2016(04)

■サクサク金策

公式学年+1年

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「あー、今年も金策の季節がきたしー!」
「デカイよな、参加費15000円って。それと別に小遣いも要るし」
「去年は何とかなったけど、今年は本格的に切り詰めないとなー」

 佐藤ゼミの卒論発表合宿は、長篠エリアのリゾート地にある大学の施設で行われる。これが結構なコテージで、シャンデリアが輝いてたりディナーはフランス料理のフルコースだったりする雪山だ。
 2泊3日で参加費は15000円。それとは別にスキーがしたければレンタル料金も要るし、お小遣いもあった方がいい。当日だけじゃなくてそれまでの準備にもお金がかかるから何だかんだで3万円弱は必要になってくる。

「高木、お前今年もスキーやんのか?」
「うん、やりたいとは思ってる。鵠さんは?」
「俺もやろうかなー。でも資金調達どーすんだ? お前バイトやってねーじゃん?」
「そうだよねえ。去年は朝霞先輩から日雇いの派遣で紹介してもらえたけど、今年はさすがに」

 すると、机の上で充電機に繋いでいるスマホがブルブルと震えている。何台かのスマホがあるけど、震えてるのはー……あ、俺のだ。

「はいもしもし」
『あ、もしもし高木君? 朝霞です。久し振り』
「あ、ご無沙汰してます」
『突然だけど、今度の土曜日空いてたりしない?』
「空いてますけど、どうかしましたか」
『人手が足りないっつって大石が泣きついてきて。仕事の内容的には去年と変わんないんだけど、どうかな』

 これは願ったり叶ったり。この時期に日雇いのバイトで日給にして6500円くらいが入るというのは本当に助かる。食費を削らなくて良くなるという意味でも。食費を削ると果林先輩に叱られるんだよなあ。
 去年と同じような仕事ということは、製品の吊り札付けのような感じの作業だと思っていいのかな。俺は割と得意な方の仕事だったし、お金も必要なので朝霞先輩にはやりますと即決で返事をして。

「よーし、これでご飯が食べれる」
「高木、どうしたし」
「日雇いの仕事のお誘いだった。1日やるだけでもご飯の質が全然違うんだよ」
「アンタの食事の質はともかく、この時期の臨時収入はデカイ。羨ましいし」
「違いないじゃん? 俺なんて学食だから特に代わり映えもしないじゃんな」

 お金がない。どれだけあっても足りなくなるんだから仕方ない。深夜バイトでたくさん稼いでいる果林先輩ですら、その稼ぎのほとんどが食費になってしまうからいつだってお金はないと言っている。
 そもそも、卒論発表合宿でそんなコテージに行く必要があるのかという話になる。それを言ってしまえばおしまいだけど。それでも、在学生だから安く泊まれるのであって、外部の人はそれよりもっと高いお金を払わなければならないらしい。
 卒論の発表ならこのスタジオでも全然やれるし、学年ごとの企画にしたってここでやったところで何ら問題ない。強いて言えば学術に関係のない、スキーだとか料理だとかの体験にお金を払うような感じなのか。

「それはそうと高木、お前今年の非常食どうする」
「それなんだよねー。ほら、2年だしお酒解禁したからやっぱりちょっとは持って行きたいじゃん」
「お前の“ちょっと”はちょっとじゃないじゃん?」
「でも、酒って安くないし!」
「そうだよねえ。お土産としても買って帰りたいし、やっぱり食事の質を落とすところから始めなきゃいけないかなあ」
「ま、精々慣れない金策頑張れし」

 でも、運良く仕事の話も入ってきたし、2、3回くらい出来ればちょっとは財布へのダメージも軽減されると思うんだ。テストさえなきゃ平日にも特攻するんだけどなあ、厳しいかなやっぱり。


end.


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タカちゃんの金策はいつだって削るところから始まるんだけど、食費を削るとお姉さんに叱られるらしい。2人ともある意味特殊ですし
そしてこの窮地を救うのが例によって朝霞Pであった。去年の話は確か公式+1でなかったと思うので、昨年に引き続き、という感じかしら。朝霞Pは卒業前のはずだけどまだ働いてるのね。
2年生でゼミ合宿に行く頃であればしっかりと成人しているTKGである。堂々と酒を買うし堂々と酒を飲むよ!

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