夜の来訪者
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明日はマスターが作りたい料理があると、朝ご飯の係は無くなりました
たまにある夜更かしの機会、いつもなら起きられるだけ起きたりするんだけど、それをやると時差ぼけみたいな事になる。
だから今日はいつも通りの時間に寝て、ちょっとだけ遅起きする事にしました。
大好きなお布団の中、静かに目を瞑って暫く、部屋の扉が開く音が聞こえてきた
部屋の鍵は掛けて開かないようにしてるのに開けて入ってくるとは…、これはもうあの人しか居ないわ…。
その輩はこちらまでやってくると、近くで音が止まった
「…なんですか? 何用ですか?」
「なんだよ、寝てねぇのか」
ちょっと目を開いて確認すると、まぁまぁの距離からこちらを覗き込んでるのはウルフ
こちらの状況を確認すると、なんの躊躇いもなくベッドに乗り込んできた
定期的というか3日に2日は来訪をする
それも謎なんだけど、鍵を開けてくる方が謎で問題だ
何故部屋の鍵開けられるのか、この部屋の鍵でも持ってるのか、それは聞いても答えてくれません…
あたしの持ってる鍵の数は減ってないから、知らぬ間に盗んで知らぬ間にコピーしたとしか思えない
真ん中で寝ていたあたしを端へ追いやると、図々しくも真ん中らへんで寝転び始めた
あたしのお気に入りの超デカの柔らか枕、持ち主でもないくせに独り占めの占領だ
「ちょっとー…! あたし寝るんだから邪魔しないでよー…!」
「疑問多いがこの枕は最高だな」
「そんなに気に入ってるなら買ってあげるよ…、そんな高いもんじゃないし…」
「要らねぇな」
なんだよ…、枕気に入ってるわけじゃないのか…?
ソファーにもなるし、背もたれにもなるし、枕にもなる便利なアイテム
特に食べ過ぎでお腹が苦しい時の休憩には必須だ。うっぷうっぷしない丁度良い体勢で受け止めてくれるのです…
まぁそれは良いとして、特に用事は無いのに毎回なんなんだ…?
やって来てはあたしの寝場所を奪って、気が済んだら帰ったりここで寝落ちしたり、わけが分からない
…ちなみにこんな事してる彼だけど、別に付き合ってるとかではない。全くの他人の部屋に来ています
何時もは寝てる時に来る事が多くて、あんまり意識はっきりしてなかったり記憶無かったりするけど
今日はあたしの頭はしっかりしてるから、ちょっと雑談をしてみようと思う
「あんたいつもいつも何しに来てるの…、来ても何かするでもなく…」
「暇潰しだ。 …何をするでもなくってお前は何かされたいのか?」
「違うって…! 別に仲良しさんでもないし、よく知ってるわけでもないけど、理由無い行動する人には見えなくてね…」
「暇潰しだからな」
この暇潰しって言葉だけど、なんとなく毎回聞いているのは覚えている
寝起きだろうがなんだろうが毎回「なんで来るんだ、何用だ」って文句は言います。その時の返事は決まって「暇潰し」
暇潰しなら他に良い方法や物事があると思うんだけど。例えば大乱闘するとか、ウルフェンで遊ぶとか…
「他のお姉さんの所に行ったらどう? ベヨネッタとかパルテナとか、遊んでくれそうだけど」
「ノーサンキューだ」
「だからってなんであたしの所なの…」
「はっは…!」
…皆には分からないだろうな
ある日突然赤の他人、しかもめちゃ厳ついおっさんが部屋に侵入してきた恐怖を。
翌日は震えてたもんだけど、眠い所の襲撃で最初の頃は元気良く追い返せなかった…
見た目は「関わったら刺される」と思ってしまうくらい危ない感じだけど
文句を言おうが押しのけようが文句も言わない、怒る事もない、抵抗反抗もしない、彼はただ笑っているだけ
そんなのを繰り返し見てたら前みたいに危険物には見えなくなるもので、気が付けば彼に慣れてしまった毎日だ。
試しにウルフ自体をデカ枕と見立てて、寄りかかるというか覆いかぶさるというか…、しがみついたけど彼はなーんも言わなかった。
彼の呼吸に合わせてほんの少し浮いたり沈んだり…
「…寝辛いの!」
「ハハッ、そりゃそうだろうよ」
「…ちなみにしがみつかれてるのウザくないの?」
「別に」
「…そう?」
クロスしてる形になってるとはいえ、結構乗っかって体重掛かってると思う。でもウザくないのか
…今度は目の先にあった彼の尻尾を触ってみよう
時々ゆっくりベッドを叩いてるみたいな動きをしてるけど、これは流石にウザいのでは?
