ちょっと遊びましょ
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「珍しい事するんだね、マスターさん」
日中、プリンとナナと三人で館内を歩いていた時、ふと窓の外を見たナナはそう言った
釣られて外を見てみれば雨が降っていた。それもまぁまぁな土砂降り
この世界はほとんどマスターが作ったものなのでもちろん天気も決められるらしいのだけど、今日は雨なのか。
毎日毎日晴れだったんだけども
「おい見ろよ…、あいつらが原因だろ」
窓に張り付いてるプリンがある方向を指差す
その先には雨の中ではしゃぎ遊んでいるヤンガーズが居た
近くの屋根がある場所ではロゼッタママもいるようだ
「あぁ、雨で遊びたいからマスターさんにお願いしたって事ね」
「そうそう、じゃないと急に雨を降らせるわけないだろう」
「せっかくだから二人も遊んでくれば? 滅多に無い機会だし、今日ならあの遊びが許されるんだよ」
普段は見られない光景、どんどん泥んこになっている子ども達です
折角だから遊んでこようと結論になったようで、準備の為に二人はそれぞれの部屋へ向かった
あたしは一人の自由時間が出来ました
たまにはまったり何もしないのも良いかもしれない
一応暇潰し用として図書室から一つ本を借りてきた
大きな渡り廊下はガラス張りで外がよく見えます
いかにも休憩スペースですと言わんばかりの観葉植物やソファーが置いてあるので、そこでのんびりしよう
誰もいない渡り廊下は天気のせいで少し暗い
贅沢に一つのソファーの上で寝転がって外を眺める
この少し聞こえる雨音も癒し効果抜群だ
読もうと思っていた本は枕にしようかね、そしてここで昼寝と…
とかそんな事を考えて暫く外の雨を眺めていた、雨音に集中していた
突然頭上から獣が吠えたような声が降ってきた
凄く吃驚して飛び跳ねてソファーから転げ落ちる
何だ何だとそちらに顔を向けると、とても大笑いしているウルフがいた
「び、びっくりした…! ウルフか…」
「はっは! 凄い驚いてたなお前」
「そりゃそうでしょ…! 思っても無い事なんだから…!」
身体を起こして痛むおしりを擦る
まったく派手に落ちてしまった物だ
再度ソファーの上で横になると、あたしが使っているというのに座ろうとしてるのか足を叩かれた
仕方ないので足を畳んで座れるスペースを作る
「お前相当暇なんだな」
「なんかプリン達が外に遊びに行ったんだよねー」
「は? この雨の中を?」
「そうだよ、ヤンガーズが雨遊びというか泥遊びをしてるというか」
「信じられねぇな…」
「ウルフとか泥だらけになったら後の手入れとか大変そうだね」
雨の日の毛並みとかどうなるのか色々彼に質問していたのだけど
途中、あたしが枕にしていた本に気付いたのか、ウルフはそれを取り上げた
「…恋愛テクニック? …お前こんなのに興味あるのか?」
「え? 面白くない? 題名凄い笑えるんだけど」
「題名に面白さを求めるのか?」
と、彼は疑問そうにその本を開いてパラパラとページをめくる
「なんか「そこまでしないといけないのか」って思っちゃってね」
「…まぁ確かにそれは面倒臭ぇな。
なんだよ、てっきり誰か気になってる奴でも居るかと思ったが…」
「仮に居たとしても言うわけないでしょ…」
「お前だったら協力してやっても良いぜ、興味あるし」
「協力って、ウルフだったら早速直接相手に言う未来しか見えないわ…」
「分かってるじゃねぇか」
「それは望んでる協力じゃないのよ…」
「なんだ、やっぱり居るのか?」
「いや、居ないよー」
「なんだよ、そりゃ面白くねーな」
なんかブツブツ文句を言ってるウルフから視線を外へ戻す
…ガラス越しに本を読んでいるウルフが薄っすら見えた
………あぁ、良さそうな人居るじゃないか。
身体を起こしてウルフの方を見るけど、彼は本を見たまま
「じゃぁそれがウルフだって言ったらどうする?」
結構自分的には真剣に言ったつもり、ジョーク感を無くすために。
いよいよ彼は何も言わずだがこちらに顔を向けた
「…どうもしねーな」
「なんだその返事、面白くないなー…! あたしは暇なんだよ…! 構ってくれよー…!」
と、特に思っても無い事を言う
暇でも暇でなくても、あたしはどっちでも良いのです。
多分あたしの発言が嘘なのも分かってるんだろうけど、それにしてもこの返事はまったく面白くない
文句垂れながらソファーに沈むと、本に目を戻したウルフはまた大笑いする
「ぐだぐだうるせぇな…」
まぁこのつまらんやり取りすらも、良い暇潰しにはなってるんだけどね
なんかウルフはえらい本を読みこんでいる様子なので放置
まったく止む様子の無い雨だけど、プリン達ヤンガーズは何時まで遊ぶのだろうか?
