2016(04)
■包囲網の成果
++++
「あー、意味がわかんねー。これをどーやってレポートにするんだー!」
そう叫んで、飯野はバンと机に手を叩きつけた。パソコンには、これまでに集めた人の集まるイベントの資料。資料と言うか、写真や動画だ。
「つーか見事に冬休みの分しかねえが、地元以外の資料はねえのか」
「ない」
「あ? てめェやる気あんのか」
「やる気は空回りするほどある!」
スマホからゼミ室のパソコンに移したのは、実家に戻っている間に遊び呆けていた場所場所での資料たちだ。初詣に、プライベートな遊び……都合よく言い換えれば自主企画。高校の同窓会なんてのもある。これは新年の花火大会か。
念には念をと思って飯野と同郷の朝霞に資料収集の監視を頼んだが、思った以上の成果だ。つかどの動画を見ても朝霞がいる。しっかりと仕事をしてくれたからには俺も奴に礼をしなければならない、が、問題は資料を扱う側だ。
「ほらー、祭りとかイベント行くとつい自分が一番楽しんじまうっつーかー」
「で、一歩引いた資料集めを忘れる、と」
「そーそー、そーゆーこと」
「そーゆーことじゃねえ。とりあえず、ある分でどうするか考えるぞ」
そもそも、どうして俺が飯野のレポートの世話をしているのかと言えば、それは自分のため以外の何物でもない。飯野のレポートを安部ちゃんが指導できる域まで持って行くこと。そうすれば、余っている飯野の出席ボーナスを俺に回してもらえるのだ。
テーマが指定されたレポートよりも、自分で一から始めるレポートの方が断然楽だと思う。好きなことを書けばいいんだから。何故そういうテーマにしたのか、そのテーマについて考えるには何を調べればいいのかなどなどを連ねればいい。そして仮説を立て、行ければフィールドワーク、または文献をこれでもかと読み解く。
文献を読み解いて、コイツがこう言ってるからこうだとするもよし、コイツはこう言ってるけどあくまでウン十年前の話だし今の時代ではどうだ、などと捻くれた見方をすればやることなんざいくらでも出てくるだろうに。
「そもそも、どうして祭やイベントについてやろうと思った」
「好きだから。楽しいし」
「どうして好きなんだ」
「楽しいし。達成感もある」
「祭で達成感を得るのはごく一部の奴だけだぞ」
「えー!?」
「企画してたり、向舞祭みてえな競技型の祭なら達成感もあるだろうが、ただその場所に行って山車だの花火だのを眺めたりすんのに達成感なんざ沸くか?」
「そこに行ったっていう達成感があるかもしれない」
「まずは、祭を作る奴の話をやりてえのか、祭を見て歩く奴の話がやりてえのかを固めろ」
「ほう」
「それから、ケースをいくつか集めて比較検証して、こんな結果が集まったからこんなことが言えるのではないかとかってでっち上げる」
ほう、などと言いながらメモを取ってはいるが、きっとわかってねえなコイツ。ただ、ある程度導いたらあとは安部ちゃんに投げればいい。そうすれば後は安部ちゃんが何とかするだろうし俺は出席がもらえるし、めでたしめでたし。
「さ、俺は朝霞に連絡でもするかなー」
「えっ、ロイド君に!? 高崎テメー何する気だ!」
「暮れに頼んどいたんだ。お前と会う機会があるなら資料集めさせてくれってな」
「チキショー、ロイド君はお前とグルだったのかー! やたらどこででも撮影させると思った!」
「何言ってんだ。アイツは自分の研究に資料がいるっつってたし、お前のことなんざついでだろ。俺ほどお前のクソレポートに真剣になってやってる奴もいねえぞ、感謝しろ」
「オメーはゴミクズみてーな出席のためだろ!」
もちろん。それがなきゃ面倒を見る理由なんかどこにもねえ。
end.