あたしには尻尾が無いから尻尾はどういう存在なのかは分からない。ので一応丁寧に優しく掴んでみた
フワフワモコモコで素晴らしい触り心地
まさか本当に触れるとは思ってなかったし、感動して暫く撫でてたけど彼はやっぱり何も言わなかった。
…これで文句言われたり止めろと言われたら、次回の来訪時から追い返す手段に出来たんだけど目論見外れたようだ
「ウルフっていつ寝てるの?」
「あー? 明け方前には寝てるぞ」
「そ、そうなの…? ここで寝落ちしてるの何回か見てるけど…」
「その日は疲れてたんじゃねーの? あと暇だったら寝落ちするかもしれないが」
「暇潰しに来てるのに暇してるの」
「はは、そうだな。大体お前は寝てるしな、ちょっと起きてもすぐ寝るし」
「当たり前でしょ…、朝早いんだから…。
ウルフって朝ご飯来るの遅い上、不機嫌そうに見えてたアレは寝起きだったからなのね」
「…そうだな、遅寝遅起きでも朝ご飯に来ないとマスターに食堂まで摘まみ出されるからな」
「それはそれで面白いかも」
お昼殆ど見掛けないし日中寝てるとの噂もあるくらいなんだけど
この話を聞く分に彼は本当に午前中は寝てるのかもしれない。
「今の時間とかはあんまり眠くならないの?」
「あんまりな。 …慣れかもしれねぇけど」
まぁ人の寝る時間なんてその人が決めれば良いから、あたしがどうこう言う事はしないよ
ただ、寝てる所に無理矢理「朝ご飯食べましょう」とか、あたしは無理だわ…。
「ちなみにあたしが寝てる時、部屋物色してないよね…?」
「…した事はある」
「あるのかよ! 無駄に正直だね…! だったら無いって嘘吐いて欲しかった…! どこ物色したの…?! 全然気が付かなかった…!」
特に異常ありませんと天井を見ている彼ですが、あたしからすると大問題である。
皆にもあると思うけど見られたくない物が何個かありましてね…
バシバシと彼の胸の辺りを叩くと、ウルフはどこかを指差した
その先を確認するとあたしの洋服とかが収納されているクローゼットだ。
「そこと」
…多分それはパンツを探してたんじゃないか?
自分で引くほど自分は驚かなかったけど、彼はパンツ好きだからそれを求めて起こした行動かもしれない
「そこと」
次に指差したのは小さな本棚
そこには好きな本とか、鍵付きの日記帳がある。日記帳と言っても日常のメモに近い
とはいえ見られたくない物も書いてるも事実。
ただ三桁の鍵があるから覗かれてないと思う、鍵に異常があった事はありません。
「この下」
次に指差したのはこのベッドの下
反射的に体を起こして彼のお腹に鉄槌を加えた
全く遠慮無せず全力で拳を振り下ろす、何度も叩きつけるように振り下ろす、聞きなれない音がするけど関係ない。
思いっきり食らってるウルフは飛び起きると腕を掴まれた
「悪い…! 悪かったって…!」
「お前は一番触れて欲しくなかった場所を物色したのか」
大概秘密にしたい物事はベッド下に封印するのが相場と思っていたけど…
…いや、逆に秘密のものがあると分かっていたから物色したのかもしれない。
とにかく怒りや恥ずかしさ、虚しさ等、いろんな感情に襲われた
…でもあたしの秘密の物事を見たとして、その後も彼はいつも通りに接し過ぎではないか? あたし何も気付かなかったよ?
隠し事してる感じはなかったし、来訪も夕ご飯の時も本当いつも通りだった。
茶化したり疑問に聞いてきたり確認してこないって事は、多少は申し訳ないって思ってるのか?
そうでも思わないとあたしの心が正常で居られない
その物事について何も語らないなら、まだ大丈夫な気がする…
最後に一発だけ拳を入れると、ウルフは苦しそうな声を上げた
…それでも彼は怒らなかったから、相当申し訳ないと思ってるかもしれない。
「はーあ…、あたし本当に怒ってるからね…、本当に許さないからね…」
「悪かったって言ってるだろう
今度お詫びにマスターが作った街に連れてってやるよ、時間内なら何でも買ってやる」
「えっ!? 本当?!」
なんか思ってもなかった報酬(?)がやってきた!
それはつまり制限時間内なら何を買おうともウルフの奢り!
前にプリンナナと遊びに行った時いろんな店見たんだけど、可愛い物気になる物いっぱいあったんだよねー。これは良い話だね!
