怖い人
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「ちょっと待てって」
「…」
あー、大乱闘大敗した…。
なんか上手くいかないんだよな
次はこう来るからこうしなきゃって分かってるのだけど、全く追いつけない
嫌々大乱闘したのに、結局同じような事を繰り返して悲しい思いをする
嫌な事を嫌だ、やりたくないと言えないあたしも嫌いだし
ハメ技とかの練習台になってるのも嫌い
あたしはただのサンドバッグじゃないか…
後から追ってきていたウルフに腕を掴まれた
咄嗟に反対の腕で押し返そうとしたけど、あっさりと止められる
さっき大人気無く転送室を飛び出してしまったが
出て来る際に「また慰めてやるか」という馬鹿にしたコメントも聞いているのだ。話にならない。
「そんな熱くなるなって」
「放っておいて!」
今までにない勢いで叫んだら、ウルフは何も言わずに離してくれた
自分の部屋に戻る為に階段を登っていたが
さっきまでの出来事が蘇り、叫び声をあげて手すりをパンチをする
「いった!」
手が痛くなって、思わず後退り
足を踏み外したらしく大きく身体が傾くと、そのまま階段を落ちて行った
背中や頭に痛みを受けながら、一階の廊下に逆戻りした
「おいおい大丈夫か…」
どうやら運が悪いのか、こいつにこんな姿見られるなんて…
身体は痛いし、もうどうでも良くなったので起きずに仰向けになる
見えるのは遠すぎる天井の風景だけ
駆け寄ってきたウルフは何も言わずあたしのスカートの中を覗いていた
はぁ…、あたしは何がしたいんだろうなぁ…
………あぁ、そうだ。 思いついた。
「ウルフ、誰でも良いから力持ちさんを連れてきてくれない? ドンキーとかガオガエンとか」
「力持ち…?」
「うん、誰でも良いから」
パンツに満足したらしいウルフはスカートを戻すと、そのままお姫様抱っこされる
「救護室か?」
「ウルフがしてくれるの、そのままマスターの所まで運んで欲しいんだけど。ベルのある部屋」
「マスター?」
という事でウルフにマスター呼び出しベルのある部屋に運んでもらった
背中や頭が特に痛いけど、転げ落ちる時足もやってしまったようでジンジンする
いつもみたいに歩ける感じはしないけど、ゆっくりなら歩けそう
抱っこから降ろしてもらってベルを鳴らす
「どうしたー!」
と言いながら、天井の壁を壊してマスターがやってきた
「あぁマスター、今時間大丈夫? お願いがあるんだけど」
「時間大丈夫だぞ、どうした?」
「あたしを作り直してほしいの、Miiファイター」
「え?」
あたしの話を聞いていたのか、天井の穴からクレイジーも出てきた
凄い指が滑らかに動いているが、あれは多分驚いてる状態
「どーしたんだよユズー! 作り直してってー!」
「そのままの意味だけど。リセット、リメイク、再構築」
「作り直すってお前、記憶は持っていけないんだぞ?」
「どうでも良いよ。今度は男性で作って、強いファイターにして、ついでに料理上手」
「落ち着けお前、何があったのか話をしてからだ」
「いいや! 今やって! やる気がある今やって!」
「事情が分からないから話をしてからだ…!」
マスターと言い争いみたいになると、手の形と動きだけでアワアワしてると分かるクレイジー
マスターとあたし、交互に向いていたけどあたしの方で止まると近づいてきた
「ユズー、誰かに嫌な事されたのー? 代わりに俺がお仕置きしてくるよー?」
「そんなのはどうでも良いんだよ、新しいMiiファイターに任せておけば」
「そ、そんなー…」
「おい」
強気で言っておけばどうにかなるだろうと思っていたけど
突然肩を後ろに引かれると視界が変わる
言うまでもなく犯人はウルフなんだけど、マスターと喋っているので邪魔をしないで欲しい
「なんですか? 今マスターと喋ってるんですが」
「お前それマジで言ってるのか」
「冗談でこんな相談しないよ、馬鹿にしてるの?」
「それは聞けない話だな。お前、前に俺様が好意伝えたよな、まともな返事も無く消えんのか」
「知らん。あたしには関係ないわ」
「関係無ぇわけねぇだろ! お前に言ってるんだぞ!」
「あー、どうでも良い、吠えれば良いと思ってる所が嫌い、目が怖いのも嫌い
毎回ボコボコにされたあたしを慰めるとか言ってる所も嫌い。これで満足ですか」
「まぁまぁー、落ち着いて二人ともー」
まるで空手チョップみたいに、あたし達の間に割って入るクレイジー
一旦暴君から離れる事が出来た、感謝です。
気を取り直してマスターの方を見ると、彼は微動だにしていない
「そんな要望をファイターからされたのは初めてでな
特にユズはちょっと特殊なファイターだから、今の発言で思い当たるのがあってな…。とりあえず経緯を教えて欲しい」
「経緯? 大乱闘楽しくない。ボコボコにされるだけじゃん!
