2016(05)
■明日の風が通る道
++++
「ボクたちも緑ヶ丘を見習おうと思う!」
――と、直が大掃除の宣言があったのは昨日。みんな、汚れてもいい服装をしてくるようにとの連絡通り、ジャージやスウェット、高校時代の体操服などそれ相応の服装で集合。
いつの間にか掃除に熱が入るようになった直がリーダーとなって、本格的な大掃除が始まる。よく考えれば、お菓子を食べ散らかすヒビキ先輩が引退して、掃除のチャンスではあった。やるなら徹底的に。ゴキの住みにくい環境にするためにも。
「それじゃあ、掃除を始めます。まずは窓を開けよう。重い物はボクと啓子で外に出すし、外のみんなは小物をお願い」
「はーい」
「沙都子はいる物といらない物を分けてくれるかな。いらない物は容赦なくやっちゃってもらって」
荷物という荷物を全部外に出してまっさらになった部屋を、まずは洗剤を使って磨いていく。磨いたところから床の色があからさまに変わるので結構楽しかったりする。隅の方もマツイ棒でしっかりと。
出した荷物の山の中では、沙都子がいる物といらない物を分けている。沙都子的にはいらない物の方が圧倒的に多いらしく、ゴミ袋の山が積み上がる。沙都子って案外こういうところで冷酷と言うか、クールだよね。
特に、ステージで使った物はまた使うかなととっておきがちだけど、案外使わなかったりする。アタシたちが入学する前からあるような物もある。そんな物を容赦なくゴミ袋にぶち込む沙都子。たくましい。
「直」
「どうしたの」
「何か、こうしてるとあの時のことを思い出す」
「そうだね」
思い出されるのは、シーナさんの事件の後で汚れたサークル室の掃除をしたときのこと。血やその他の体液を、微塵たりとも残さないよう力を入れて掃除をした。壁は塗り直したし、床も白い。だけど、血液の残像が見える。
「ゴメン、思い出させるようなことして」
「掃除は必要だから。直は悪くない。それに、掃除しないとゴキが出るし」
「頑張ってゴキブリの出にくい部屋にしないとね」
外からはサドニナの悲鳴が聞こえてくる。きっと、サドニナの好きそうな物を沙都子が容赦なくいらない物認定したとかそんなようなことだと思う。なるほど、それを躊躇すれば物が増えるんだな。
洗剤で磨いたら、次は水拭き、そして乾拭き。床や壁が綺麗になったところで機材を部屋の中に戻していく。緑ヶ丘からもらってきたMDデッキを、それまであった物と交換する。前の機材は、ミラが作ってくれた脚を残して処分する物のコーナーへ。
「直クン、粗方分け終わったよ」
「ありがとう。それじゃあラックも部屋に戻そうか」
部屋の中にラックを戻したら、今度はラックの中に荷物を戻していく。だけど、沙都子が容赦なく仕分けてくれたから、荷物はそれまでの3分の1くらいまで減っていた。いらない物ばかりが詰め込まれてたのだとわかる。
今度からは定期的に断捨離していくことに決め、風を通しやすい環境を保つことを心がけることになった。ハッカ油も薄く引いて、とにかくゴキの嫌う環境を作っていくこと。それと食べた物のゴミは片付けるのと。
「さとかーさん鬼すぎー!」
「だって使わないでしょ?」
「使うのにー!」
「どうやって?」
「あ、えーと」
反論できないサドニナの負けが確定したところで、とりあえず今回の大掃除は終了。薄汚れていたサークル室がきれいになった。いつまでもつかな。
「みんなありがとう。おかげで部屋がきれいになったよ。新しい1年生も来るし、ステージの準備でバタバタするだろうけど少しの間はきれいな部屋を保てるように頑張りましょう」
「Kちゃん先輩、直クン先輩見てたら愛の力って偉大だなーって思いますよねー」
「ユキちゃん、自分はどうなの」
「えっ!? あっ、あたしは掃除とか料理とか、そういうのじゃないですもん」
end.