あんまり長く雨に打たれてたら風邪ひいちゃうだろうし、多分すぐ終わるとは思うんだけど
終わったら皆でお風呂かな? 泥落としと温まるために
…だとしたらまだこの暇時間を堪能できそうだ
なんか眠くなってきたかもとか思って目を瞑る
話し声も無く雨音を聞いてると、本当にリラックスしてる気がする
「…仮にさっきの言葉が本当だったとして」
ウルフの言葉で目と頭が覚める
なんだとそちらを見ると目が合った、気が済んだのか本は閉じられている
「お前は俺様が怖くないのか?」
「怖い…? どこが…? 割と優しい方だと思ってるけど…? プリンもナナも怖くないって言ってたし」
「まぁ風船は弄りの延長と思ってるだろうし、相方は無差別主義者だからな。 …他のガキよりはそうなのかもしれねぇが」
「ウルフは話の通じる悪者だから大丈夫だよ。とりあえずまずは暴虐とかじゃないでしょ?
…まぁそんな事したらマスターに消されちゃうけども」
「そりゃそうだな。 …じゃぁお前は本当に俺様でも大丈夫というわけだ」
「うーん、そうだね」
途中から外に視線を戻していたのだけど、ガラス越しに確認出来るウルフはあたしの顔の方に手を伸ばしている
その手はあたしの口を塞ぐように掴んだ
…ちなみに一応行動は見えているので覚悟は出来てます
「お前らが言うほど俺様は優しくねぇぞ、人間ほど利口でもなければ手加減もしない」
「…」
いやいや、ちゃんと報告忠告してるじゃない。優しい以外の何物でもなくない?
本当にヤバイ人はそんな事してくれないのよ
もちろん100%聖人とまでは思ってないけど、数居るファイターの中で割とまともな方だよ…
あたしの役目がら満遍なく皆と関わってきたからそう言える
ウルフは興味ない人とは関わらないだろうし、面倒臭そうな人は避けてそうだもんな
どれだけここが強い我や個性でぐっちゃぐちゃになってるか知らないだろうなぁ
じーっと見ていたら、口は解放された
「それでもウルフが良いけどね、あたしは」
なんか説明の過程を端折ったら意味深な返事になってしまった
他の輩と比べたらまだウルフの方が良い・まともですよって事を言いたかった
「ふーん…、じゃぁ俺様に襲われるのも平気なの…」
と、呟くようなコメント共にあたしの腰を撫でるその手
暫く様子見していたのだけど、抵抗しないのを理解したのか服の中にも伸びてきた
なんだこのエロい雰囲気は。
…でもこれはこれで面白いのでちょっと相手してみようと思う
「ウルフって爪凄いじゃん? 今全く爪当たってないの、気を使ってくれてるからだよね? 優しいじゃない」
「………まぁそうだな」
ウルフは身体を乗り出してきて、もはや覆いかぶさってくる状態
暇していた手も服の中に入れられて、すでに入っていた手はもっと奥へと伸びる
「…お前、俺様を試してるのか? それともこの本の内容を実験してるのか?」
「いや特に何も、それにその本まだ読んでないし」
「あぁそう、じゃぁそれは本心本音というわけだ」
「フフッ…、どっちだと思う?」
「ハハッ…、そうだな…、どっちだろうな…」
それにしても我ながら酷い対応だよね
本当はどう思ってるか知らないが、白黒つけたいだろうウルフに対してあたしの言葉は灰色にするんだもん
このまま進めば物理的に逃げられなくなるだろうから
いったん身体を起こして、逃走可能状態にしておこう…
相変わらず服の中を弄っている手は、痛み所か心地良さを感じさせてくれる
あんな爪なのにどうなってるんだ…。
「あはは、くすぐったい」
あたしのスリル欲求は留まる事を知らず
目の前にあるウルフの顔をわしゃわしゃと掻き撫でる
顎下や鼻上とかもわしゃわしゃしていたら、彼は顔を反らしすぐにあたしの手を甘噛みをした
それがなんか面白くて、手を抜いてそれを繰り返す
これは完全にワンちゃんじゃないか…
…それにしてもこんな事して許されるのか? プリンとかやったら吹っ飛ばされそうな戯れだけど。
でも何を思ってるのか、ウルフは戯れに付き合ってくれているのだ、それは紛れもない事実
この暇潰しとっても楽しいなぁ
正直限界が来るまでずっとやってたい、どこまで出来るか試してみたい
凄いドキドキするし、さっきまでの平和ボケしてた時間が嘘みたいだ。
