2018(02)
■夏の勝負服コレクション
++++
「山口洋平君」
「……はい」
「お前はステージをナメてるのか?」
「いやいやいやいやそんな滅相もない!」
朝霞クンの睨みがかかり、鋭すぎる視線に震え上がるしか出来ない俺がいる。今日はステージ前最後の日曜日ということで、丸1日準備に充てることになっている。ただ、暑いから屋外作業は夕方からなんだけど。
――というワケで最初の集合場所は朝霞クンの部屋。つばちゃんとゲンゴローは音源や小道具など、それぞれの仕事に必要なものを持ってきていた。そして俺に対してP直々に出された課題は、「当日のステージ衣装を着てくること」だ。
「すみませんナメてません、むしろ一生懸命です!」
「だとすれば、どうしてそんなアホみたいなコーディネートをしてきた」
「お、俺なりに精一杯頑張りました……」
「まあ、お前のセンスに期待した俺も悪かった。普段がああなのに急にまともなコーディネートが出来るようになるワケないしな」
「そーだよ朝霞サン、洋平の何に期待したワケ? このクッソセンス悪い自称ステージスターにさ」
「そこまで言わなくてもいいじゃんつばちゃん!」
「いや、お前言える立場じゃないからな?」
「ご尤もです~……」
何を隠そう、俺は服のコーディネートが大の苦手。朝霞クンに言わせると、ひとつひとつの物を選ぶのはむしろ上手いそうだけど、それを組み合わせるのが絶望的にヘタクソなんだそうだ。
だから俺のクローゼットにはいいアイテムこそいっぱい入ってるけど、それをどう組み合わせるかって。それはつまり選ぶ人のセンスが問題になるワケで。今回の課題を見事クリアできなかったことも、朝霞クンには予測済みだったみたいだけど。
「って言うかさ、朝霞クンの脳内ではステージ仕様の俺が動いてるんでしょ?」
「ああ」
「だったらさ、その俺を模写してもらって~、その衣装をゲンゴローに縫ってもらうっていうのはど~お~? ゲンゴロー裁縫も出来るって言ってたし」
「えっ、まあ、出来ますけど」
「洋平、お前本当にバカだな。ただでさえ無い予算を何でお前の衣装に費やさなきゃなんないの?」
「だよね~」
「それで山口、何でお前ド派手な市松模様のポロシャツにド派手なアロハシャツを合わせた」
「夏っぽいかな~と思って」
「しかもハーフパンツが黒地に蛍光色の喧しいドット柄って」
朝霞クンがおっきな溜め息をついている…! 朝霞クンは結構なおしゃれさんで日頃からコーディネートには気を遣ってる。だから俺のヘタクソさには昔から呆れてたみたいだけど、今回はいつもよりも風当たりが強い気がする!
「1コ1コのアイテムはいいんだ。無理に組み合わせようとするな。ただでさえお前は存在が喧しいんだから、シンプルでいいんだ。と言うかこれだとMCが悪目立ちする。あくまでMCは司会進行、補佐的役割だっていうことはわかってるだろ」
「それはわかってます」
「とりあえず、この3着がお前の思う今回の勝負服だということはわかった。ただ、どれかひとつにしろ」
「え~、どれにしようかな~。自分じゃ決められないよね~」
……などと言っていると、自分で考える隙も発言権も与えられずに朝霞クンはさっさとつばちゃんたちに意見を求めちゃうよね! 何!? 俺の衣装問題って班全体で考えなきゃいけないほどのトピックだったの!?
「戸田、どれがいい」
「アロハかポロシャツじゃない? このハーパンはちょっとないわ」
「源、お前はどう思う」
「疑似すいか割り企画もありますし、アロハが合ってるような気がします」
「よし。源、いい着眼点だ。山口、アロハをベースに組み立てるぞ」
「は~い」
無事に今回の衣装のベースがアロハシャツに決まったところで、あとはどうしよう。俺が選ぶんじゃ結末はわかりきってるし。また朝霞クンに呆れられるんでしょ? 知ってる~。
「山口、お前のクローゼットを見せてみろ」
「えっ、今から?」
「今からだ。お前の家に行って、ある物から俺が組み立てる。うるさくしないし家の人に迷惑もかけないし」
「それは別にいいんだけど~。そんな遠くないし。つばちゃんとゲンゴローはど~するの?」
「しばらくここで作業しててもらえるか。夕方までには戻る。戸田、俺のサントラとか見てていいし、冷蔵庫にあるモンとか飲み食いしてもらって構わないから」
「はーい、って言うか冷蔵庫の中レッドブルしかないの知ってるからね!」
「ウルサい、プリンも入ってる。それはそうとして、行くか山口」
そう言って朝霞クンは帽子をかぶり、自転車の鍵を手に取った。本当に俺の家に行くのネ。まあ、この時期の朝霞クンに冗談は通じないし、本人も冗談なんて言わないでしょでしょ~。
「頭のてっぺんからつま先までカスタムしてやるからな、覚悟しとけ」
「お世話になります~」
end.
