2017
■接待とプライベート
++++
「あー、バイト終わりのビールがうめえ」
「よかったっすねー」
部屋には、ジュウジュウと餃子の焼ける音。卓上コンロとフライパンで焼くそれを直につまみながらの一杯。餃子は手作り。俺のバイト先がラーメン屋だから、他の料理はそこまででもないけど餃子は人並み以上に作れるんだ。
餃子にビール、それと白い飯。今回は高崎先輩も事前に餃子を食べたいと言ってくれていたから準備もしっかりと出来ている。ゴールデンウィークは高崎先輩にとっても稼ぎ時だったらしい。
「L、つかお前今日バイトねえのか」
「今日は休みっすね」
「ふーん、飲食業なのに休みなんかあんのか」
「今日までが結構出てたんすよ」
「なるほどな」
俺は基本的に夕方から深夜の2時3時くらいまで働く感じでシフトに入っている。高崎先輩のバイト先はピザ屋で、先輩は基本的に原付で配達をしているらしい。今日は朝から夕方まで8時間。
バイト上がりのその足で、先輩が俺の部屋に殴り込みにくることは少なくない。緑ヶ丘大学から徒歩5分のところにあるコムギハイツⅡ。その102号室が先輩の、そして202号室が俺の部屋。スープの冷めない距離だからこそだろう。
「つか今朝は割と静かだったけど、いつ掃除した」
「今日はちょっと起きるの遅くて、掃除は10時頃っした」
「ならいい。掃除は今後も俺がいないときにやってくれ」
「そんなムチャな」
高崎先輩からよくもらう苦情と言えば、掃除の音がうるさいという生活音に関すること。俺は浅田類……朝だるいなんて名前をしているけれど、掃除は朝の日課として大切にしている。しんどい体に鞭を打つのだ。
ただ、その音が真下に住んでいる高崎先輩の部屋を直撃するのだ。高崎先輩と言えば寝ることが幸せの時間で、ベッドは聖域として誰にも上がらせない。もちろん寝具に対するこだわりやお手入れも半端ない。
睡眠を掃除で阻害されると最初は下から棒でドンとつついて抗議される。それでもダメで実際に殴り込まれることは数知れず。休みの日の高崎先輩の睡眠時間は尋常じゃなく長い。起きるのを待ってたら掃除のタイミングを逃してしまう。
「でも先輩休みの日とか昼の2時3時まで寝てるとか余裕じゃないすか。さすがにそこまで掃除が出来ないのはキツイっす」
「そもそもそこまで掃除しなきゃなんねえのか。週2くらいじゃダメなのか」
「えっ、先輩週2しか掃除しないんすか」
「授業とかバイトに行ってたら汚れる要素もそうねえだろ」
「いやー、ちょっとあり得ないっす」
「あ? てめェが潔癖すぎんだろ」
「俺は潔癖じゃないですよ!」
「飯おかわり」
「はいはい」
次から次へと餃子を焼いて、白い飯が足りなくなればまたよそって。包んだ餃子は100個、炊いた飯は5合だ。俺はそこまで量を食べる方じゃないから、完全に高崎先輩のための食卓。
もしも余れば冷凍すればいいし、作り過ぎるくらいじゃないとこの人は満足しないんだ。足りなくなると暴動が起きる。ビールに関しては自前で持って来てもらってるし、差し入れなんかももらえるから費用的には全然負担にならないけど。
こうして見ると高崎先輩が強引で勝手なようにも思えるけど、俺は先輩と酒を飲むのを楽しんでいるから全く問題はない。まあ、掃除の時間に対する苦情だけは受け入れることは出来ないけれども、だ。
「はー、食ったー」
「ホント、飯5合炊いたのにどーして茶碗2杯分くらいしか残ってないんすか……餃子も、えっ、これ先輩何個食ったすか、俺6個っす」
「いちいち数えてねえよそんなモン。バイト終わりだったらそれくらい食えるだろ」
「いや、無理っす」
「これ、余ったの包んでもらえるんだろ?」
「そうっすね。長く保存したいなら冷凍っすね」
「じゃ、遠慮なく」
夜も更け行く中、俺は明日の朝のことを考えていた。床や壁に煙や油が飛んだであろうこの部屋をいかに怒鳴りこまれず綺麗ににするか、そんなようなことを。
「先輩、月曜って何限からでしたっけ」
end.
++++
ゴールデンウィーク、そして日曜日。日曜日ってどんな組み合わせの話が出来るっけと思ったら、ムギツーの人たちをやってなかった件。
L宅の餃子大会はどっちが主動してんのかなーと思ったけど、どっちもどっちだったなあと。高崎がやれって言うこともあるし、Lが誘うこともある。
しかしホンマに高崎が地味にめっちゃ食べてる。仕方ないね、足りなくなると暴動が起こるから。過去に足りんくなってめっちゃ叱られたんやろなあ……頑張れL!