だったらあたしを作り直して、もっとまともに戦える状態にしてよ!」
「…すまないなユズ、もうちょっとまともな形にしてやれなくて
元々はお手伝いさんだったけど、せっかくだからとMiiファイター枠を作ったが、元々お前自身が戦闘向きじゃないし、ちょっと心配してたんだ。
だから数種類の形を用意したんだが…、あんまり意味無かったのか…」
「いや、マスターは悪くないでしょ。
今度新しくMiiファイター作るとしたら、あたしよりは戦闘得意になるんでしょ?」
「ま、まぁ、今度作るならちゃんとファイターとして作るから、そうかもしれないが…」
「いった!」
突然後ろで大声を上げたクレイジー
飛び跳ねるように宙に浮くと、手? 身体をぶんぶんと振っている
塀が無くなったので、またズカズカとウルフがやって来てしまった
「駄目だって言ってんだろ。
風船共はどうすんだ、賛成するわけねぇだろ」
「え、プリンとナナに話はしてないのか? 特に仲が良いんだろ?」
「どうでも良いよ、止められるに決まってるんだから。
済ませちゃえば誰もどうしようも無いからそれでいいや」
「ユズ落ち着いてー…! ちょっと自棄になってるってー…!」
そう降りてきたクレイジーに優しめにギュッと握られた
「時間を置いたら落ち着くってー…」
「とりあえず、プリンとナナにもその話をしてくれ。その二人とウルフを納得させられたならリセット考える」
「三人が納得するわけないでしょ…! あたしの気持ちは無視ですか…?!」
「落ち着け…、ユズの気持ちも分かるし叶えてやりたいけど、私からすると他のファイターの気持ちも大事なんだ。少なくともウルフは猛反対してるじゃないか。
最近大乱闘でダメージハンデとかチャージ切り札とか、ブーストハンデとか作ってみたから使ってみて欲しい
もちろん無理して大乱闘しなくて良い、ミュウツーとお喋りするでも良いし、ナナにお菓子作り教わるでも良いし、私が作った街に出かけたりでも良い。
一週間くらい待ってみてくれ、それでも気持ちが変わらないならそれは本気だから私自ら三人を説得する」
「…」
そんなの無理に決まってるじゃん…
特に説得困難な三人だし、一応あたし側にも立ってくれたけど、一週間なんて待ってたら気が変わりそうだなぁ…
なんの希望も通らないのか、あたしは。
思わず大きなため息が出た
「おいユズ、足は大丈夫なのか?」
「足? どうかしたの?」
「そいつ階段から落ちてんだよ」
「えぇ?!」
ウルフの話を聞いたクレイジーは慌てて離れていった
「怪我してるなら大変だろうし、なんか気になるメニューがあってな、暫くは私がご飯作る。
その間ユズはリフレッシュ休暇でもしていてくれ」
「だ、大丈夫ユズ…、足痛くない…?」
「俺様が救護室に連れて行く」
突然身体が浮くと視界が変わる
再びウルフにお姫様抱っこされると、彼はそのまま部屋から出て行ってしまった
やってきたのは救護室
怪我した人とかが来る部屋で、薬とかの保管場所だ
ソファーの上に下ろされたので身体を起こして座る
…丁度ここに来たのなら、なんか湿布とかもらっておこう
ウルフは真っ直ぐに箱が連なる棚へ歩いて行った
「お前、足くじいたりしたのか? 歩き方おかしかったが」
「あぁー…」
なんか我ながら返事が適当だ、あんまり興味が湧かない事項というか、どうでも良い件というか
早速湿布を探そうと思ったけど、ウルフがらしきものを持ってきた
邪魔な靴を脱がされると、ちゃんと違和感ピンポイント右の足首らへんに湿布を貼った
…まぁ変な歩き方を見たって言ってたから、どっちがおかしいかは分かるのか。
「ほかに怪我は?」
「無い」
「どっか打って痛いとかねーの?」
「無いよ」
頭や背中の痛みはだいぶマシになっていて、気になるほどでもない