………良い話なんだけど、そのレベルに値するほどあたしの秘密は彼的に大きい物だったんだろうな
もしくはそれくらいしないとあたしは割に合わないだろうと思ってるんだろうな。 …その所はちょっと虚しい感じになるけども。
「本当だよね? 嘘じゃないよね? あたしミュウツーと仲良いから嘘だったらすぐにわかるよ?」
「嘘じゃないさ」
「じゃぁ5分10分だけじゃないでしょうね?」
「まさか。そんなんでお前の気が済むのか?」
「済まないから言ってるんだよ…! よしよし、絶対に破綻させてやるからな…」
「はっは、やってみろ」
もちろん破綻させようは嘘なんだけどお返しはしたい。どれだけあたしが嫌な思いをしたのか分からせたい。
明日早速プリン達を連れて街に出かけて下見だ!
ついでに二人の欲しい物も買ってあげよう。
良いと良くないの感情が行ったり来たりしてるけど、とりあえず良いイベントではある。
のでお礼の気持ちを込めてお腹に抱き着いてありがとうを連呼する
それが面白かったのか、彼は大笑いすると頭をポンポンと叩いてきた
あたしのお礼したい気持ちが済んだ後、再び寄りかかってだらだらと彼の呼吸を感じる
「ウルフっていつも誰と行動してるの?」
「…特に特定の奴は居ねーな。日による」
「そうなの? ベヨネッタが夜によくお喋りしてるって言ってたけど、ベヨネッタとは仲良いの?」
「別に。あっちが話しかけてくるだけだわ」
「えーそうなの? 三番目に好きだって言ってたけどなぁ…」
ベヨネッタがどうこう直接言ったとかは無いし噂すらないんだけど、結構二人ってお似合いでは?
二人ともクールでビューティー(?)でめっちゃ性格合いそうだ。
今のウルフの反応やベヨネッタの話からすると、ベヨネッタがウルフを振り回す感じのカップル。でも持ち前の抱擁力でベヨネッタの我儘に付いていけるというか許せているというか。
ごめんウルフの事まったく知らないけど、勝手にそんな設定付けました。
でもこんな大人な二人の恋愛も悪くないな…。見ててハラハラ楽しそう
…鍵付き日記帳にメモでもしておくか。
「じゃあベヨネッタじゃなくても良いから、なんか良い感じの人は居ないの?」
「良い感じ…?」
「そうそう、仲良しさん! 友情でも恋愛でも良いから! 協力出来そうならするよ!」
「…」
これは聞き出せたらプリン達への良い話のネタになりそうだ。
もちろん茶化しじゃなくて協力寄りの話にはするつもりだけどね。人の恋路を邪魔するのはダメだ。
でもプリンに話したら絶対ピーチにも回るから、即行で結果出るしあたしが広めたってバレるな…。
それこそ激おこになりそうだからやっぱり話すのは止めた方が良いね
暫く返事を待っていたのだけど、何も言わず細い目でこちらを見るウルフ
あんまり触れて欲しくなかった話なのか? とちょっと気まずくなってきたら、彼は何もなかった様にまた天井に視線を戻した
「………そういやお前寝なくて大丈夫なのか?」
「…えぇ? …明日の朝ご飯はマスターが作るんだって」
なんか話は流れてしまったが気まずかったので良かったかもしれない…
とりあえず話を合わせておこう…
「そうなのか、だから起きてんの」
「いや、寝るつもりだよ。ご飯作り無くなったからって遅くまで起きてたら、ご飯作り復活して起きなきゃいけない時に辛くなるからね」
「そうだな」
「ですから! 早くそのデカ枕を返してよ…! 寝れないよ…!」
「いつもそこら辺で寝てるだろ、枕なくても」
「それは眠いからというか寝てたからでしょ。今は目覚めてる状態なのよ、枕無いと寝れないよ…!」
「へいへい、分かった分かった」
やっと思いが通じたのか、彼はベッド中央から退いてくれました。
まだ彼も居るし完全に返ってきたわけじゃないけどマシになった…
という事で早速枕に頭を乗せて布団を被った
「…というか何時帰るの、存在が気になって寝れないのだけど」
暫く大人しく彼を背にしていたけど、寝返りをして彼の方に向き直る
今までは日常に近くて感覚麻痺してたけど、よくよく考えると他人の男女が一緒に寝るって問題あるよね。ピーチとか知ったら爆発しそうな内容だけど。
しかしウルフはとっても平気そう
頭の後ろで手組んで足も組んでリラックスしてるようにしか見えない
「俺様の気が済んだら出ていくさ…」
「そうなの…? …本当一体何しに来たんだ」
新たな部屋荒らしも出来ないし、あたしに地雷踏まれた(?)し、暴力を振るわれたかと思えば貢ぐ約束してしまうし、特に今回は失うものが多いのではないか…?
