友達以上恋人未満、だった。
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お目当ての人の部屋までやってくると、中からいびき声が聞こえてきた
扉を開けて中を確認すると、やっぱり彼は寝ていた
それもいびきするくらいだからぐっすり寝てるんだろう。
音をたてない様に静かにゆっくりと近寄る…
脅かして起こしてやるんだ。
…と、思ったけど反射的に切り裂かれたりしないか?
防衛本能が働いて、寝起きの瞬間無意識で引っ掻いてくるとか…。
犬みたいな寝方をしているウルフを前に、思わず足を止めると
ウルフのいびきが止まった
「あー…、ユズか…?」
「!」
明らかに目を閉じたままなのに、あたしの存在を言い当てた?!
驚いてフリーズしていると、彼は眠そうにゆっくりと目を開ける
こちらを確認すると起き上がって、大きなあくびをした
「な、なんであたしが来たって分かったの…?!
あたし無音で来たつもりだったんだけど…!」
「はぁ? お前の聴覚と俺の聴覚を一緒にすんな…、匂いでも分かるし」
「それは申し訳ない…」
確かにあたしよりは色んな感覚は鋭そうだ
これはつまり、今回に限らずこれからも寝起きドッキリみたいのは出来ないっぽいな…。
「何か用か?」
「いや、丁度寝てるから驚かしてやろうと思ったんだけど」
「ほーん、どういう感じでだ?」
「いや普通に「わっ!」って大声出すやつ」
「なんだよつまんねぇな」
「す、すまん…。」
何も悪い事してなけど、何か悪い事をした気分だ…。
それよりも今日は大晦日です。
マスターの方針で朝ご飯と夕ご飯と年越しは、皆で過ごすという事になってます。
これを守らないとあたしでもめちゃくちゃ怒られます。
夕ご飯の年越しそばは出来たので
今はまだリビングに来てなかった人達を探して、リビングに来るように呼びかけ回ってるのです。
遊び散らかしてたヤンガーズや、図書室に居た剣士達に声を掛けて
最後に昼寝していたウルフを呼びに来た、これがこれまでの経緯です。
年越しまではまだ少し時間はあるけど、皆はゲームを持ち寄ったり、飲み会みたいのをしたりしてます。
まだ眠いのかウルフはまたあくびをした
「それよりももう皆食堂に居るよー、早く行かないとマスターにボコボコにされるよ」
「あーあー、分かった分かった…」
先に部屋から出て、ウルフが出てくるのを待つ
そこから二人で騒がしい食堂へ向かった
食堂に入ると、あたし達に気付いたプリンがとあるテーブルの前に移動する
そしてこちらに向かって手を振った
「何やってんだあの風船」
「あそこで夕ご飯の受付をしてるんだよ」
「受付…?」
本当はあたしもプリンの立場なのだけど
あたし達が最後だと思うので、あたしもお客さん側に回ろう
受付にたどり着くとプリンがメニューを取り出した
「へいらっしゃい! 今日のプリン達は蕎麦屋だよー!」
「まだ残ってる?」
「勿論だー! この中から選んでくれー」
そうメニューを受け取ってウルフと二人で覗き込む
「…あ? 値段書いてあるって事はお金取ってるのか?」
「今日はサービスで無料だよ!」
「じゃぁ値段の欄要らねーだろ…。」
「まぁユズちゃんはざるそばで、おっさんは肉蕎麦だろ?
かしこまり! すぐ出来るから席着いて待ってろよー!」
と、メニューを勝手に決めるとプリンは調理室へ飛び込んでいった
「だったらメニューの意味無ぇだろ…。」
「まぁあたしは文句無いけどね」
皆は何時もと違う席に着いている。
今回はフォックス達と同じ席みたいで、ナナの居るテーブルにはフォックスとファルコが居た
あと、プリンの食べかけが置いてある
「ユズちゃん、ウルフさん、席ここが空いてますよ」
「ありがとう、珍しいテーブルだね」
「子ども達とかおっさんとか大人数で好きな所に座ってるからな
空いてるのがここくらいしかなかったんだよ」
五人でお喋りをしていた所、凄い速さで蕎麦を持ってきたプリン
トレーを使って走ってるのだけど、少しも零れていないようだ
「へいお待ち! ユズちゃんのざるそばとおっさんの肉蕎麦!」
「ありがとう」
「サンキュー」
トレーを近くの空いたテーブルの上に置くと、プリンも席に戻った
「それでさっきの話の続きだがー、
ちょっと料理してる間に思ったのは、攻撃回避率も立派な強さだと思う。
それを考えると、小さくて火力のあるピチューも中々だと思うぞ」
「え? 何の話をしてたの?」
「なんかプリンとフォックスさんが「大乱闘最強キャラ論」の話をしてたんだよ。
一対一でじゃなくて、8人乱闘での話だけどね」
「俺はクッパだと思う。混沌とした塊を一気に叩けるからな
それかクロム、よく分からんけど大体大量に倒してるし。
ピチューも火力あるけど、ごちゃごちゃした所に突っ込んだら被弾してあっという間にバーストしそう。」
「そうかー…、やっぱり大乱闘はパワー系の方が強いのかな…?
