2020(03)

■ひとつの着地点

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「みやっちぃ~!」
「どーしたのみなも」
「新曲が、新曲が! サブチャンとメインチャンネルで忙しい!」

 いつも思うのは、何かすっごいことがあったときに、その興奮をオフですぐに発散じゃないけど、話せる相手がいるっていうのは幸せなことなんだなあと思う。ジャンルかぶりの必要はなくて、話をただ聞いてくれる人のありがたみを感じる。
 そう言えばUSDXの動画がアップされてたなーと思って、今日はゲーム実況じゃなくて新曲かーと思って後で見るつもりだったんだよね。それでしばらく作業してたらインターホンが連打されて現在に至ってるって感じ。

「うちまだ見てないんだけど、そんなに凄かった?」
「いいから聞いて! メインチャンネルが!」

 言われるがままに新着動画を再生する。動画タイトルは「月面のファンタジア feat.Nayu」とあるし、サムネイル画像も月面に女の子が立っているようなイラスト。イントロの後の第一声が、ソルさんでもレイ君でもなく女性の声。

「これ、ボーカル女の子?」
「そう、ゲストボーカルのナユちゃんなんですよお! ちなソースはチータのツイッター!」
「曲を書いてるのは安定のレイ君とチータだね」
「それはその布陣で間違いないっぽい」

 レイ君こと朝霞クンが「やたら詞をたくさん書かなきゃいけなくなっていて」と大変そうにしてたんだけど、その中にはこの曲も含まれてたっぽいね。って言うか普通にいい曲だし、朝霞クンて表現出来る世界観をいくつ持ってるんだろうね。
 ただ、USDXのメンバー以外の人が前面に押し出された曲ということで、メンバー以外を出して来るのは嫌だな的な意見も少しあるらしい。ただ、USDXはその時やりたいことをやりたいようにやるグループだから、これからもやりたいようにやるんだろうなとは。
 実際、自分たちのやることが嫌なら黙って低評価しとけというようなことをプロ氏が雑談動画でも言ってたしね。視聴者は好きな動画だけ見てくれればいいし、こっちも過度に視聴者に気を遣うつもりはないから、と宣言はあった。

「ナユちゃんのファンアートも既にちょっと上がっててえ」
「相変わらず視聴者さんは仕事が早いなー」
「ナユちゃんの情報がチータのアカでちょっと上がってるんだよ。ツミツミが好きで、USDXはソルツミで知ったとか」
「社畜の生存報告用再生リストで!?」
「あたしがフォローしてるチータ推しはそれに大爆笑してナユちゃんを好意的に見てる感じだね」
「チータ推しじゃなくても爆笑するよそれは。需要あったんだねあのリスト」

 チータによれば、これからもナユちゃんがボーカルをとっている曲は年度末までの期間限定で定期的に公開されるとのこと。曲はもう出来てて、動画は鋭意制作中。これは楽しみですね。って言うか普通にいい曲過ぎて引く。

「で、サブチャンですよお! レイ君がついに弾き語り出来たよおっていう発表会!」
「えっ、1曲出来るようになったんだ! 聞く聞く!」

 USDXのサブチャンネルでは、生放送の配信やメインチャンネルには上げない動画が公開されたりする。レイ君はあつ森雑談の生配信をやったりしてたんだけど、ギターを始めてからはその練習を実写で配信してたんだよね。
 最近ではギターの初心者用の曲というのを作ってもらったそうで、その曲をやれるようにっていう練習配信をしてたんだよね。曲は知り合いのバンドマンが作ってくれたそうだけど、作詞は自分でしましたーとは言ってたよね。それがついに出来たって!?

「何て言うか、スタートから見てたから1曲弾き語れるようになってるのが感慨深い」
「あと、やっぱり普通にいい曲だねえ」

 「片耳にエンドロール」と名付けられたその曲は、また後日バンドバージョンで発表されるとはチータのツイッターから。USDX生放送が終わった後の空気感をイメージして書きました、とはレイ君からのコメント。
 確かにまだ少したどたどしいところはあるんだけど、成果には違いないし聞けるようになってるのが普通に凄いと思う。全くギターを触ったことがなかった時点から見てるからね。ギターにしろゲームにしろ、レイ君に関しては成長を見守る保護者的視聴者が多いなって思いますね。
 ゲームの方も、レイ君がある程度戦える分野が分かって来てる感じだよね。アクションとかは相変わらず苦手みたいだけど、パズルとか戦術関係のゲームはプロ氏やコンちゃんともいい勝負だし。あと、マイクラでは建築が上手になってる。

「レイ君がある程度ギターが出来るようになったってことは、フルメンバーのバンド版来るー!?」
「みなもみなも、誰か忘れてない? ギターはあってもバイオリンがどうなってるか」
「バイオリーン! やってなさそうだねえ」
「プロ氏が真面目に練習してるイメージがないよね。フルメンバーのバンド音源は期待しない方がいいんじゃないかと。あるいは、それが欲しければチータ推しがバンドのイラストを描いてお尻を叩くしかないんじゃ?」


end.


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チータはエゴサの鬼だけあって、フルメンバー版のバンドイラストなんかを見た日にはプロ氏にちょっとだけ圧をかけそうではある
多分最初の歌物の後から1曲2曲は公開されてそう。繁忙期と言っても塩見さん、例年よりお休みも多いし残業も短くなってるし。
ゲストボーカルのナユさん、「ソルツミを見てるアイツは本物だ」的な扱いをされてるのかしら。需要あったんだねえとはみんな思ってるみたい。

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