「今回の暇潰し、ウルフに良い事無くない?」
「…そんな事はねぇな」
「そうなの…? …ちょっとよく分からないな。 …まぁそんな事言ったらそもそも何でここに来るんだって話なんだけど」
何周したか分からないこの疑問
メリット云々の前にそもそも何であたしの部屋に来てるんだって話。
「他の人の部屋に行かないんでしょ? 男女関わらず」
「そうだな」
「暇潰しなら他に選択肢あるんじゃないの? それこそ早寝は良い選択だと思うけど」
「そうだな」
「………でもまた明日以降も来るんでしょ?」
「そうだな」
「なんでだ。あたし殆ど寝てるから暇潰しにならないでしょ…、本当に暇潰しになってるの…?」
なんか会話が成り立たないというか、言ってる事と現実が矛盾しているというか…
疑問半分呆れ半分でウルフの様子を見ていた所、ふと彼はこちらに顔を向けた
「暇だから」
…あたしの質問の答えにしてはそれはちょっとズレてる感じ
それとついさっきとは違う雰囲気、表情、声色。 …感情が違うのだろうか? 結構な真剣な目つきだけども。
「怒ってる?」
「怒ってねぇよ」
怒ってる感じはなかったけど、同じ質問にしつこいと思って怒ってるのかも分からない。
万が一の為に質問したけどやっぱり怒りの感情ではなかった
でもさっきの返事だけは凄い違和感があるんだよね
別に暇潰しってのは一貫してるし、その言葉は言葉通りだとは思う。一応ね
あたしの勘違いだったらそれで良いし絶対に口にはしないけど、もしかしてウルフはあたしに気があるんじゃないか?
さっきのあたしの質問の答え
言葉は「暇だから」だったけど、今振り返ると「好きだから」って言ってる様に感じたよ?
何かワケがあって好きという表現を暇潰しみたいな表現にしているというか。 …だからなんか違和感があるんだ。
彼の今までの言動を思い返すと、とても「暇潰し」で片づけられる事じゃないのよね
でも全部「好きだから」に変換すると、まだそっちの方が辻褄が合うというか…
好きだからあたしの部屋だけに来るし、好きだから勝手に部屋漁るし、好きだから身を削る様な約束をするし、好きだから「他に誰か良い人居ないの?」と言われてあの反応だったんだ。
…まぁあたしの勘違いだったらミュウツーに馬鹿にされるけど
この件は明日ミュウツーと話しをしてみよう…。
このカンが当たってるよりも違った時の方が後々問題多そう。ウルフはあたしの事が好きなんだって一人で語ってる愚か者にはなりたくないな。
「まぁいいや…、ちゃんと気が済んだら部屋に帰るんだよ…?」
「へいへい」
一応了解した返事が来たけど果たしてどうだが…。 寝落ちを何回かしているのでね彼は…
相変わらず天井を見ているウルフ
彼はいったい何を考えているのでしょう。
また寝返りをして彼を背にする
存在は気になるけど、あたしも眠くなったら自然に寝るだろうと目を瞑った
夜の来訪者
翌日、美味しい朝ご飯を食べて良い気分になる
その後ミュウツーとのお喋りの為に中庭へ向かった
「鋭いな、らしくない」
「一言余計なのよ…!」
「確かにお前に好意あっての行動だ。最初から飛ばすと怖い思いさせるだろうから「好きだから」を「暇だから」に変換して柔らかくしているのだ。
好きだから夜な夜な向かうし、好きだから接触されても気に障らないし、好きだから情報求めて部屋を物色するし、好きだからお詫びをするのだ」
「嬉しありがたな事なんだけど、途中途中ダメなんだよね…」
「それにしてもお詫びと言ってもお詫びになってないな。
お前の好みの調査も出来るし、懐の深さのアピールも出来るし、お前の時間もご機嫌も取れるしwin-winだ。
初めの頃は抵抗弱くなる寝込み前狙って存在を慣らしているし、奴の思い通りにお前は動いているぞ」
「怖い事言わないで…! …というか何でウルフが部屋の鍵持ってるの? どうやったの?」
「お前の荷物から盗んでスペアを作ってただけだ。だいぶ前に部屋の鍵が無いってここに飛び込んできた事があっただろう。その時だ」
「えっそうなの?! なんでパクられた事教えてくれなかったの?!」
「鍵の場所を尋ねられた時、すでに用済みで食堂に置いてあったからだが…。」
「あぁ…、場所しか尋ねられてないから場所しか言わなかったって事ね…」
「まぁ悪いようにはしないだろうから品定めしてやれば良いのでは?
とりあえず破綻目指してさっさとプリン達と下見に行くと良い」
「そうだった! うわー買い物楽しみだなー!」
「…お前は簡単単純だな」
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