ちなみにユズちゃんは誰が最強だと思う?」
「え? あたしじゃない?
格闘、剣士、射撃って3種類あるからどんな敵にも対応できるし」
「おぉ…、堂々と自分を上げる戦士の鏡…。」
「確かに相手によって有利なスタイルに変えられるのは強いよな」
まぁ冗談半分で言ったのですけどね。
だけどウルフは大笑いしている
「おっさん笑い過ぎだぞ、どうしたんだ?」
プリンがそう尋ねると、ウルフはあたしを指さした
「いいや、ちょっと前に一騎打で戦ったんだが、こいつ負けてめっちゃへこんでたんだわ。
それなのに今、最強は自分ってよく言えるなぁって」
ウルフがそう説明すると、他の四人も大笑いした
「う、うるさいよ! 忘れてたのに…!
しかもそれは一騎打ちでしょ…! 大乱闘だから良いんだってば…!!」
もう悲しい虚しい恥ずかしいで、よく分からない感情だ…。
「てか思ったんだけど、ウルフとユズって仲良いよなー。
よく二人で一騎打ちとかしてるんだろ?
何かウルフが他の人とよくつるんでるイメージ無いし」
「確かに、おっさんは一匹オオカミのイメージだわ」
「前、普通に付き合ってるのかと思ってたけど違うのな。
そういうのは考えてないのか?」
「うーん、あたしは考えた事無いかな
付き合っても付き合わなくても、特に大きく変わる事無いからね」
「なんだよつまらないな、ウルフはどうなんだ」
「別に興味無ぇな、どっちでも良い」
「…凄い無欲なペアだな。」
「プリンには分かるぞ、こういう人達は形に拘らないんだよな
「付き合ってる」「付き合ってない」って名前だけの様なものなんかに捕らわれず、何時も一緒に居るという真実だけを見ている。大人なお付き合いだ。」
「そうなの?」
何かしんみりとした口調で語るプリンに、苦笑いしているナナ
まぁプリンの言いたい事、なんとなくは分かるし、なんとなくそんな気もする。
「俺らから見ると、お前等は付き合ってると思うんだけど
それはそれでも良いのか?」
「あたしは気にしないから構わないけど、ウルフが止めろって言うなら止めてほしい」
「ウルフは?」
「どう考えようがお前らの勝手だろ、勝手にそう思ってりゃ良い」
「…なんかパッとしないんだよな、その答え。」
と、全然納得してない腑に落ちない感じのフォックスだった…。
今度は隣のファルコがこちらに顔を向ける
「じゃぁ俺達はお前らが付き合ってると思うが
「二人は付き合ってる」と皆に言いふらすのは良いのか?」
「あたしはどっちでも良いけど、ウルフが嫌だって言ったら止めてあげてね」
「だとよ、どうなんだよ」
「言いたきゃ言えば良いんじゃねーの?」
大して感情も無く、何処か別の所を見て興味なさそうな返事。
でもそれを聞いたプリン大興奮状態になった
「言いふらしても良いって事は、これは事実上のお付き合い宣告ですな!」
「ごめんねウルフ、こんな変なのがあたしの友達で…。」
「変なのとは失礼な!」
「別に良い、実際にそう見られてもおかしくないだろうし。
寧ろ言いふらしてくれても良い、それでライバルが消えるんだから」
「「「!」」」
まさかのウルフの発言に驚いた四人は無言で顔を見合わせる
あたしですらその発言に驚いたけども。
という事は、ウルフ的にはあたしとそういう関係はアリという事…。
あたしも今までは友達以上恋人未満だとは思っていたけど…
何か改めて言葉として受け取ると恥ずかしくなってきた…
「ウルフありがとう、なんか嬉しいわ」
「まぁ本当の事だからな」
「何でそこまで言えるのに告白はしないんだよー! カッコつけてるのかー?」
「好意をさらっと言えるおっさんカッコ良いなー、イケメンだー、眩しくて見れねー」
「うるせぇ狐と風船だなおい…」
そうはしゃいでいるフォックスとプリンを遠い目で見るウルフだった…。
友達以上恋人未満、だった。
「良いな羨ましいなユズちゃん、プリンもそんな大人なお付き合いをしたいわぁ…。」
「プリンの相手だって居るじゃん、目の前に」
因みにプリンの目の前に居るのはファルコである
あたしの発言を聞いた途端、二人は同時に声を荒げた
「「何でコイツとっ!」」
「この二人はユズちゃん達とは別の意味で関係が気になりますね」
「全くだな。」
また苦笑いしてるナナに、頷くフォックスだった…。
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