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「あー、バイト終わりのビールがうめえ」
「よかったっすねー」
部屋には、ジュウジュウと餃子の焼ける音。卓上コンロとフライパンで焼くそれを直につまみながらの一杯。餃子は手作り。俺のバイト先がラーメン屋だから、他の料理はそこまででもないけど餃子は人並み以上に作れるんだ。
餃子にビール、それと白い飯。今回は高崎先輩も事前に餃子を食べたいと言ってくれていたから準備もしっかりと出来ている。ゴールデンウィークは高崎先輩にとっても稼ぎ時だったらしい。
「L、つかお前今日バイトねえのか」
「今日は休みっすね」
「ふーん、飲食業なのに休みなんかあんのか」
「今日までが結構出てたんすよ」
「なるほどな」
俺は基本的に夕方から深夜の2時3時くらいまで働く感じでシフトに入っている。高崎先輩のバイト先はピザ屋で、先輩は基本的に原付で配達をしているらしい。今日は朝から夕方まで8時間。
バイト上がりのその足で、先輩が俺の部屋に殴り込みにくることは少なくない。緑ヶ丘大学から徒歩5分のところにあるコムギハイツⅡ。その102号室が先輩の、そして202号室が俺の部屋。スープの冷めない距離だからこそだろう。
「つか今朝は割と静かだったけど、いつ掃除した」
「今日はちょっと起きるの遅くて、掃除は10時頃っした」
「ならいい。掃除は今後も俺がいないときにやってくれ」
「そんなムチャな」
高崎先輩からよくもらう苦情と言えば、掃除の音がうるさいという生活音に関すること。俺は浅田類……朝だるいなんて名前をしているけれど、掃除は朝の日課として大切にしている。しんどい体に鞭を打つのだ。
ただ、その音が真下に住んでいる高崎先輩の部屋を直撃するのだ。高崎先輩と言えば寝ることが幸せの時間で、ベッドは聖域として誰にも上がらせない。もちろん寝具に対するこだわりやお手入れも半端ない。
睡眠を掃除で阻害されると最初は下から棒でドンとつついて抗議される。それでもダメで実際に殴り込まれることは数知れず。休みの日の高崎先輩の睡眠時間は尋常じゃなく長い。起きるのを待ってたら掃除のタイミングを逃してしまう。
「でも先輩休みの日とか昼の2時3時まで寝てるとか余裕じゃないすか。さすがにそこまで掃除が出来ないのはキツイっす」
「そもそもそこまで掃除しなきゃなんねえのか。週2くらいじゃダメなのか」
「えっ、先輩週2しか掃除しないんすか」
「授業とかバイトに行ってたら汚れる要素もそうねえだろ」
「いやー、ちょっとあり得ないっす」
「あ? てめェが潔癖すぎんだろ」
「俺は潔癖じゃないですよ!」
「飯おかわり」
「はいはい」
次から次へと餃子を焼いて、白い飯が足りなくなればまたよそって。包んだ餃子は100個、炊いた飯は5合だ。俺はそこまで量を食べる方じゃないから、完全に高崎先輩のための食卓。
もしも余れば冷凍すればいいし、作り過ぎるくらいじゃないとこの人は満足しないんだ。足りなくなると暴動が起きる。ビールに関しては自前で持って来てもらってるし、差し入れなんかももらえるから費用的には全然負担にならないけど。
こうして見ると高崎先輩が強引で勝手なようにも思えるけど、俺は先輩と酒を飲むのを楽しんでいるから全く問題はない。まあ、掃除の時間に対する苦情だけは受け入れることは出来ないけれども、だ。
「はー、食ったー」
「ホント、飯5合炊いたのにどーして茶碗2杯分くらいしか残ってないんすか……餃子も、えっ、これ先輩何個食ったすか、俺6個っす」
「いちいち数えてねえよそんなモン。バイト終わりだったらそれくらい食えるだろ」
「いや、無理っす」
「これ、余ったの包んでもらえるんだろ?」
「そうっすね。長く保存したいなら冷凍っすね」
「じゃ、遠慮なく」
夜も更け行く中、俺は明日の朝のことを考えていた。床や壁に煙や油が飛んだであろうこの部屋をいかに怒鳴りこまれず綺麗ににするか、そんなようなことを。
「先輩、月曜って何限からでしたっけ」
end.
++++
ゴールデンウィーク、そして日曜日。日曜日ってどんな組み合わせの話が出来るっけと思ったら、ムギツーの人たちをやってなかった件。
L宅の餃子大会はどっちが主動してんのかなーと思ったけど、どっちもどっちだったなあと。高崎がやれって言うこともあるし、Lが誘うこともある。
しかしホンマに高崎が地味にめっちゃ食べてる。仕方ないね、足りなくなると暴動が起こるから。過去に足りんくなってめっちゃ叱られたんやろなあ……頑張れL!
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