注意してきたので
大きな争いも無く、平穏な仲を維持しています…。
…プリンは「我慢ならん!」と激突ばっかりしていますが。
そんな努力の甲斐もあって(?)
前、ファルコにこんな事を言われました
「俺、お前の事が好きだわ。
お前は俺の事を良く分かってるし、一緒に居て楽しい」と
それはお前を気遣っているからであって…。なんて答えられず。
その時あたしははぐらかしてしまったから
それ以降、あたしから見たらよくわからない関係になってしまった
あたしは今までと同じ様に接しているから、今までと同じだと思ってる
ファルコも今まで通りだから尚更。
…でも前と比べたら変な所でファルコは優しくなったと思う。
事情を知っているプリンは
「お前は鳥を振ったけど鳥は諦めてない。そういう状態」と言いきった
あたしは振ったとか、そういう気は無かったんだけどな…
じゃぁファルコを付き合うの? と尋ねられるとそれも首を捻る話だ
…贅沢だって怒られるかもしれないけど。
あたしからしたら
「少しだけ友達以上・全然恋人未満」である
「俺が乾かしてやるよ」
「えぇ!?」
そのまま部屋を出てくのかと思いきや、ファルコはこっちにやってきた
まったくどういう風の吹き回しだ、おい。
自ら面倒臭い事を買って出るとは。本当に。
「いいよいいよ…! 大丈夫だよ…!
ファルコに迷惑掛かっちゃうよ…!」
「なんで俺に迷惑が掛かるんだよ…。」
あたしの言う事を聞かずにソファーまでやってきたファルコ
無理矢理立たされると、座っていた所に奴が座る
そしてあたしは床に座らされる。
全く持って他人の意見を受け入れない奴だ。
渋々ドライヤーとテーブルの上に置いていたブラシをファルコに渡した
何でこんな事をしてくれてるのかまったく分からないけど
あたしは楽チンだからぶーぶー言いません。
というかぶーぶー言ったらブラシで叩かれるに決まってるから、絶対に言いません。
温かいし、何か気持ち良いし、時間も時間で物凄く眠い…
途中から明らかにブラシではなく手で髪を触っている様だけど、それも許してやろう。
あたしでだいぶ乾かしたと思うから、長く続く事はないだろうし
気付いたら眠気に勝てず、目を瞑っていた
眠ってはないけど、このままだと眠ってしまいそうだ…
ドライヤーの音が止んだのに気が付いて瞼を開く
髪を撫でる手はそのままで、ファルコは隣に座り込んできた
「…お前の髪は良い匂いがするな」
「そうかな…? そうかもしれない…」
実は許可を得て借りたピーチのシャンプーだけど、これは秘密だ。
あたしもこれは良い匂いだと思ってる。
早速ドライヤーを片付ける為、立ち上がろうとしたら
腕を引かれて再び座らせられた
「どうした…?」
「もう少し…」
そう呟きながら、あたしの髪を撫で続けるファルコ…
なんか変な感じだなぁ…。
「ファルコ…、何かあったの…?」
「あぁ? 別に何も無ぇけど?」
「…。」
…言葉が悪くなるから絶対に本人前に言わないけど
なんか気持ち悪いぞ、ファルコ。
しかも無駄にその撫でられる感覚が気持ち良いから
あたしも「もうちょっと。」という感があるのが否めない。
だったらもう気の済むまで触ってろ、と諦めて目を閉じる
…本当は早く片付けて部屋に戻りたいけど。
暫し髪撫でを受けた後、今度は首に指が当てられた
首を絞められるのか? と吃驚して確認するが
そうでは無くて普通に首を撫でられる
それが無性にくすぐったかった。
「うぅ…、くすぐったい…」
「ふーん…」
ファルコのその独特の手の感触もあって、やたらにくすぐったい。
その手を振り払う様に追いやったけど、またやってきた
「ちょっ…、何が目的なのよ…」
「くすぐったい所はずっと撫でてやると気持ち良くなるんだと」
「…。」
…だからそれがどうしたんだ。
…まさか、本当なのかあたしで実験しているというのか?