どっちかと言われれば足の方が気になる状態だった
暫く細い目でこちらを見ていたウルフだけど
「あぁそう」と小さく呟くと、余った湿布を戻しに行った
湿布はゲットしたし、ちょっと安静にしてれば良いか
軽く足を動かして状態を確認、立ち上がって歩けるかの確認
まぁ引きずる状態になるのは致し方なしか…
いつの前にか片付けを済ませていたウルフ
程々の所で立ち止まって腕組み、こちらの足の様子を見ている
「…あんまり無理すんじゃねぇぞ」
「大丈夫大丈夫、どうもありがとう」
とりあえず時間は掛かりそうだけど、自分の部屋で引きこもろう、寝よう
さっきの感情の激動はとても疲れたのです…
階段から落ちて体を酷使したのもあるだろうが、ただ喋っただけなのにこんなにも疲れるのか
ゆっくりと出口に向かい、扉を開いて廊下に出る
「おいおい、何処行くんだよ」
「部屋に戻る」
「あぁ? 風船共に会わなくて良いのか? 運んでやるけど」
「要らないよ、一人にしてくれない…?」
「駄目だ、孤独はろくな思考にならねぇ」
「大丈夫だって…、そんな心配しなくても…」
あっという間に追いつかれると、肩を掴まれた
当たり前だけど動くことが出来なくなる
彼は声は荒げてないが、ボリュームが大きい…
意見押し通したいから強気。こっちの意見を聞く気がないんだろうなぁ
「駄目だと言ってるだろう、お前を一人にはしない」
わざわざ回り込んで顔を合わせるんだもん、行動も怖いよ本当に
またまたその目が怖くなって顔を反らす
顔を向けた先、こちらを見ながら目が点になっているプリンとナナが居た
「おっさん…、いよいよ本気になったのか…?
確かに前々からユズちゃんを好きだってのは見てきた聞いてきた。つまり、もう我慢の限界というわけだ」
「プリン落ち着いて…
大乱闘するって言ってたけど、部屋に居なかったから探そうと思ってたんだよ。お疲れ様ー。もう終わったの?」
「終わったよ、ちょっと足挫いてね、あんまり早く動けない」
そう駆け寄ってきた二人
何も知らないから、いつもの感じだなぁ
視界の低いプリンはあたしの足首の湿布に気が付くと頷く
「なるほど…、おっさんと救護室にいたんだな」
「あぁじゃぁ本当に暫く大乱闘出来ないね…
ピーチさん達からお菓子貰ったからリビングでゴロゴロしようよ」
「分かったよ」
一応プリン達が付いてるからか、ウルフは離れていてくれました
あんなのと一対一は無理ゲーだ…。
足がおかしくならないように慎重にやってきたリビング
プリンに言われて近くのソファーに座る
なんとも贅沢にテレビを見ながら漫画を読んでいたのですか…
テレビ画面にはなんかコメディっぽいものが流れていた
コメディにも興味無いし、漫画にも興味無いし、顔を上げて天井を見ていたら視界にプリンが入ってきた
「ユズちゃん、とりあえず話を聞こうか?
また皆にボコボコにされたのか? 自棄起こしたら足挫いたと見た。」
「うーん、そうだね」
「もう大乱闘しなくて良いよ、そんな辛い思いしてまでする事じゃないし。優し過ぎるよユズちゃん
たまには「面倒くさい」って断っても良いんだよ?」
「なんか強引で怖いんだもん…、あの目…」
「おっさんだろ? まったくあいつは、他に手段があるだろ…
この件はちゃんとマスターに報告して、クレイジーにボッコボコにしてもらおう」
「別にいいよそんな事しなくて、ウルフに限らず皆は普通に大乱闘してるだけでしょ、弱い人狙うの普通じゃない?」
「それは人によると思うが…」
「何かマスターが暫くの間ご飯作るんだって、だからお手伝いしなくても大丈夫よ」
「そ、そうなの…? 自由時間増えてラッキーだね。
まぁその間に足をちゃんと治してねって事だと思うけど」
「それにしてもおっさん、ついに我慢の限界か…?