++++
今年の朝霞Pの誕生日は朝霞班みんなで平和的に過ごしているようです。平和的に? 平和ですね
山口洋平さんは安定のコーディネート下手。喧しい柄物が大好きなようで、それらをわちゃわちゃに組み合わせたがる模様。
この時期の朝霞Pの冷蔵庫につばちゃんとゲンゴローが飲み食いするような物はそうそう入ってないだろうなあ
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「山口洋平君」
「……はい」
「お前はステージをナメてるのか?」
「いやいやいやいやそんな滅相もない!」
朝霞クンの睨みがかかり、鋭すぎる視線に震え上がるしか出来ない俺がいる。今日はステージ前最後の日曜日ということで、丸1日準備に充てることになっている。ただ、暑いから屋外作業は夕方からなんだけど。
――というワケで最初の集合場所は朝霞クンの部屋。つばちゃんとゲンゴローは音源や小道具など、それぞれの仕事に必要なものを持ってきていた。そして俺に対してP直々に出された課題は、「当日のステージ衣装を着てくること」だ。
「すみませんナメてません、むしろ一生懸命です!」
「だとすれば、どうしてそんなアホみたいなコーディネートをしてきた」
「お、俺なりに精一杯頑張りました……」
「まあ、お前のセンスに期待した俺も悪かった。普段がああなのに急にまともなコーディネートが出来るようになるワケないしな」
「そーだよ朝霞サン、洋平の何に期待したワケ? このクッソセンス悪い自称ステージスターにさ」
「そこまで言わなくてもいいじゃんつばちゃん!」
「いや、お前言える立場じゃないからな?」
「ご尤もです~……」
何を隠そう、俺は服のコーディネートが大の苦手。朝霞クンに言わせると、ひとつひとつの物を選ぶのはむしろ上手いそうだけど、それを組み合わせるのが絶望的にヘタクソなんだそうだ。
だから俺のクローゼットにはいいアイテムこそいっぱい入ってるけど、それをどう組み合わせるかって。それはつまり選ぶ人のセンスが問題になるワケで。今回の課題を見事クリアできなかったことも、朝霞クンには予測済みだったみたいだけど。
「って言うかさ、朝霞クンの脳内ではステージ仕様の俺が動いてるんでしょ?」
「ああ」
「だったらさ、その俺を模写してもらって~、その衣装をゲンゴローに縫ってもらうっていうのはど~お~? ゲンゴロー裁縫も出来るって言ってたし」
「えっ、まあ、出来ますけど」
「洋平、お前本当にバカだな。ただでさえ無い予算を何でお前の衣装に費やさなきゃなんないの?」
「だよね~」
「それで山口、何でお前ド派手な市松模様のポロシャツにド派手なアロハシャツを合わせた」
「夏っぽいかな~と思って」
「しかもハーフパンツが黒地に蛍光色の喧しいドット柄って」
朝霞クンがおっきな溜め息をついている…! 朝霞クンは結構なおしゃれさんで日頃からコーディネートには気を遣ってる。だから俺のヘタクソさには昔から呆れてたみたいだけど、今回はいつもよりも風当たりが強い気がする!
「1コ1コのアイテムはいいんだ。無理に組み合わせようとするな。ただでさえお前は存在が喧しいんだから、シンプルでいいんだ。と言うかこれだとMCが悪目立ちする。あくまでMCは司会進行、補佐的役割だっていうことはわかってるだろ」
「それはわかってます」
「とりあえず、この3着がお前の思う今回の勝負服だということはわかった。ただ、どれかひとつにしろ」
「え~、どれにしようかな~。自分じゃ決められないよね~」
……などと言っていると、自分で考える隙も発言権も与えられずに朝霞クンはさっさとつばちゃんたちに意見を求めちゃうよね! 何!? 俺の衣装問題って班全体で考えなきゃいけないほどのトピックだったの!?
「戸田、どれがいい」
「アロハかポロシャツじゃない? このハーパンはちょっとないわ」
「源、お前はどう思う」
「疑似すいか割り企画もありますし、アロハが合ってるような気がします」
「よし。源、いい着眼点だ。山口、アロハをベースに組み立てるぞ」
「は~い」
無事に今回の衣装のベースがアロハシャツに決まったところで、あとはどうしよう。俺が選ぶんじゃ結末はわかりきってるし。また朝霞クンに呆れられるんでしょ? 知ってる~。
「山口、お前のクローゼットを見せてみろ」
「えっ、今から?」
「今からだ。お前の家に行って、ある物から俺が組み立てる。うるさくしないし家の人に迷惑もかけないし」
「それは別にいいんだけど~。そんな遠くないし。つばちゃんとゲンゴローはど~するの?」
「しばらくここで作業しててもらえるか。夕方までには戻る。戸田、俺のサントラとか見てていいし、冷蔵庫にあるモンとか飲み食いしてもらって構わないから」
「はーい、って言うか冷蔵庫の中レッドブルしかないの知ってるからね!」
「ウルサい、プリンも入ってる。それはそうとして、行くか山口」
そう言って朝霞クンは帽子をかぶり、自転車の鍵を手に取った。本当に俺の家に行くのネ。まあ、この時期の朝霞クンに冗談は通じないし、本人も冗談なんて言わないでしょでしょ~。
「頭のてっぺんからつま先までカスタムしてやるからな、覚悟しとけ」
「お世話になります~」
end.
++++
今年の朝霞Pの誕生日は朝霞班みんなで平和的に過ごしているようです。平和的に? 平和ですね
山口洋平さんは安定のコーディネート下手。喧しい柄物が大好きなようで、それらをわちゃわちゃに組み合わせたがる模様。
この時期の朝霞Pの冷蔵庫につばちゃんとゲンゴローが飲み食いするような物はそうそう入ってないだろうなあ
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