2020

■アイドルは花冠じゃ物足りない

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 青葉女学園大学放送サークルABCでは、5月末に近くの植物園でステージイベントをやらせてもらっている。本番まであと3週間を切ったから、土曜日も日曜日もやれるときには準備をしに来ようという話になった。
 地下駐車場からそのまま続くコンクリート打ちっ放しの部室棟、ABCのサークル室に向かうと粗方みんな揃っているみたいで賑やかな声が響く。部屋に入れば、沙都子の周りを2年生が楽しそうに取り囲んでいる。

「さとかーさん、もっとハデハデのキラキラになりませんかー? サドニナにはもーっと可愛い衣装がお似合いだと思うんですぅー?」
「さと先輩さと先輩、サドニナのそれはいいんであたしの衣装のここに木の枝の刺繍とか入りませんかー? 植物園ですしコンセプトにも合うと思うんですー」

 植物園ステージや大学祭などのイベントでは、そのステージ衣装を沙都子が一から作ってくれている。沙都子は裁縫や手芸が得意で、その一環で毎回ステージのコンセプトやその人に合う衣装にしてくれるんだ。
 2年生のアナウンサー、サドニナとユキちゃんの2人は衣装にもこだわりたいようで毎回こうして沙都子におねだり攻勢をかけている。ミキサーのなっちゃんはちょっと控えめで、もらったシンプルな衣装を眺めて満足げにしている。

「沙都子、今回も大盛況だね」
「一応2・3年生分は粗方出来たけど、1年生の子たちの分も作ってあげたいし頑張らないとね」

 残り3週間であと3人分の衣装を作るのかとビックリした。だけど1年生は本格的な衣装じゃなくて、お揃いの飾りを作ったりと少し簡単な感じで揃えようかなと沙都子は張り切っている。
 ちなみに、ABCにも1年生が何人か入ってくれている。今は3人の子たちがいて、それぞれまだちょっと探り探りっていう感じかな? それでもこの準備を手伝ってくれている中で少しずつ慣れてきたかな。

「コサージュの在庫が結構いっぱいあって、それを使って何かしようかなって」
「へえ、いいね。でもそんなにコサージュがあるんだ。そういうのって、使う量以上に作るんだね」
「最近宏樹さんの家でも作業させてもらってるんだけど、自分も作りたいって言って一緒に作ってるの。そしたら楽しくっていつの間にかたくさん出来ちゃってて」
「あー、さとかーさんが惚気てるー! お惚気はんたーい!」
「もう、サドニナ! かーさんって言わないの!」
「突っ込むのはお惚気の方じゃないんだね」

 沙都子は2月から青敬の長野先輩と付き合っていて、バイト先から長野先輩が住んでいる部屋が近いからよく遊びに行っている。消化器の病気で入院していた先輩の食事療法の手伝いから始まった付き合いなんだって。
 お惚気はんたーいとサドニナが声を上げているけど、彼氏との話をすべてそう言われてしまうとボクとユキちゃんは立ち行かなくなってしまう。それぞれ相手がインターフェイスの人だから名前くらいは出ちゃうんだよなあ。

「ほらこれ、コサージュ」
「うわ、本当にいっぱいあるね」
「わー、相変わらず凄いですねー。これ、さと先輩と彼氏さんで作ったんですかー?」
「そうなのー。ね、きれいに出来てるでしょ?」
「ホントですねー。彼氏さんも手先が器用なんですねー」
「元々折り紙が好きで細かいのも上手なの。こないだとか折り紙のお花とか動物とかいっぱい作ってくれて」
「あー! やっぱりのろけー!」
「もう、そういうことを言う子の衣装はこれ以上見直しませんよ!」
「それとこれとは別じゃないですか~」

 沙都子が袋から出したいろいろな色のコサージュを、どうやって使おうかなと唸っている。ブローチにするか、髪飾りにするか、どうしようかと。沙都子はボクたちの成人式にもお揃いのコサージュを作ってくれたけど、本当に得意なんだなあ。

「そうだ、小さめのコサージュを集めてユキちゃんに花冠作ろうか」
「やったー! お願いします!」
「えー! ユキばっかりズルいー! サドニナにもー!」
「でも、手持ちのお花じゃハデハデでキラキラには出来ないし」
「ハデハデでキラキラなお花を作りましょう! あーでもユキと一緒じゃ面白くないんで、背中に羽をつけましょう!? ラメラメな星とかでもいいかなー、どうしようかなー」
「サドニナ、そんなことばっかやってないで練習しなさい!」
「やぁー!? Kちゃん先輩がイジメるー!」

 相変わらずサドニナが自分の衣装を空想しているけど、それを啓子が戒める。サドニナは練習嫌いなのか、真面目に練習している様子があまり見られない。それをこのステージの台本を書くユキちゃんも嘆いていた。
 ただ、サドニナ本人はアイドル声優志望だけあって大舞台とか本番には強いのかな。これでちゃんと練習をする子だったらもっと上手になったのかと思うとちょっと残念な感じもするけど、仕方ないのかな。

「とりあえず、1年生の子たちのアクセサリーと、ユキちゃんの花冠と、それから」
「って言うかー、Kちゃん先輩サドニナばっかり目の敵にしてますけどぉー、さとかーさんも何気に練習してるトコあんま見たことないんですけどぉー」
「沙都子は衣装作りをした上でアタシと個別に練習してるの」
「えー!? 抜け駆けー!」
「アンタがサボってるだけでしょうが」


end.


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そう考えてみると、青女は3人彼氏持ちなんですね。ちょっと前までの彼氏なし集団のクリパは何やったんや……
サドニナは割と通常運転のようですが、相変わらずラメラメでキラキラな衣装が好みの様子。そういうのを着こなすのは確かにアイドルのイメージだけど。
花冠はユキちゃんのイメージにもバッチリ合いそうだけど、ステージが終わってもプライベートで付けてそうな気がするね

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