推し活に近い
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「ミュウツー! おやつー!」
「頼んでないのだが…」
今日も今日とて溢れんばかりの想いで大量のおやつを作りました
一人じゃ食べきれない量あるので、とりあえず出会った人におすそ分けしている
ミュウツーも好みそうな味のお菓子を差し出すと、彼は首を傾げた
「…何故本人に渡さないのだ」
ミュウツーが言う意味はとても分かります
このおやつ、作っている時はちゃんと目的の人が居て、その人の為に一生懸命作ってる。
でも作り終えた途端、何事も無かったかのようにミュウツーや他の皆に配っています
その人にはあげてません、一回もあげた事ありません。
それが疑問なのでしょう
「その人にあげるとか迷惑千万!」
「普通に受け取ると思うが」
「良いの良いの! ミュウツーの口には合うはずだから食べてねー」
「…」
余計な会話はさせません、何故ならあたしは今の距離間が良いと思っているのです!
プリンナナと一緒にお昼ご飯を作っていると、調理室に誰かがやってきた
「お腹空いたー」と言いながら入ってきたフォックスとファルコ、その後ろにはつまらなそうな表情をしているウルフ、腹ペコ動物三人組だ。
あたし達はもうご飯は済んでいるのでここを後にしよう。
なんか喧嘩を起こしそうだったプリンとファルコ
何とか宥め倒してプリンには退出を促す
ついでに三人には良さそうなおかずを数個紹介しておこう
調理室を出て間もなく、プリンは不満そうな顔でこちらを見た
「ユズちゃん、おっさんが好きだーって言う割にはそんな素振りないよな。
いまだって凄い余裕そうだったし、焼き鳥とかと同じような対応だもんな」
「え? そうかな、近づけたのは嬉しかったけど」
「普通好きな人と顔合わせたら、照れたり口籠ったり赤面したりするだろ」
「いやいや、ちゃんと好きだよ、ファンだよ。じゃないとナナに狼のぬいぐるみ作ってーなんて言わないでしょ」
「確かに!」
適当にそれっぽい事を言ったら、プリンは納得してくれたようでした。
おやつ時間が過ぎた頃、テレパシーでミュウツーに呼ばれてしまった
来てくれとの事なので早速中庭に向かいます。
ミュウツーの呼び出しは多くないが、もれなく結果はあたし的には良くない事だ
ただいつも構ってもらってるので断れるわけもない…
中庭にはいつも通りのミュウツーが居た
「わざわざすまないな。突然だがお前の言う推し活とやらを話すお前のな、頭の中をもう一度よく見たいのだ。他の者の言う好きとお前の言う好きの何が違うのか知りたいのだ」
「えぇー…?」
本当突然だな…
でも確かにこれはミュウツーには興味を誘う感情なのかな…
今まで見てきた「好き」とあたしの持ってる「好き」確かに違うだろうし。
「別に良いけど、そんなおかしい所あるとは思えないけどなぁ…。
…誰も居ないよね? 聞いてないよね?」
「近くには誰も居ないようだ」
「分かった分かった」
「本当に助かる。
それでだが、お前はウルフの事が好きなのだろう? 何処か好きなのだ?」
「え? デザインじゃない? イケイケ狼カッコいいじゃん。 …性格はあんまり知らない。
ただサムスが言うにはクール気取りのチンピラ、ベヨネッタが言うには愛想が無いチンピラだってさ」
「その好きは接触希望をもたらさないのか?」
「もたらしません。見てるだけでも良いデス。目と心の保養になるのよ。
近付くなんてとんでもないよ、彼の洋服知ってる? あのトゲトゲ、カッコは良いけどハチの巣にされるよ。チンピラだしそんなの関わっちゃ駄目でしょ! だから遠くで応援してるのよあたし」
「奴はサボテンか。応援くらいなら別に近くで応援しても良いのでは?」
「それは駄目だ。彼はチンピラサボテンだ。近寄ってはいけない」
「お前それは本当に好きなのか…?」
「好きだってば…! 良デザ! あれは雄味を感じざる得ないねー…」
「見た目だけが好みなのか」
「うーん…、そうかもしれないね…、一応憧れみたいのもあるんだけどね…」
この館にはいろんな個性的なファイターが居ます。良い悪い含めてとてもカラフルな個性です。
対してあたしは全く色が無いMiiファイター、服やカスタム技で色を纏うような無色な凡人だ
凡人だから皆の個性は輝いて見える、それは今もなお。
ウルフに限らず皆に大なり小なり憧れている
そこでたまたま一番気になって感動すらしたのがウルフだったって事です。
…ですから個性の爆弾であるミュウツーも好きです。
「なるほど、それは分かった
それでは向こうからの話になるが、奴はお前と話したがっている様だがそれはどう思う」
「えっ? どうして?」
「不特定多数からお前の話を聞いているのに全くその素振りが無いのだ。謎に思っている。」
「じゃぁそのまま謎でいてくれれば良いと思います」
「面白いくらいに冷たいな、好きと言う割にはそういう冷静さもあるのだな」
「いやいや、さっきから遠くからで良いって言ってるじゃない。あたしが口を滑らせて機嫌損ねたらどうすんの。彼が可哀想だしハチの巣じゃぁ済まないでしょ」