++++
高崎が出席欲しさに飯野に鞭を打っています。高崎が本気を出したらどうなるんやろなあ。
年末は地元で予定のない日がないとまで言っていた飯野、どうやら資料は結構集まった様子。朝霞Pの功績は大きそうだなあ。きっと引きずり回されたんやろなあ。
果たして高崎は(飯野が余らせてる)出席ボーナスを得られるのか! すべては安部ちゃんのみぞ知る
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「あー、意味がわかんねー。これをどーやってレポートにするんだー!」
そう叫んで、飯野はバンと机に手を叩きつけた。パソコンには、これまでに集めた人の集まるイベントの資料。資料と言うか、写真や動画だ。
「つーか見事に冬休みの分しかねえが、地元以外の資料はねえのか」
「ない」
「あ? てめェやる気あんのか」
「やる気は空回りするほどある!」
スマホからゼミ室のパソコンに移したのは、実家に戻っている間に遊び呆けていた場所場所での資料たちだ。初詣に、プライベートな遊び……都合よく言い換えれば自主企画。高校の同窓会なんてのもある。これは新年の花火大会か。
念には念をと思って飯野と同郷の朝霞に資料収集の監視を頼んだが、思った以上の成果だ。つかどの動画を見ても朝霞がいる。しっかりと仕事をしてくれたからには俺も奴に礼をしなければならない、が、問題は資料を扱う側だ。
「ほらー、祭りとかイベント行くとつい自分が一番楽しんじまうっつーかー」
「で、一歩引いた資料集めを忘れる、と」
「そーそー、そーゆーこと」
「そーゆーことじゃねえ。とりあえず、ある分でどうするか考えるぞ」
そもそも、どうして俺が飯野のレポートの世話をしているのかと言えば、それは自分のため以外の何物でもない。飯野のレポートを安部ちゃんが指導できる域まで持って行くこと。そうすれば、余っている飯野の出席ボーナスを俺に回してもらえるのだ。
テーマが指定されたレポートよりも、自分で一から始めるレポートの方が断然楽だと思う。好きなことを書けばいいんだから。何故そういうテーマにしたのか、そのテーマについて考えるには何を調べればいいのかなどなどを連ねればいい。そして仮説を立て、行ければフィールドワーク、または文献をこれでもかと読み解く。
文献を読み解いて、コイツがこう言ってるからこうだとするもよし、コイツはこう言ってるけどあくまでウン十年前の話だし今の時代ではどうだ、などと捻くれた見方をすればやることなんざいくらでも出てくるだろうに。
「そもそも、どうして祭やイベントについてやろうと思った」
「好きだから。楽しいし」
「どうして好きなんだ」
「楽しいし。達成感もある」
「祭で達成感を得るのはごく一部の奴だけだぞ」
「えー!?」
「企画してたり、向舞祭みてえな競技型の祭なら達成感もあるだろうが、ただその場所に行って山車だの花火だのを眺めたりすんのに達成感なんざ沸くか?」
「そこに行ったっていう達成感があるかもしれない」
「まずは、祭を作る奴の話をやりてえのか、祭を見て歩く奴の話がやりてえのかを固めろ」
「ほう」
「それから、ケースをいくつか集めて比較検証して、こんな結果が集まったからこんなことが言えるのではないかとかってでっち上げる」
ほう、などと言いながらメモを取ってはいるが、きっとわかってねえなコイツ。ただ、ある程度導いたらあとは安部ちゃんに投げればいい。そうすれば後は安部ちゃんが何とかするだろうし俺は出席がもらえるし、めでたしめでたし。
「さ、俺は朝霞に連絡でもするかなー」
「えっ、ロイド君に!? 高崎テメー何する気だ!」
「暮れに頼んどいたんだ。お前と会う機会があるなら資料集めさせてくれってな」
「チキショー、ロイド君はお前とグルだったのかー! やたらどこででも撮影させると思った!」
「何言ってんだ。アイツは自分の研究に資料がいるっつってたし、お前のことなんざついでだろ。俺ほどお前のクソレポートに真剣になってやってる奴もいねえぞ、感謝しろ」
「オメーはゴミクズみてーな出席のためだろ!」
もちろん。それがなきゃ面倒を見る理由なんかどこにもねえ。
end.
++++
高崎が出席欲しさに飯野に鞭を打っています。高崎が本気を出したらどうなるんやろなあ。
年末は地元で予定のない日がないとまで言っていた飯野、どうやら資料は結構集まった様子。朝霞Pの功績は大きそうだなあ。きっと引きずり回されたんやろなあ。
果たして高崎は(飯野が余らせてる)出席ボーナスを得られるのか! すべては安部ちゃんのみぞ知る
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