「だからってあたしにやらなくても良いってば…」
あたしの現状から言えば、気持ち良くなるとは到底思えない。
100%くすぐったいんだけど…。
それにこの話ってアレだよね?
破廉恥な方面の話だよね…。
腕は捕まったままなので離れる事は出来ない
でも抵抗はしようと上半身中心に距離を取る
もちろん奴は手を伸ばしてくるけど、嫌々と動ける範囲内で逃げ回る
「おい、何逃げてるんだよ」
「当たり前でしょう…!
本当かどうか知りたいなら自分にやれば…?」
「自分にやったって効果無ぇだろ。自分なんだから。」
「あぁー…! だったらあたしじゃなくてフォックスでも良いじゃない…!」
「なんでフォックスにやるんだよ…! わけわかんねぇだろ…!」
「事情説明すればきっとわかってくれるって…!」
「だー! 面倒臭ぇーな…!」
「!」
突然腕を引っ張られると、そのままファルコの腕の中へ…
「望みはこれだけなんだから少しぐらい付き合えよ…」
「…。」
何時もの凶悪的暴力的なお前はどこへ行った。
と、言いたくなる程の優しさ全開に、あたしの心はドン引いている。
「本当にそれだけ…?!」
「あぁ」
「じゃぁ、くすぐったくなくなったら終わりだよね?」
「そうなるな」
それなら我慢しよう…。
まさかわさわさされるだけで気持ち良くなるなんて事、ありえないだろうし。
渋々目を瞑って逃げずにいると、再び首元に伸びてきた手
何時もならプリンを往復ビンタする様な危ない手だけど
優しい時は優しいな。手加減出来るんだな。
…まぁファルコがプリンを往復ビンタをしてるのを見た事は無いが
それくらい荒れた奴なので…
とりあえず感覚に集中しようと、喋らず目を開かずで居る
ファルコも何も喋らないのでテレビからの声ばかりが耳に入ってくる
最初はブルブルしていた身体も慣れてきたのか、震えも治まってきた
さてさて、問題の「くすぐったいの次の段階」だけど…
「…気持ち良くは無いかな」
顔を上げて目を開く
そして正直な感想を述べると、ファルコは目を細めた
気持ち良くは無い。でもくすぐったくもない。
「おかしいな…」
そう言いながら、今度はパジャマ越しに脇腹あたりをわさわさ撫でる奴…
「こらっ…! 首だけだと言ったはずだ…!」
「うるせぇ…! 全然面白くねぇ結果じゃねぇか…!」
「約束は約束でしょ…! 諦めろよ…!」
「誰が諦めるか…!」
絶対口にはしないけど
特に何も無かったのは、まず雰囲気違いなのが第一の原因でしょう
そりゃぁいかにも「そういう雰囲気」だったら別の結果が出たかもしれない
実験みたいに機械みたいにやったって駄目だ
それと相乗効果。一つだけじゃ弱いもんね。
例えばチューしながらとか、クソ甘い言葉を囁かれながらとか
そうすればそのわさわさは素晴らしい物になるでしょう。
…体験した事が無いのでよくわからないけど。
あとそれをファルコとだなんて…、耐えられたもんじゃない…。
というかこのあたしの考えてる事と、ファルコの考えている事が違ってると良いね。
あたしの考え過ぎだと良いね。
こいつはただ純粋に「本当に気持ち良くなるのか?」だけを考えていると良いね。
色々考えてる間も、ファルコの手をかわす様に逃げ回る
「おいこら逃げるな。」
「何でだ…! ちゃんと協力したでしょ…!」
「お前も真面目に考えろ、どうしたら気持ち良くなるか。」
「どうだって良いよ、そんなの。」
「次が最後だ。俺も何個か良い案があるから」
「何でそれを最初っからしないの…!?」
とりあえず我慢して、もう一回だけ付き合ってあげる事にする
ファルコの良い案とは一体何だか、気になったりもするので。
今度はちょっと体勢を変えて後ろからファルコに抱きしめられる形
説明通り後ろから抱きしめられているので凄い密着率
途端にドキドキし始めたあたしの鼓動と熱くなる顔
まーさかここまでの事になるとは思ってなかった…。
恥ずかしい。
