2017
■それもまた作品
++++
美術部に入部して2週間ほどが経ちました。文化会の発表会も無事に終了して日常を取り戻した部では、いつものように作品を作る人は作り、駄弁る人は駄弁るという空気が出来上がっていました。
僕は部で飼っている金魚のデビッドとゴライアスに餌をやりつつ、2年生の真実さんが描いている油絵の様子を眺めています。唯香さんはパソコンに撮影してきた画像を取り込んでいる最中のようです。
「おーい、安曇野、浦和。今日はお前たちに支給品だ」
「美和さんおはようございまーす」
「支給品? 何ですか?」
「こないだ大まかな服のサイズ聞いただろ。でだ。えーと、安曇野がMで、浦和、本当にSでいいのか」
「物を見ないとわかりませんが、サイズは小さめでちょうどなので」
「そうか」
「とりあえず、サイズの確認もあるから1回着てみてくれ」
部長の美和子さんが持ってきた包みを受け取って、さっそく着替えていくのですが……簡易更衣室じゃないですけど、仕切りのカーテンまで取り付けられているんですね。そこに入るのは僕です。
現在女子の方が多い部活なので、着替えにしても女子優先のようになっているんですね。大っぴらに着替えることに抵抗はないですが、女性陣の着替え中にその場にいることには申し訳なさも少々。
もらった包みを開ければ、出て来たのは真っ白なつなぎ。それを着てみれば、Sサイズでちょうどだったようです。僕は身長が160センチもないくらいなので、一応とも思いましたが、やっぱりこれでオッケーですね。
「あの、着替えました」
「浦和も着替えたか。さて、このつなぎは緑ヶ丘大学美術部ELLEのユニフォームになる」
「ユニフォーム? って言う割に美和さんもマミさんも着てるトコ見たことないですけど」
「白は汚れそうですね」
「浦和、それだ。このつなぎ一面がキャンバスになるというワケだ。4年をかけてどう汚していくかが問われる作品になる」
「なるほど」
美術部に入った時点でもらったそれは、4年生になって卒業するときにどうなったかを部内で展示することになっているそうです。つなぎの上に絵を描く人もいれば、活動の中で自然と汚れる人もいる。
真っ白なまま、敢えて汚さずに飾る人もいるらしい。それが何を表すのか、そしてそこから何を読み取るかは見る側によりけり。真っ白なつなぎに袖を通した僕と唯香さんは、雛鳥のように美和子さんの話を聞いています。
「アタシは敢えて描きたい派かな。実苑、アンタどーする?」
「うーん、僕は姉の服を着て来ることもあるので汚せませんし、エプロン代わりに着ることになりそうですね」
「自然の成り行きのままにってこと」
「はい、そういうことです」
「って言うか姉貴の服着るとか」
「姉とは最近姉弟になったばかりなんですけど、服の事で話が合って。たまに服を交換して着合ってるんですよ。僕は小さいので、女物の服も入りますし」
「スカートとかも穿くの?」
「特に抵抗はありません。最近だとガウチョパンツなんかがゆるっとして楽ですが、部室での作業には向かなさそうなのでピタッとした履き物の方がよさそうですね」
性別の違う兄弟の服を借りるということは世間一般では少ないのでしょうか。女性でも男物の服を着ている人はたくさんいるように思うのですが。
それはそうと、僕はここで好きで得意な造形のことをのびのびやりたいと思っているのです。今は食虫植物などに興味があって、それらをモチーフにした幻獣を作りたいと思っています。
「真実さん、そう言えば、先日植物園の話をしてましたよね」
「うん、そうそう。友達がその日イベントやるから来てーってお誘いがあってー」
「唯香さん、一緒に行きましょう」
「何でアタシまで」
「部活動の一環ということで、たまには一緒に遊びましょう。動物園も近くにあるそうじゃないですか。いい被写体だと思うんですよ」
「ったく、アンタ意外とグイグイ来るよね。しゃーない、付き合ってやる」
「ありがとうございます」
end.