++++
愛の力は偉大なり、的な? 明らかにLから教えを受けているであろう直クン主動の掃除大会です。
さとかーさんがいる物といらない物を分けている光景は、穏やかに見えて結構バッサリやってるんだろうなあ。かーさんマジかーさん
緑ヶ丘からMDデッキをもらってきたんだけど、ミラが作ってくれた脚はとっておくのか。少なくともサドニナとユキちゃんが在籍してる間は捨てられることはなさそうです。
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「ボクたちも緑ヶ丘を見習おうと思う!」
――と、直が大掃除の宣言があったのは昨日。みんな、汚れてもいい服装をしてくるようにとの連絡通り、ジャージやスウェット、高校時代の体操服などそれ相応の服装で集合。
いつの間にか掃除に熱が入るようになった直がリーダーとなって、本格的な大掃除が始まる。よく考えれば、お菓子を食べ散らかすヒビキ先輩が引退して、掃除のチャンスではあった。やるなら徹底的に。ゴキの住みにくい環境にするためにも。
「それじゃあ、掃除を始めます。まずは窓を開けよう。重い物はボクと啓子で外に出すし、外のみんなは小物をお願い」
「はーい」
「沙都子はいる物といらない物を分けてくれるかな。いらない物は容赦なくやっちゃってもらって」
荷物という荷物を全部外に出してまっさらになった部屋を、まずは洗剤を使って磨いていく。磨いたところから床の色があからさまに変わるので結構楽しかったりする。隅の方もマツイ棒でしっかりと。
出した荷物の山の中では、沙都子がいる物といらない物を分けている。沙都子的にはいらない物の方が圧倒的に多いらしく、ゴミ袋の山が積み上がる。沙都子って案外こういうところで冷酷と言うか、クールだよね。
特に、ステージで使った物はまた使うかなととっておきがちだけど、案外使わなかったりする。アタシたちが入学する前からあるような物もある。そんな物を容赦なくゴミ袋にぶち込む沙都子。たくましい。
「直」
「どうしたの」
「何か、こうしてるとあの時のことを思い出す」
「そうだね」
思い出されるのは、シーナさんの事件の後で汚れたサークル室の掃除をしたときのこと。血やその他の体液を、微塵たりとも残さないよう力を入れて掃除をした。壁は塗り直したし、床も白い。だけど、血液の残像が見える。
「ゴメン、思い出させるようなことして」
「掃除は必要だから。直は悪くない。それに、掃除しないとゴキが出るし」
「頑張ってゴキブリの出にくい部屋にしないとね」
外からはサドニナの悲鳴が聞こえてくる。きっと、サドニナの好きそうな物を沙都子が容赦なくいらない物認定したとかそんなようなことだと思う。なるほど、それを躊躇すれば物が増えるんだな。
洗剤で磨いたら、次は水拭き、そして乾拭き。床や壁が綺麗になったところで機材を部屋の中に戻していく。緑ヶ丘からもらってきたMDデッキを、それまであった物と交換する。前の機材は、ミラが作ってくれた脚を残して処分する物のコーナーへ。
「直クン、粗方分け終わったよ」
「ありがとう。それじゃあラックも部屋に戻そうか」
部屋の中にラックを戻したら、今度はラックの中に荷物を戻していく。だけど、沙都子が容赦なく仕分けてくれたから、荷物はそれまでの3分の1くらいまで減っていた。いらない物ばかりが詰め込まれてたのだとわかる。
今度からは定期的に断捨離していくことに決め、風を通しやすい環境を保つことを心がけることになった。ハッカ油も薄く引いて、とにかくゴキの嫌う環境を作っていくこと。それと食べた物のゴミは片付けるのと。
「さとかーさん鬼すぎー!」
「だって使わないでしょ?」
「使うのにー!」
「どうやって?」
「あ、えーと」
反論できないサドニナの負けが確定したところで、とりあえず今回の大掃除は終了。薄汚れていたサークル室がきれいになった。いつまでもつかな。
「みんなありがとう。おかげで部屋がきれいになったよ。新しい1年生も来るし、ステージの準備でバタバタするだろうけど少しの間はきれいな部屋を保てるように頑張りましょう」
「Kちゃん先輩、直クン先輩見てたら愛の力って偉大だなーって思いますよねー」
「ユキちゃん、自分はどうなの」
「えっ!? あっ、あたしは掃除とか料理とか、そういうのじゃないですもん」
end.
++++
愛の力は偉大なり、的な? 明らかにLから教えを受けているであろう直クン主動の掃除大会です。
さとかーさんがいる物といらない物を分けている光景は、穏やかに見えて結構バッサリやってるんだろうなあ。かーさんマジかーさん
緑ヶ丘からMDデッキをもらってきたんだけど、ミラが作ってくれた脚はとっておくのか。少なくともサドニナとユキちゃんが在籍してる間は捨てられることはなさそうです。
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