確かにユズちゃんだいぶ焦らしてるもんな、おっさんのわりには我慢してる方じゃないか?」
「別にウルフさんを応援してるわけじゃないけど、私がリストラされた頃からだから結構長いよね。
懐かしいね、旧バージョンの転送室でよくお喋りしたねー、スネークさんとかリュカ君とかー。
プリンはWiiUDSバージョンあるのに、私が居ないのにやってられるかって殆どXで遊んでたね」
「懐かしいな! 三人ハンデ有りでおっさんを倒せるかどうかにハマってたなぁ。結局倒せんかった…」
「あれはウルフさんもどんどん本気になってたし、プリンが頑なに300ハンデを貫いたからでしょ…」
随分懐かしい思い出話だ、そんな事もあったなぁ
いつもみたいに遊んでたら、ウルフに告白擬きをされたんだよなぁ
驚いてたスネークや、目を輝かせていたプリンやゼニガメ達が思い出されます…。
何か悲しくなってきたから寝てしまおう、起きてると色々考えてしまうし
夕ご飯までそんなに時間があるわけでもない
ソファーの上で横になる
楽しそうに話す二人の思い出話を聞きながら目を瞑った
だいぶ後半の時間になって食堂に行くと、まだ多くのグループがご飯を食べていた
たまーにあるマスター製ビュッフェ
皆が美味しい美味しいと言っている
いつもなら豪華なご飯に夢中で気にならないけど
今のあたしが聞くと、あたし達のご飯に文句言ってる様に聞こえる。
そんな意図は無いって分かってるんだけど、やはりあたしは不要ではないか? あたしでなくて良いんじゃないか?
「おい、足は大丈夫なのか?」
遠くでマスターの料理を褒めたたえる人達をぼーっと見ていた所、突然目の前に人が現れる
その人は近くの椅子を引いてくると隣に座った
「吃驚した、おっさんか…、ご飯は終わったのか?」
「とっくに。 …お前それだけで足りるのか?」
寝起きであんまり食欲も無く、食べ物をつついているだけ
葉っぱとお肉が少しだけ乗ってるあたしのお皿
覗き込んできてるくらいだからあたしに言ってるのだろう
「寝起きでね…」
「そうなのか? …まぁ仕方ねぇか」
「やっぱり本格的にユズちゃんを落とそうとし始めたのかおっさん…」
明らかにニヤニヤしているであろう向かいのプリンの声色
確認してみると、楽しそうにフォークを揺らしている
対してウルフはとても長い沈黙
いよいよプリンとナナが首を傾げると「まぁそういう事にしといてくれ」と呟くように答えた
「それよりユズ、聞きたい事があんだが。この後二人きりで話がしたい」
「…」
そんなの嫌に決まってるじゃん…、またなんか文句みたいの言われるのか…?
