邪魔者は腹の中にいる

「そんじゃあさ、野坂は何やってる子なの?」
「何、と言いますと……ええと、学生ですが」
「それはそうね。サークルでっていう話よ」

 お前は何をすっとぼけた答えを返してるんだという視線をいくつかいただいて、改めてわかりやすく振っていただいた質問にどう返そうか考える。
 サークルで俺は何をやっているのだろうか。改めて考えてみるとあまりに浅いのではないかということに気付く。そもそも最近は対策委員の会議や夏合宿の打ち合わせなどと重なってサークルにいない日もあったりする。
 昼放送の収録だけは毎週土曜日にきっちり入ってるし対策委員の会議や班打ち合わせもよほどのことがない限り土曜日には入れないようにしているけど、じゃあ、普段のサークルでは? そういうことだ。俺はサークルで何をやっているんだ。

「ええと……主な活動は昼放送になりますね」
「そういや今日もやってたみたいじゃんね。てか今生放送じゃなくなったのね」
「その辺は去年、俺の代からですね。食堂の機材が変わって生放送が出来なくなったんですよ。それで、今は収録でやってるのでいいんだよな、圭斗」
「はい」
「へー、時代だねえ」

 ちょっと離れるだけでも変わるところは変わっていくんだねえとダイさんは目を細める。生放送だろうと収録放送だろうと、何とか手段を見つけて活動をしてるのはいいことよ、と添えて。
 その他に自分がしていることを考えると、言葉が詰まる。サークルで、俺は何をしているのだろうか。昼放送の他に何か言えと言われても困る。本来は困っちゃいけないんだろうけど。俺がうんうんと唸っていると、スッと圭斗先輩が救いの手を差し伸べるように口を開く。

「野坂の働きで言えば、菜月さんの精神安定剤ポジションだというのが非常に大きいところですね」
「ほうほう。圭斗、詳しく」
「番組をやるにあたり、菜月さんと野坂の信頼関係は非常に強固です。第8代MMPの誇るゴールデンペアだと言っても過言ではありません」
「おー、いいじゃん」
「ご存知かと思いますが、菜月さんは今やインターフェイスにもその名を轟かせる実力のアナウンサーになりました。ですが、その菜月さんの力を最大限出させるには環境構築、これが大事なんです。安定してそれが出来るのが野坂なんです」
「おおー」
「まあ、これは野坂に限らずですが、僕たちの学年にミキサーがいないならいないなりに今の2年生がある程度モノになっているのは非常にありがたいですね」

 お前それは俺の教え方が良かったんじゃんよと言う村井サンにはすかさず麻里さんから「は?」と圧がかかる。でも村井サンのお世話にはなりましたと心では言っておこう。
 村井サンと麻里さんがいなくなって、ミキサーが現2年生だけになってからは3人でいろいろ協力したり、切磋琢磨したりしているつもりだ。そして月日が流れ、ミキサーの後輩も入って来た。自分たちもまだ十分にミキサーを扱えるワケではないのに教える立場になってしまったのだ。そこも、3人で協力しているところだ。
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