「そんなポンポン手を出す輩ならとっくにマスターに作り直されている。お前は奴が好きだが恐れてもいるのだな」
「それはあるかもしれない。皆がチンピラチンピラって言うからそりゃ怖いに決まってる…」
「そのお前の言うチンピラ感が無くなったら接触はするのか?」
「いや、そのチンピラ感も彼の良さだろうからそのままで良いよ。あたしのせいで彼がどうこうして人が変わりましたとか、そういうのは嫌だね。せっかくのキラキラが勿体ないよ…」
「そこは許せるのか」
「接触するつもりないんだから、そのままチンピラでも良いでしょ」
「もう一つ、何故黙っていればこうならずに済んだのに、本人以外の者にはファンだと語るのだ?」
「プリンとかピーチとかが「気になる人は居ないの?」って毎日毎日うるさかったからだよ
厳密には皆の言う好きとは違うけど、一番近いのがウルフだからそう言った」
「言わなければこうならずに済んだろうに…」
「それはね、こうなると思ってなかったからだよ。もうちょっと考えてから発言すべきだったね。絡まれる面倒さに負けてしまったの…。」
「まぁ今更どうこう言っても仕方ないがな。
それはそうとしてユズ、後ろを見てみると良い」
「え?」
…何か不穏な言葉を告げられたな
恐る恐る後ろへ振り返る
まぁまぁ近くの距離にあった花壇に座っているウルフが居た。
彼は今までに見たこと無いくらいご機嫌そうな表情でこちらを見ている
ミュウツー…、さっき近くには誰も居ないって言ってたじゃん…。
「俺様そんなに心配するほど怖くないよー」
と、彼はそんな事を言いながら立ち上がり、笑いながらこちらにやってきた
…なんという威圧感! これはハチの巣所ではない。骨も粉々だ。
遠くからしかね、よくよーく見たこと無かったもので、 …服の装飾はえらい殺意を持っていらっしゃるのですね。
ハグどころか握手しただけでもあたしの体は欠けそうだ…
「あいつらはな、わざわざ怖がらせるような事言ってるけど、良くしてくれる奴に酷い事するわけねぇだろ」
「えっ…、あ、はい…」
そうやれやれな感じで話しているウルフだけど…
…ちょっとミュウツー、彼はどうしちゃったの…?
皆から聞いてる印象とはだいぶ違うみたいだけど…、本当はクールじゃなくてファニーなタイプなの…?
感情分かりやすいのは確かにチンピラらしいけども…
「ファンだろうが違かろうがサボテンと言われようがチンピラと言われようが、好きなら嬉しい、そういう事だろうな」
「そうそう! まぁこれから仲良くしようや」
「…」
そういきなり肩を組まれると、バシバシと叩かれた
…あたしの好きなウルフはこんなんじゃない!
もっと落ち着いてて大人で余裕があって、あたしがファン的な意味で好きですって言っても「あぁそう、そりゃどうも」って適当に流してくれるクールなタイプ!
こんな数年後に思い返して黒歴史になりそうなはっちゃけ陽キャ系じゃない!
「あのー…、あたしは別に仲良くしたいとかではなくて…」
「はぁ? 照れてんの? ほら大好きな俺様が仲良くしよーって言ってんの」
「こ、怖すぎる…」
この見た目でその口調は怖すぎる。
ブッコロの前に相手で遊んでるかのような口調だ
「なんでー、俺様怖くないって、優しいって、じゃぁちょっと遊びに行ってみるか?」
「と、とんでもない! それはそれで申し訳ない…!」
「遠慮しなくて良いぞ、せっかくだからサービスだ。ウルフェンに乗せてやるよ」
一ファンとしてはお誘い自体は純粋に嬉しい事ではあるが、なにせこの性格…、違和感しかない。
ニコニコしながらこちらの顔を覗き込んで来るのだが、これが本当のウルフなのか…?
大乱闘中はずっと無表情や凄んだ顔で、たまのハニカミにキュンしてたのに…、思ってたのと違う…。
「大丈夫です…、お気遣いなく…」
そうげんなりしながら彼から顔を反らした
「…お前、もしかしてフラれるの怖いからそういう事言ってんの?」
「えっ…」
思っても無かった問いかけに言葉が詰まる
それは「あたしはウルフと付き合いたいけどそんな勇気が無かった」とでも言いたいのか?
すぐに否定の返事が出来なかったものでちょっと変な間が空いてしまった
多分それが図星だと思わせたんだろう、ウルフは笑いながら人差し指で手招きした
「別に断りゃしねーから言ってみろ」
「このままあたしをそっとしておいて下さい」
「はっは! なんでだよ!」
あたしの告白(?)を聞いたウルフはそう大笑いした
「…………。」
ウルフは変なのに好かれ、ユズは変なのに気に入られたのだな。ある意味興味深い。
と、変なやり取りを遠い目で見つめるミュウツーだった…
推し活に近い
「そういやミュウツーの話だと定期的におやつ作ってるんだってな
俺様にもおやつくれよー、俺様の為に作ってんだろー?」
「だーめだめ…! お腹の中が穢れるでしょ…!」
「なんだそれ! んなわけねーだろ! はっは!」
「お前ら分かったから口論だったら外でやってくれ…」
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