「この後は特に予定無いし、ゆっくり話しても大丈夫だぞ」
という要らないプリンの後押し
分かったと言えば後で面倒臭くなるし、嫌ですと言えば今が面倒臭くなる
「その質問が終わったらお前は自由だ」
あたしの考えが分かってるのか、心配してるとで思ったのか
またもや後押しみたいなコメントがウルフから来た
まぁ質問に答えるくらいなら出来そうだし、都合悪ければ答えられませんって言えば良いか
「分かった、ご飯終わるまで待ってて」
量的には少ないけど、とにかく食欲が無いから箸が進まない
隣から消える気が無いウルフと、何も知らないプリンナナは楽しそうにお喋りしていた
ご飯後、あんまり派手に移動は出来ないので調理室でのお話です
プリンとナナは扉の向こうで通行止め役を買ってくれました。必要かは疑問多いけど
「それでなんでしょうか」
「お前、二人には作り直しの話をしていないのか?」
「あぁ、してないね」
「…まぁ理由は聞かないでおくが、その話はしても良いのか? しない方が良いのか?」
「面倒臭いからしないで良いよ」
現在は知られる事も無く平和なので、今はこのままで居たい
言った所で「それがあたしの気持ちなら仕方ない」となる未来が全く見えないし、知られたら二人への説得も始まる
最低一週間待ってやっぱり生まれ変わるとマスターに言えば、代わりに説得してくれるらしいので出来ればそうしたい
「そうか、分かった」
本当に要件はそれだけだったようで、そのままウルフは扉の方へ歩いて行った
彼が扉を開けるとプリンの悲鳴が聞こえてきた
様子を見に行くと、どうやら扉に張り付いて聞き耳を立てていたらしい
ウルフに何度も踏み踏みされていた
プリンは何時でもプリンだなぁ…。
湯船は駄目と言われてしまったので今日はシャワーだけです
なので自由時間がいつもより出来てしまった
プリンやナナは事情を知らないので、一人にしてくれと言ったらあっさりとしてくれた
自分の部屋で一人、ゴロゴロする
足も良くないし、ご飯も作らないし、本当にやる事が無い
身体は疲れてるはずだから寝ようと思ったんだけど目が冴える。昼寝しちゃったのもあるかもしれない
だから色々考え事してしまうんだけど、ウルフの言う通りろくな考えにしかならない…
こんな思いをしても大乱闘強くなるわけじゃないし、あたしの力にも限界があるし
こうしたいを言えないなら居ないのと同じだし、誰も肯定してくれないし
これからも今以上にウルフに絡まれるだろうし、物事がバレたらプリン達は悲しむだろうし
ご飯はマスターに任せておけば皆ハッピーだし、足引きずってても誰も助けようとしてくれなかったな
というか一週間寝尽くした所で、マスターが本当に作り直してくれるとも限らないではないか
もう意を決して言ってしまおう
やはり強いファイターには憧れるし、意味も無く毎日ご飯作るだけなら思い切って生まれ変わってしまおう!
現在0時前
時間も時間だしファイターは館内に少なめ、ほぼほぼ寝ているでしょう。
あまり早く動けないので誰にも見つかりたくない、特にウルフだけど。
ちょっとすれば足は大丈夫だろうと思ってたけど、思ったより良くなってない
そんなに酷い挫き方をしたのだろうか? 階段ゴロゴロの方に意識が行ってたから分からなかったのかな…
館内を慎重に移動する
階段もあるけど仕方なしだ、気持ちの整理を付ける為だし
やっとの思いで辿り着いたベルの部屋
という事で早速マスター呼び出しベルを鳴らした
元通りの天井だったのに、やっぱり大穴を開けてマスターはやってきた
「どうしたー! …あ、ユズか、こんな時間にどうした」
「マスター! やっぱり新しいMiiファイターになりたい…! あたしの気持ちは変わらないよ…!
皆と良い勝負したいし、こんな思いもうしたくないから…!」
「…」
これでもかと強めに意見を述べた
あんまり希望通る気がしないけど、やってみないと分からないし
話を聞いてくれたマスターは何も言わずに、あたしを握りしめる
穴からひょっこりとクレイジーも覗いていたんだけど、中へ引っ込んでいった
「ご飯もマスターが作った物の方が皆嬉しそうだし
今度は強いMiiファイターと料理上手な給食当番と二人作った方が良いかも分からん」
色々話しかけたけど、マスターは無反応だ
別に締め付けて来てるわけじゃないので不満がとかではなさそう
少ししてクレイジーが天井の穴から出てきた
「なぁなぁユズー、ウルフとはどういう関係なのー?
仲良いのー? それとも向こうからの一方的な片思いー? 告白したみたいな事言ってたしー」
「え、どうしたの急に」
「いやー、気になっただけー」
「旧バージョン用でよく遊んでなかったか?
プリンもWiiU・DSより旧バージョンで遊んでたな」
「…あぁ、…そんな事もあったかも」
やっとマスターが喋ったと思いきや、なんでその事知ってるんだ?