それしか今は感じない。
「ねぇ、やましい事考えてない…?」
「はぁ? やましい事なんか考えてねぇよ。
…やらしい事は考えてるけど。」
「あー…! でしょうねー…!」
「もう遅ぇよ。警戒してるんだったらもっと早くから暴れて拒絶すりゃぁ良いものを」
「分かってるなら今開放してくれたって良いじゃない…!」
「嫌に決まってんだろ。
此処まで来たのに折角だから俺の良い案を試させろよ。」
すぐ横まで顔を近付けられると、首元に嘴が付けられた
さっきまでとは違い、完全にモードが変わったからか
ちょっとした嘴の動きでも体が反応する
くすぐったいけど、今回はそれだけじゃない
いつの間にかパジャマの中に入れられていた手は脇腹を撫でる
これがまたくすぐったいから身体は手を避けようとするけど
体勢状態が状態だから逃げられるわけもなく…
「此処も良さそうだな…」
「く、くすぐったい…っ!」
「それで良いんだよ」
もう片方の手はズボン越しに太股を撫でる
でもいろいろあってそれ所じゃない
…これじゃぁ完全にこいつの手の内じゃないか
「良い子だから大人しくしてろ、分かったな?
最初っから突っ走る気は無ぇからいう事を聞け…」
「うぅ…っ」
「居た居たファルコー」
「「!」」
急に耳に入ってきたテレビ以外の第三者の声
ファルコ共々飛び跳ねて、声の主の方を見ると
途端にハッとするのはフォックスだった
「フォックス…! 何しに来た…!
俺は用があるからって言っただろ…!」
「すまなかったーっ!
ただ俺はファルコに話しがあったから…!」
「なんだよ…! とっとと言え…!」
「明日の買い物は何時に行こうかって…」
「何時でも良いわっ! しょうもない質問を持ってくるな…!」
「悪い…! 悪かった…! ユズが見えなかったから…!
二人が何してるか分かってたら入ってなかったよー…!」
喚きながら申し訳無さそうに部屋を駆け出て行ったフォックス
でもありがとうフォックス
あなたのおかげであたしは目を覚ましたのです。
「終わり終わりー!」
ファルコの腕の中から暴れ転がる様にして上手く脱出する
危うくあのまま本当に飲み込まれる所でした…。
「何が終わりだよ、まだ案を試し終えて無ぇだろ」
「もう終わりなんだよ…! 勘弁してよ…! 髪も乾いたでしょ…?!」
別に試さなくても行く末は見えてるでしょう…!?
完全にお前の望む方向に着く末が…!
「仕方無ぇな」
「!」
あたしの熱意が伝わったのか、やっと諦めてくれた様だ
嬉しい。安心。
そしてほんの少しだけ、その行く末を見たかったという後悔の様な、もどかしさの様な物もあったり…。
とりあえず安心していると
ファルコは立ち上がって此方を見下ろした
「言っておくが今回は手を引いてやるだけだ、諦めたわけじゃねぇ」
「えっ?」
「明日にでも隙や時間がありゃぁまた来るからな。同じ過ちは繰り返さねぇよ」
「き、急にどうしたの…?」
「急にどうした? …まだしらばっくれるのかお前は。
分かってんだろ、俺が何を考えてるのか何をしたいのか。
…いや、分かってても分かって無くてもどっちでも良い、言ってやるよ。」
言わなくて良いよ。分かってるから。
耳を塞ぎたいけど、それでも聞こえてくるだろう
「必ずお前を手に入れてやる。俺は絶対にお前を諦めねぇから」
そう言い切って、ファルコはリビングを出て行った
一人取り残された部屋の中
ずっと付いていたテレビを消した
プリンの言っていた事は本当、当たりだったんだ。
それを理解した瞬間、やたらファルコがカッコ良く思えた
…この様子だと呑まれるのも時間の問題だな
だって今、あたしは少しだけ「呑まれるのも良いかも」と思ったりしてるから
諦めない人
「フォックスちょっと来い。ぶっ殺してやる。」
「ひえー! 助けてー!」
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