「ちなみにウルフはあたしの事恋愛対象なる?」
「…どっちだと思う?」
「あっはは! どっちだろうなぁー…」
正直そんなのどちらでも良いよ
というか、こんな戯れに付き合ってくれてるのが答えでしょ
こちらの様子を伺ってるのか何なのか、ウルフはずっとこちらから目を離さない
その眼差しがまた、楽しい緊張感を増幅させてくる
「あっはは…、凄いスリルだわ…」
「…あんまり男を誑かすと痛い目に遭うぞ」
「大丈夫、ウルフにしかやらないから」
「…」
こんなバカみたいな遊び、他の人にホイホイ出来るわけがない
それこそ色んな人にやったら大問題になる気がするし、プリンやナナからお叱りが来そうだ。
ウルフはね、大人だし優しいからね。あたしの求める形で付き合ってくれると証明されました
しかも彼の人柄でよりスリル感ドキドキ感が増す
じゃぁ誑かすのはウルフだけで良いという物です
さてさて面白い楽しいでこのまま追いかけていたら、本当に痛い目に遭うかもしれない
…そう思ってしまう程、ウルフの表情は真剣そう
あんまりやり過ぎると取り返しのつかない事になりそうなので、これくらいにしておこう
力勝負になったら勝てないからね。何事も程々に。
「はいはーい、もうお終い。何事も良い所で終わらせるに限る」
「なんでだよ、もうちょっと遊ぼうぜ」
「ノンノン、今全部食べ終わらせるなんて勿体無い、また後日ね。プリン達の様子も見に行きたいし」
と、未だ服の中にある手を引っこ抜いた
あたしのお願い通り、大人しく体勢を戻して座るウルフ
…ここで無理矢理続行とかしてこない聞き分けの良さも魅力的なのよね。
「お前凄い楽しそうだったな」
「そうだね、感謝しかないわ」
「…じゃぁ今度は俺様の我儘に付き合ってくれよ」
「ん? 何?」
「また今の続きしようぜ、暇な時で良いから。 …その代わり夜にな」
「…あはは、分かった、良いよ」
それはまたスリルを味わわせてくれるという事ですね。
大歓迎だけど、変な条件付けられたから今度はより慎重にしないといけない
大丈夫危なくないって付き合って、気が付けば吞まれてたとかあり得るから。
ソファーから立ち上がってウルフにバイバイと手を振る。彼は満更でもなく笑っている
結局読まなかった本を手に取り図書室へ向かった
「ユズちゃん、誘い受けー? 意外と大胆なのねー」
「!」
突然第三者の笑い声が聞こえてきたので、なんだなんだと見える範囲で確認すると、いつの間にか天井にベヨネッタが居た
彼女は愉快そうに笑って座っている
「あぁベヨネッタか、びっくりした、何時からそこに居たの」
「ついさっき近くを通ったんだけど、狼さんが尻尾振ってたから何してるのか興味本位で見てたのよ
そしたら二人が楽しそうに戯れてるじゃなーい?」
「…あれ? ウルフ気が付かなかったのかな?」
こういう時、あたしは全く気が付かないがウルフはいち早く気が付くイメージがあるけど…
彼女は飛び降りてきて、こちらを覗き込むように身を乗り出す
「私もだいぶ慎重にしたし、彼はユズちゃんにとても集中してたのでしょう?
あんまり狼さんを虐めちゃだめよ、本当に食べられちゃうわよ」
「あはは、そうだね」
「あーでも、そんな熱い展開も見てみたーい。今夜狼さんに話聞くの楽しみだわー」
と、とても愉快そうにベヨネッタは何処かへ歩いて行った
ウルフとベヨネッタはよく屋上で喋ってると聞いてた事ある
でも果たしてベヨネッタが聞きたい事、ウルフは喋るのかは疑問多いな
まぁでも今度、彼がどんな話したのかベヨネッタに聞いてみよう
あたしも興味あるっちゃあるから
彼女を見送った後、再び足を進めた
ちょっと遊びましょ
本を返し終わった後、ヤンガーズが遊んでいるであろう外へ出る
皆見事に泥んこなんだけど
その中にもはや泥団子というべき子が二人…
それはプリンとカービィ
「あれユズちゃんじゃないか、ユズちゃんも泥遊びするか?」
「いやいや、さすがに」
「たまには一味違う遊びも良いですね、新鮮でみんな楽しそう」
「確かに、凄い楽しそう」
これ皆お風呂まで行くの大変そうだな
そんな事を思いながらロゼッタママの隣に座り込んだ
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