++++
今年度の最初の話にミソノが出て来たのに、それ以来さっぱりだなと思って久しくぶりのミソノです。美術部話。
ミソノのおかげで美術部に少しずつ光が当たってきているような気がする……秋ごろには長野っちブーストもあるもんな
白いつなぎの話をウン年ぶりに掘り起こしたような気がするのですが、卒業式シーズンにこれをやるには美術部の4年生が必要にな(ry
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美術部に入部して2週間ほどが経ちました。文化会の発表会も無事に終了して日常を取り戻した部では、いつものように作品を作る人は作り、駄弁る人は駄弁るという空気が出来上がっていました。
僕は部で飼っている金魚のデビッドとゴライアスに餌をやりつつ、2年生の真実さんが描いている油絵の様子を眺めています。唯香さんはパソコンに撮影してきた画像を取り込んでいる最中のようです。
「おーい、安曇野、浦和。今日はお前たちに支給品だ」
「美和さんおはようございまーす」
「支給品? 何ですか?」
「こないだ大まかな服のサイズ聞いただろ。でだ。えーと、安曇野がMで、浦和、本当にSでいいのか」
「物を見ないとわかりませんが、サイズは小さめでちょうどなので」
「そうか」
「とりあえず、サイズの確認もあるから1回着てみてくれ」
部長の美和子さんが持ってきた包みを受け取って、さっそく着替えていくのですが……簡易更衣室じゃないですけど、仕切りのカーテンまで取り付けられているんですね。そこに入るのは僕です。
現在女子の方が多い部活なので、着替えにしても女子優先のようになっているんですね。大っぴらに着替えることに抵抗はないですが、女性陣の着替え中にその場にいることには申し訳なさも少々。
もらった包みを開ければ、出て来たのは真っ白なつなぎ。それを着てみれば、Sサイズでちょうどだったようです。僕は身長が160センチもないくらいなので、一応とも思いましたが、やっぱりこれでオッケーですね。
「あの、着替えました」
「浦和も着替えたか。さて、このつなぎは緑ヶ丘大学美術部ELLEのユニフォームになる」
「ユニフォーム? って言う割に美和さんもマミさんも着てるトコ見たことないですけど」
「白は汚れそうですね」
「浦和、それだ。このつなぎ一面がキャンバスになるというワケだ。4年をかけてどう汚していくかが問われる作品になる」
「なるほど」
美術部に入った時点でもらったそれは、4年生になって卒業するときにどうなったかを部内で展示することになっているそうです。つなぎの上に絵を描く人もいれば、活動の中で自然と汚れる人もいる。
真っ白なまま、敢えて汚さずに飾る人もいるらしい。それが何を表すのか、そしてそこから何を読み取るかは見る側によりけり。真っ白なつなぎに袖を通した僕と唯香さんは、雛鳥のように美和子さんの話を聞いています。
「アタシは敢えて描きたい派かな。実苑、アンタどーする?」
「うーん、僕は姉の服を着て来ることもあるので汚せませんし、エプロン代わりに着ることになりそうですね」
「自然の成り行きのままにってこと」
「はい、そういうことです」
「って言うか姉貴の服着るとか」
「姉とは最近姉弟になったばかりなんですけど、服の事で話が合って。たまに服を交換して着合ってるんですよ。僕は小さいので、女物の服も入りますし」
「スカートとかも穿くの?」
「特に抵抗はありません。最近だとガウチョパンツなんかがゆるっとして楽ですが、部室での作業には向かなさそうなのでピタッとした履き物の方がよさそうですね」
性別の違う兄弟の服を借りるということは世間一般では少ないのでしょうか。女性でも男物の服を着ている人はたくさんいるように思うのですが。
それはそうと、僕はここで好きで得意な造形のことをのびのびやりたいと思っているのです。今は食虫植物などに興味があって、それらをモチーフにした幻獣を作りたいと思っています。
「真実さん、そう言えば、先日植物園の話をしてましたよね」
「うん、そうそう。友達がその日イベントやるから来てーってお誘いがあってー」
「唯香さん、一緒に行きましょう」
「何でアタシまで」
「部活動の一環ということで、たまには一緒に遊びましょう。動物園も近くにあるそうじゃないですか。いい被写体だと思うんですよ」
「ったく、アンタ意外とグイグイ来るよね。しゃーない、付き合ってやる」
「ありがとうございます」
end.
++++
今年度の最初の話にミソノが出て来たのに、それ以来さっぱりだなと思って久しくぶりのミソノです。美術部話。
ミソノのおかげで美術部に少しずつ光が当たってきているような気がする……秋ごろには長野っちブーストもあるもんな
白いつなぎの話をウン年ぶりに掘り起こしたような気がするのですが、卒業式シーズンにこれをやるには美術部の4年生が必要にな(ry
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