確かに転送室とか管理してるのはマスターだから、使用状況とか見ててもおかしくは無いのか。
暫くすると部屋の扉が突然開く
吃驚してマスターの指の間から確認すると、何故かそこにウルフが居た
マスターが離れるのと同時に彼は何も言わずにこちらにやってくる。そしてまぁまぁな力で両肩を掴まれた
「お前マジで監禁してやろうか」
「…なんでウルフが居るの」
「また作り直しの話をしに来たら呼んでくれとウルフに言われただけだ」
「あぁ…、そうなの…」
………これは完全に詰んでいるのでは?
マスターはあたしに対しては一週間は希望を通さないつもりで、今回みたいにお願いしに行ったらウルフが来るわけだ。
ウルフのお願いはあたしがここに来て作り直しの話しをしたら呼ぶだけなので、マスター的には何も思わず呼ぶでしょうよ
これを繰り返す度にウルフの怒りや不満を買う
何されるか分かったものじゃないのであたしはマスターにお願いが出来ず仕舞い
それで一週間経って、あたしの気持ちは落ち着きましたとさ。ってね
それかウルフがプリン達に話をしてしまうかもしれないし
どうなってもあたしの良い状況にはならない。
駄目だこりゃと思わずため息を吐いた
「悪かったな両手」
「大丈夫だよー」
再びウルフにお姫様抱っこで捕まる
クレイジーはバイバイと手? 身体を振っていた
静かで薄暗い通路を進む
お昼の時は走っていたけど、今回のウルフは歩いてゆっくりめ
寝てたのかなと思ったけどそんな感じはしないし
「…お前足は良くなったのか?」
「…そんなに良くなってないかな」
「あぁそう」
お風呂の時に足を確認したのだけど、まぁまぁ腫れていた
とても良い状態とは思えない状態だ。歩けなくはないがって感じ
それっきりまた無言になった
思ってたよりウルフに怒ってる感じはないのかな…?
怖すぎて確認すら出来ない
絡まれるのは我慢出来るとして、怒られるとか厳重注意とかはもうお腹いっぱいです
途中から知らん方向へ歩くなと思っていたら、ウルフの部屋に戻った様だった
鍵開いてたし、明らかに男性の部屋だし、誰も居ないし多分ウルフの部屋だろう
まさか本当に監禁するんですか…
少なくとも今晩は監禁だろうな、あたしマスターの所に行っちゃったんだから
「お前、疲れてるんだから寝てろ
寝れなくても大人しくしてりゃあ身体はマシになるだろ」
と、ウルフのベッドの上に乗せられる
そしてすぐにそこらにあった掛け布団を頭からかけられてしまった
疲れてるはずなんだけど、眠れないんだよね、神経は興奮してるかもしれない
寝れないから色々考えてマスターの所に行ってしまったわけで
とりあえず布団に包まって目を瞑るが、同じような事が頭の中をぐるぐる繰り返す
多分寝ればある程度、プリン達の説得方法とか、諦めようとか、先に進むような思い付きを得られそうなんだけど
全く慣れてない場所だし、確認してみると掛け布団の外ではこちらを背にして寝ているウルフも居るし
二人で一つのベッドだから狭いし寝苦しい、これは徹夜コースでしょうか…
暫くは言われた通り大人しくしていたけど勝手に目が開く
そういう感覚もあるし、体は眠いはずなんだけどな…
掛け布団をウルフの方へ吹っ飛ばして身体を起こす
なんか落ち着ける物事や方法は無いものか、もしくは時間を潰せるような事
掛け布団攻撃を受けたウルフは布団を掃って顔を出す
その様子を見ていたらなんとなく思いついた事を口にした
「ウルフ、あたしの事が好きなんだよね?
だったら襲ってくれない? 全然寝れる気がしないし、やったらやったでウルフの気も晴れるかも」
やったら多分疲れるだろうし、我ながらwin-winの良い案ではないか?
と思っていたけど、身体を起こしこちらに振り返ったウルフに首を掴まれた
「二度とそのつまんねぇ冗談言うんじゃねぇぞ」
怒鳴っては無いけど、声色と目つきで凄い怒ってるのは分かった
今までで一番怖い目だったかもしれない
なんでそんなに怒るのか分からないが、これ以上刺激するのは良くないし、もう大人しくしてよう…
その内限界を迎えて寝てしまう事に期待しよう
吹っ飛ばした掛け布団を奪い取って、自主的に身体を横にした
…あんまり思考が暗くならないように美味しい食べ物の事を考える事にします。
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