2016(04)

■ケース・ショッピング

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 ゼミ室に置いているカップ麺の備蓄がなくなった。しばらくジャガイモを加工した料理ばかりを食べていたからその存在を忘れかけていたが、たまには麺類を、と思って箱を覗いて底が見えていることに気付く。
 ちょうどヒマだったオレと美奈、そして石川の3人で買い出しに出る。カップ麺の買い出しで足をのばすのは、近くにあるスーパーセンターだ。食料だけでなくホームセンターで買うような物も揃えることが出来るために便利なのだ。

「おお、すごいことになっているな」
「お買い得……」

 駐車場の一角に、テントが立てられていた。その下に積み上げられているのは段ボール箱。何らかの催し物らしい。少し覗いてみると、赤いきつねと緑のたぬきのケースが山積みになっている。他には、お茶やスポーツドリンク、ティッシュに玉ねぎ。

「税込み900円で1ケースということは、単価は75円か。美奈、両方買っても予算内には収まるが、どうする」
「問題ない……」
「ところで石川はどうした」
「……さあ」
「団体行動の出来ん奴だ。中に入ってあとの1200円分の買い物をするか」
「そうする……」

 テントの下にある商品はテントの下で会計までを済ませるシステムらしく、先に赤いきつねと緑のたぬきのケースを会計して、買った物を車に乗せる。さて、残り1200円の使い道と腹の黒い狸を探さねば。

「さあ、行くか。……美奈?」
「……多分、徹は放っておいて問題ない……」
「行方がわかったのか」
「向こう……チョコレートの売り場が拡大されてる……」
「なるほどな。しばらくはあそこから出て来んということか」

 美奈が言うには、石川はサークルでも後輩からチョコレートお化け呼ばわりされていたそうだ。特別甘党というワケでもないが、チョコばかりをかじっているからだろう。
 ここのところ、チョコレートがどんどん売り出されるようになった。新しい物を見つける度に石川はそれを試すのだ。そしてこのタイミングでスーパーセンターでもチョコレート売り場の拡大。大量に仕入れられた物は、単価も低くなる。

「私たちは、買い出しに専念……」
「そうだな。ところで、きつねともたぬきとも違う味の物も欲しいと思っているのだが。ラーメンなど」
「問題ない……」
「しかし、あのチョコレートお化けは本当に周りが見えとらんな」
「あっ……また、カゴに入れた……」
「どれだけ買うつもりだ」

 買い出し当番でもないのに石川がついてきたのはこれが目的だったかと納得してしまった。ここで買えば、コンビニよりも大学の売店よりもはるかに安くチョコを備蓄することが出来るのだ。

「マルちゃん正麺のカップはさすがに高いな」
「1200円でマルちゃんだったら、麺づくりになる……」
「そうか」
「マルちゃん正麺にこだわるなら、袋は予算内に収まる……」
「ほう。鶏白湯やカレーうどんなどもあるのだな。担担麺は知っていたが」
「……それなら、鶏白湯とカレーうどんに、する…? うどんになるけど……」
「しかし、このテの袋めんは湯を沸かしたり具を用意するのが面倒でな」
「……私がいるときは、私が作るけど……」
「いいのか」
「アレンジが利く……実は、袋めんの方が好き……」

 美奈からすれば、多少調理や洗い物の手間がかかろうと、野菜や煮卵を足したりしてアレンジをしやすい袋めんの方がいいそうだ。オレにはとても理解出来んのだが、確かに食事のバランスが偏りやすいゼミ室でも、美奈がいるときは野菜を食っている気がする。

「これを会計して、表のテントにあった玉ねぎ……それを見たい……」
「北辰産が5キロ500円だったか」
「これは、破格……」

 レジをしている間にも、石川は自分の買い物に夢中になっているし、美奈は玉ねぎを吟味するのだと張り切っている。確信犯の石川はともかく、美奈からすれば思わぬ遭遇なのだろう。

「しかし、玉ねぎなど、どうする」
「……カレーうどんの具、とか……」
「なるほど。それは期待したい」
「わかった……」


end.


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イシカー兄さん、自分の世界に集中しすぎてリン美奈がデートみたいなことをしているのもガン無視の様子。さすがのチョコレートお化けである。
腹の黒い狸とはよく言った物である。事実としか言いようがないのだけども。紺のきつねそばなんてのもありますね。
確かに、美奈はスムージーの件にしても洗い物を特に苦にはしないようだし、袋めんの方がある程度自分の好みの味にアレンジだのカスタムだのが出来るので手間を厭わないのならその方がいいのかもね

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